バタフライのラケット作りの主な製造工程をご紹介します。実際はさらに多くの工程や検品があり、きめ細やかなラケットづくりが行われています。
精度にこだわるブレードと
職人仕事のグリップ
バタフライ製品の研究・開発・製造の総本山となる「バタフライ・テック」。ラケット棟では、世界で流通するバタフライ・ラケットが製造されている。
ラケット作りは、まず木材を丸太やフリッチ材(角材)、スライス材で買い付けるところから始まる。丸太の中には直径1mクラスの巨大なものもある。「木材は節が多い中央や、白太と呼ばれる周辺部は使えないことが多いんです。ラケット作りに必要なサイズのフリッチ材(角材)を取るためには、だいたい1mくらいの直径が理想です」。木材の目利きを行う生産・管理チーム(当時)の中川知義は語る。
上板や中板、添え芯などそれぞれの用途に合わせて薄く加工された木材は、手作業で接着されて一枚の合板になり、NC加工による型抜きから外形加工、グリップの接着などを経て一本のラケットへと仕上げられていく。
製造工程を巡る途中で、バタフライの「モノ作り」の哲学がよく表れている場面を目にした。NC加工で大まかにラケットの形状に切り抜いた後のヤスリがけだ。ヤスリをかけた部分は、そのすぐ後の外形加工で削り落とされてしまう。それでも外形加工での精度を高めるため、ヤスリをかけて木材のささくれを丁寧に取り除くのだ。
また、2014年にラケット棟を新築した際に、ラケットの外形加工の機械や、ブレードの厚さを正確に仕上げるサンダー仕上げ機を導入。製品の精度への飽くなきこだわりが読み取れる。
最新鋭の機械を導入する一方で、変わらないものもある。それは細部の仕上げだ。
「ブレードは機械で正確さを追求し、グリップ部分は職人の手作業で最終的に仕上げていく。このこだわりはどこにも負けない自信があります。」ラケットの製造工程について、淀みなく説明してくれた長尾賢(生産・管理チーム/当時)の言葉に、この時ばかりは力がこもった。
品質チェックを終え、積み重ねられて包装を待つラケットは、品質のブレがない見事な仕上がり。ブレードに傷がつかないように載せられたラバーのスポンジは、品質保持の規則というより、我が子にそっとかけた毛布のような優しさを感じる。
「一本一本、ラケットをきめ細かく作れる設備があり、技術がある。効率アップは永遠の課題ですが、品質や作り手の思いというところは譲れません」(研究開発チーム・岩瀬祐介/当時)。
フロアには相当使い込まれた機械も多く、その中で経験豊富な職人たちが黙々と働いている。ラケット棟が完成してまだ半年ほどだが、中に入れば、もう10年も15年もラケットを作り続けてきたかのように感じる。ここは純然たるモノ作りの空間だ。
地道な努力の積み重ね
ブランドは一日にして成ならず
バタフライ・ラケットの製造工程は、そのまま「検品工程」と言い換えることができる。ラケット製造の大まかな流れは、この数十年変わらないものだが、品質の検査は段違いに厳しくなっている。素人目にはどこに問題があるのかわからない、ラケットの小さな傷さえも見逃さない。
相手は木材という、不安定な天然素材。それを相手に毎日8時間、真剣勝負の連続だ。工程の要所、要所では40年以上のキャリアを誇る職人たちが目を光らせる。ラケットの品質チェックを行い、長くバタフライ・ラケットの品質基準を作り上げてきた技術と経験の伝承は絶え間なく続けられている。
国内外で高級ブランドとして扱われるバタフライ。特に中国では、バタフライのラケットは鍵の付いたガラスケースに収められるほどだ。
日本のユーザーは品質に求めるレベルが高いことで有名だが、中国のユーザーからはさらに厳しい要求が寄せられる。しかし、バタフライは圧倒的な品質管理の厳しさによって、その要求に応え続けている。
時代が移り変わろうとも、品質へのこだわりは変わらない。職人たちの日々の努力が、バタフライというブランドを支える石垣となっている。
取材=卓球王国/写真=江藤義典+タマス
卓球レポート2015年5月号掲載の記事を一部改稿しました