世界ジュニア選手権イタリア大会8日目、男子シングルス決勝は第1シードの薛飛が、シード選手を連破して勝ち上がってきたスウェーデンのダークホース、T.モアガルドの挑戦を退け初優勝を飾った。これで男女団体、男女ダブルス、混合ダブルス、男女シングルスの全7種目を中国が制覇した。
<男子シングルス決勝>
薛飛(中国) 9,10,3,-9,8 T.モアガルド(スウェーデン)
準決勝で優勝候補の1人と目されていた王楚欽との同士打ちに完勝し、世界ジュニア2度目の決勝で初優勝を狙う薛飛。解放軍チームでは同じ戦型の王皓の後輩で、そのプレースタイルにも強い影響が見られる。
かたや、スウェーデンの新星、T.モアガルドは第2シードの木造をはじめ、徐海東、牛冠凱と中国選手を連破。勢いもあるが、その勝利はまぐれではないだろう。興味深いのはそのプレースタイルだ。
サービスを持てば、豊かな発想力で、数種類のサービスを使い分け、可能な限りフォアハンドの3球目攻撃につなげる。レシーブではチキータをまったく使わず(ジュニアでも男子トップの攻撃選手ではほとんどいない)、ストップ、ツッツキ、フリックでコースを突いて、ダイナミックなスイングのフォアハンドの4球目攻撃につなげる。そして、それらの技術を支えている異様に浅いグリップ。そのプレーを見てもらえば分かるが、とにかく「現代卓球」の潮流とは無縁といってもいいスタイルでここまで勝ち上がってきた。とはいえ、チキータレシーブに対する4球目攻撃などはしっかり身につけているため、一度歯車がかみ合ってしまうと対戦相手はなかなかその術中から抜け出すことは難しいのだろう。
しかし、その快進撃を止めることができたのはやはり中国選手だった。モアガルドは同じペンホルダーの徐海東を破っているだけに、善戦すると思われたが、第1ゲームを薛飛が先制すると、第2ゲームも終盤で逆転を許し0対2に。薛飛のボール、特にバックハンドドライブの回転量が想像以上なのだろう、ブロックミスやカウンターミスを連発して、苦しい流れ。第3ゲームはついに集中力が切れたか、0-3でコーチがタイムアウトを取ったところでラケットを台の上に投げ出してイエローカード。コーチの言葉にも露骨に耳を傾けない。こうした側面はまだ15歳だということを思い出させてくれる。このゲームは集中力を欠いてプレーで11-3で落とすと、薛飛の優勝は決まったと誰もが思ったに違いない。おそらく誰よりもそう思った薛飛に油断がなかったとは言い切れないだろう。続く第4ゲームではプレーに適当さは見られるものの、守りの思考に入った薛飛に対して、モアガルドのリスキーな攻撃が決まりだし、このゲームを取り返す。
しかし、第5ゲームは気を引き締め直した薛飛がじっくりと構え、攻守のメリハリを付けたプレーでモアガルドの追撃を振り切った。
決して両者の実力が十分に発揮された試合とは言えなかったが、「面白い試合」ではあった。苦しい場面でも、ユニークで明確なコンセプトを持ってプレーすることができれば、モアガルドはシニアでのブレークも可能な選手だろう。薛飛もジュニアレベルは超えた実力の持ち主であることは明らかだが、得点パターンの多彩さ、発想の柔軟さなどの点で、中国のトップとして通用する選手になるにはまだまだのびしろのある選手と言える。
世界ジュニアはシニアで活躍するための登竜門として、今後も目が離せない大会だ。来年はオーストラリア南東の町、ベンディゴで開催される。
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