大会最終日を迎えた平成28年度全日本選手権大会(一般・ジュニアの部)。平成11年度全日本チャンピオンの渋谷浩が男子シングルス準決勝と決勝を振り返る。
<男子シングルス決勝>
水谷隼(beacon.LAB) -9,7,8,11,6 吉村和弘(愛知工業大)
決勝戦は、「吉村の強力なチキータを水谷隼がどう封じるのか」が焦点になりましたが、 水谷が見事に吉村のチキータを封じました。吉村のバック前にはサービスを出さず、短いサービスを出すときはフォア前、ミドル前を徹底していました。また、吉村に十分な体勢でチキータさせないよう、ロングサービスをうまく交ぜていたこともよかったと思います。水谷隼の調子自体は最高という感じではありませんでしたが、それでも勝ち切ってしまうところに水谷の強さが表れていたと思います。
一方、吉村も持ち味である切れ味鋭いボールで先手を取ろうとしていましたが、水谷の巧みなチキータ封じにリズムを崩されてしまいました。吉村はバックハンドは相当なレベルに達しているので、今後はもっとフォアハンドを前で打てるように磨いていけば、さらに大きく伸びるでしょう。
<男子シングルス準決勝>
水谷隼(beacon.LAB) -9,-3,7,8,6,11 平野友樹(協和発酵キリン)
ゲームカウント2対0の4-1リードまでは、平野が完全にゾーンに入っていました。しかし、そこから水谷隼がタイムアウトを取って流れが一変しました。ラリーが長引くと不利になると感じた水谷は、台上をより厳しくし、サービスからの3球目、レシーブからの4球目などラリーの速い段階で得点を狙いに行き、それが奏功して逆転に成功しました。この水谷の戦術のシフトチェンジはさすがというほかありません。
敗れはしましたが、平野もよくがんばりました。特に、中陣でドライブを引いていたかと思うとささっと前に出てきてライジングを捉えるなど、タイミングを変えるドライブが光っていました。
吉村和弘(愛知工業大) 4,-8,-8,-6,7,7,7 吉田海偉(Global Athlete Project)
この試合は吉村のバックハンドが決まるかどうかが焦点でしたが、始まってみると、長くヨーロッパでプレーしている吉田は吉村のバックハンドドライブを苦にしていませんでした。とはいうものの、勝敗を決めたのはやはり吉村のバックハンドドライブでした。最終ゲーム6-5と吉村リードのラリー戦でチキータ気味に決めたバックハンドドライブでした。このラリーの後、吉田がサービスミスを続けてしまったほど強烈な一撃でした。
どちらが勝ってもおかしくない接戦でしたが、最後は吉田が少し体力が切れたかなという印象です。それでも35歳という年齢ながら、ロビングや台上のバックプッシュなどを駆使してしぶとく頑張ったのはあっぱれの一言です。
一方の吉村は攻めの多彩さで吉田を上回りました。また、吉田の独特のペースに飲まれずによく耐えたと思います。吉村が今大会に良い精神状態で臨めていることを象徴する試合でした。
[国内大会]
全日本卓球2017 男子シングルス準決勝・決勝 ~元王者が全日本を語る「渋谷浩の眼」~
2017.01.22
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