元全日本王者の渋谷浩が大会3日目の男女ジュニア、混合ダブルス3回戦~準々決勝について振り返る。
■男子ジュニア準々決勝
三部(青森山田高)を破った郡山(関西高)は高い打球点のから勢いよく攻めて、三部は後手後手に回って押し切られるような形で敗れました。三部は完全に受け身になってしまいましたね。
酒井(JOCエリートアカデミー)は平野(野田学園高)のパワーのあるボールに対して、コース取りがよくラリーで上回りました。
吉村(野田学園高)は、全中王者の木造(愛工大附属中)、インターハイ2位の及川(野田学園高)と強敵を連破して勢いに乗る緒方(JOCエリートアカデミー)を破ってベスト4入りを果たしました。吉村は得意のスケールの大きな打ち合いにうまく持ち込んでいました。
村松は要所で回転の変化と攻撃を織り交ぜて、渡辺(明徳義塾高)を下しました。スコアは3対0ですが、各ゲームは競り合いになりました。渡辺も打ち合いには強く中陣からでも盛り返せるパワーがある選手ですが、勝負どころで譲らなかった村松が勝負を制した形です。
明日の準決勝は郡山対酒井、村松対吉村という組み合わせです。郡山対酒井は、両者とも台からの距離は譲れないので前中陣での激しい打ち合いになるでしょう。郡山の思いきったフォアハンドを酒井が両ハンドでどう振り回すかというところが見所になるのではないでしょうか。
村松対吉村は、一発で抜ける威力のあるボールの吉村対して村松がどうミスを誘うようなプレーができるかというところがポイントでしょう。大事なのは心理戦ですね。強いボールを打つ選手というのは常にミスのリスクと表裏一体なので、対戦相手はいかに精神的な揺さぶりをかけるかが重要になってきます。逆に、ハードヒッターはミスしても引きずらずに冷静にプレーすることが要求されます。そうした心理面に着目するとおもしろい戦いになるでしょう。
■女子ジュニア準々決勝
浜本(JOCエリートアカデミー)は前陣でのブロックは非常にレベルが高いですね。この技術のおかげで安心してラリーを主導することができます。平(正智深谷高)は、強引に攻めてミスが出るという試合展開のまま最後までいってしまいました。
加藤美優(JOCエリートアカデミー)と前田(希望が丘高)の勝負のポイントは緩急と長短でした。一定のリズムのボールに対しては、前田は両ハンドで打球点の早い、威力のあるボールを打つことができますが、加藤のはぐらかすような遅いループや短いブロックなどに対して要所でミスが出ていました。それが明暗を分けたかもしれませんね。
インターハイの決勝と同じ組み合わせとなった阿部(四天王寺高)と佐藤(札幌大谷高)は、一度勝っている阿部がやや守りに入っているかなという印象を受けました。内容的にはインターハイのときよりも競っていましたが、攻撃の割合を増やしてきた佐藤に対して、阿部は丁寧にプレーしていました。
平野(JOCエリートアカデミー)対森(昇陽高)はすごい試合でした。2人とも台から離れないで前陣で激しいラリーを展開しました。両者とも、あわせて返すだけのボールがほとんどなく、その場で出せる最大限の力で打ち返すような見応えのあるラリーでした。平野は中学1年生ながら冷静な試合運びで、ミスが森よりも少し少なく、その差が勝負を決めました。
明日の準決勝は、浜本対加藤、阿部対平野の対戦です。浜本対加藤はエリートアカデミー対決ですが、実力も伯仲、お互いに手の内を知っているだけに冷静さをキープできた方が有利でしょう。阿部対平野は、阿部が異質型の特長を最大限に生かした卓球で平野のミスを誘ってくると思います。平野はコース取りに気を使わなければいけない戦いになるでしょう。
■混合ダブルス準々決勝
笠原弘・笠原多(協和発酵キリン・NTT東日本東京)は御内・北岡(シチズン・中央大)をゲームオールの末に下しました。カットペアはあの手この手を使い戦術的に見どころのある戦いでしたが、最終的に笠原ペアがカットの回転をしっかり見極めて、粘るところは粘る、決めるところは決めるメリハリのある攻守で接戦を制しました。
張・森薗(東京アート・日立化成)はストレートで及川・宋(青森山田高)を下しました。青森山田高の先輩ペアが決定力で上回っていました。
松平・若宮(協和発酵キリン・日本生命)は上田・鈴木を破りました。若宮が相手のフォア側を攻める巧みなコース取りでチャンスをつくって松平が決めるという得点パターンがしっかりできあがっていました。
吉村・石川(愛知工業大・全農)は神・平野(明治大・東京富士大)の大学生ペアを軽快なプレーで破りました。全日本王者同士という実力あるペアだけに、かみ合ったときは強いですね。
準決勝は笠原・笠原対張森薗ですが、張・森薗がどんどんフォアハンドで強いボールを打ってくるので、笠原兄妹ペアはそれをどう封じることができるのかというところがポイントになるでしょう。松平若宮対吉村・石川は激しい先手の奪い合いになるでしょう。どちらのペアも強烈な一発があるので、台上争いが見どころになるでしょう。また、甘いボールを打てないというプレッシャーに負けるとプレーのスケールがどんどん小さくなってしまうので、プレッシャーに対してどのように対応することができるかというのも重要なポイントになるでしょう。
記録・タイムテーブル等の情報は日本卓球協会ホームページに掲載されています。
日本卓球協会:http:/www.jtta.or.jp
記録ページ:http://www.jtta.or.jp/AJ/result2013/
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全日本選手権大会の特集は卓球レポート3月号(2月20日発売号)に掲載します。
[国内大会]
元王者が全日本を語る「渋谷浩の眼」 ④男女ジュニア・混合ダブルス準々決勝
2014.01.16
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