大会5日目を迎えた平成28年度全日本選手権大会(一般・ジュニアの部)。ベスト8が出そろった男子シングルス5~6回戦の戦いについて、平成11年度全日本チャンピオンの渋谷浩が大会を振り返った。
水谷(beacon.LAB)は異次元の世界にいるようなプレーをしていますね。全日本に向けてどうやったら心技体智を万全な状態に持っていけるかということを心得ていて、王者の風格が漂っています。全日本の戦い方も一番良く知っていて、リードされても慌てず、リードしても油断しない戦いがここまでできています。王者の風格が漂う戦いを見せています。
その水谷と準々決勝で対戦する木造は、バックサイドから打つフォアハンドドライブが非常にいいですね。少し体勢が詰まったかなという状況でも威力のあるボールを打てるのが彼の特長です。ボディバランスもいいですし、体の柔らかさや強さもあります。最近はパワーも出てきて、回転量も増えている印象を受けます。フォアハンドの打球点も高くここまで良いプレーを見せていますね。
4回戦で張本(JOCエリートアカデミー)を破るなどして、ベスト8に進出した平野は持ち前のフットワークを生かしてアグレッシブなプレがーができていますね。のりに乗っているという感があります。ファイナル4など、ここのところの試合を見てもずっと調子がいいですし、明日のプレーにも期待です。
神は優勝候補の吉村に勝利しましたが、その試合ではトリッキーなプレーが光っていました。吉村としては攻めの姿勢を見せたいところでしたが、受け身に回ってしまいました。
吉村和弘は非常にバックハンドドライブをストレートに打つボールが強烈で、全日本に出場している男子の中でもトップクラスのボールの威力を誇っています。コースも読みづらく、明日の準々決勝では一発のドライブに注目です。その吉村と対戦する上田は、丹羽を破って準々決勝に進出しました。上田は丹羽との相性はあまりよくないのですが、よく奮闘して勝利を挙げました。
2年ぶりの出場となる吉田海偉は全体的にペンホルダー選手との練習量が減っているという点でやりにくさも発揮できると思います。ペンホルダーの選手はフォアサイドがオープンになりやすいですが、フォアサイドを突こうとすると、プレーのスケールが小さくなりやすいです。ボールを置きにいったところを強打されてしまうというケースも多く、対戦する相手は神経をすり減らすような戦いになりやすいです。吉田はバックブロックも進化していて、今は守りに自信があるから、何本でも跳ね返すというような余裕を持って相手の強打に対応できています。
吉田と対戦する龍崎はここまで張(東京アート)、松平賢二(協和発酵キリン)といった強敵を連破してベスト8に進みました。今大会は台から下がることなく、打球点の高いところで攻めているのがいいですね。ミスも少ないので明日の吉田との一戦でも好ラリーを期待したいですね。
最後に今大会を持って現役引退する塩野は最後の試合となった上田との試合でも持ち前の粘りを見せてくれました。彼の特長は泥臭く1点をとるところで、そういったプレーが見る人に感動を与えてきました。年々スマートなプレーをする攻撃型の選手が増えていますが、今後、塩野のようなプレーをする選手が出てきてほしいですね。
[国内大会]
全日本卓球2017 男子シングルス5~6回戦 ~元王者が全日本を語る「渋谷浩の眼」~
2017.01.20
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