Tリーグ2021-2022のシーズン最終日となる2月27日、木下マイスター東京 対 琉球アスティーダの最終戦(立川立飛アリーナ)に先立って、木下マイスター東京のエースとして、また、日本卓球界をけん引してきたレジェンドとして活躍を続けてきた水谷隼(木下グループ)の引退セレモニーが開催された。
立川立飛アリーナには水谷の最後の勇姿を目にしようと多くのファンが駆けつけた。
水谷は最初のあいさつで、選手生活を退くとともに、木下グループのスポーツアンバサダーに就任し、今後もスポーツの振興に携わっていくことを高らかに宣言した。
また、水谷の競技生活を各方面からサポートした面々が水谷に花束を贈呈。続いて行われたエキシビションマッチではマイラケットを手に取り、松島輝空(木下グループ)、張本智和(木下グループ)を現役さながらのミスの少ないプレーでくだし、ラスト2試合を勝利で飾った。
そして、ファンに送る最後のスピーチでは「僕はずっと一人で戦ってきたと思っていたが、一人ではないことに今日気づいた」と感動的な言葉で自身の競技生活を締めくくった。
「一人ではないことに気づいた」という水谷だが、「一人で戦ってきた」という長年抱えてきた思いにも多分に真実が含まれているだろう。卓球レポートでは何度もインタビューをしてきたが、自分を最高の高みに置くための努力を惜しまなかった水谷が、多くの場面で孤独さを痛感している様を目にしてきた。
水谷が今日感じた「一人ではない」という思いには、そうした水谷の孤独を怖れない挑戦に共鳴する後進が育ちつつあるという実感も含まれているのではないだろうか。そのバトンを渡せる時が来た。水谷の引退には自身のアスリートとしての限界だけでなく、卓球界の将来を見据えて「もう自分がいなくても大丈夫だ」という確信のようなものも感じた。
おそらく、水谷の卓球界、そして選手たちとの関係はこれからも続くと思うが、有形無形のその功績と孤独を怖れずに戦ってきたその勇気に最大限の感謝と賛辞を送りたい。
(まとめ=佐藤孝弘)