大会6日目を迎えた平成29年度全日本選手権大会(一般・ジュニアの部)では男女シングルス準々決勝が行われた。4強が決まった女子シングルス準々決勝について平成11年度全日本チャンピオンの渋谷浩が大会を振り返った。
<女子シングルス準々決勝>
平野美宇(JOCエリートアカデミー/大原学園)-11,9,-3,10,-4,9,8 松澤茉里奈(十六銀行)
昨日の戦評でも話したとおり、ラリーの早い段階で得点が決まることが多い試合でした。お互いが前陣でひるまずに戦っていました。最後までどちらに転ぶかわからないシーソーゲームとなりましたが、勝敗を分けたのはフォアハンドドライブをクロスに引っ張ることができるかどうかだったと思います。その点において平野はフォアサイドを切るようなフォアハンドを打つことができていました。バックサイドにも厳しいコースにバックハンドドライブを打つことができるので、最後まで両サイドを厳しく突くことができていました。一方の松澤はフォアクロスへのフォアハンドのコースが甘くなりやすく、平野はそのボールを早い打球点でカウンターして得点していました。広角に打ち分けられたことが平野の勝因だったといえるでしょう。
永尾尭子(アスモ) 10,-7,-8,-3,9,9,7 佐藤瞳(ミキハウス)
永尾が我慢強いカット打ちで熱戦を制しました。佐藤のカットが浮いたところをしっかりとスマッシュでたたいていました。一方の佐藤は3対1とリードしましたが、中盤以降は少し消極的になってしまったかなという印象です。佐藤はカットだけではなく攻撃でも得点できていたのですが、思い切って攻めることができないというケースが目立ちました。永尾の回転量の多いボールに対してはちゃんと対応できていましたが、それだけでは11点を取ることはできません。攻撃を仕掛けて相手の台との距離を狂わせたりしながら、カットするというコンビネーションがないと、勝てません。そうした点でプレーが少し消極的になってしまったといえるでしょう。
伊藤美誠(スターツSC)-8,7,4,8,8 石垣優香(日本生命)
石垣としてはゲームを先制しましたが、厳しい試合でした。伊藤の場合は得点パターンがいくつもあり、スマッシュでも得点できるし、カーブドライブでも得点できていました。特にスマッシュが良かったですね。打つ途中までバックサイドに打つように見せかけて、そこから腰を回転させて、逆モーション気味にフォアサイドにスマッシュを打てるので、そのボールに石垣が反応できないという場面が見られました。
今大会で引退する石垣は力を出し尽くしたと思います。石垣という選手は最後までボールに食らいつくプレーが印象的で、人を感動させるプレーができる選手でした。技術面を見ると、カットのフィーリングの良さが光っていました。普通、カット主戦型は相手の浅いループドライブを処理するとき、しっかりと足を運ばないと低く返球することはできないのですが、石垣は体の前で処理しても低く質の高いカットを送ることができます。また、膝より下のところでもしっかりとカットが入るのはすごいですね。普通は足を踏み込んで腰を落としてカットをするのが基本ですが、それをしなくてカットできるというのはすごいフィーリングの持ち主だと感心していました。
石川佳純(全農) -8,8,-14,7,11,7 森さくら(日本生命)
この試合は最初から最後まで石川が粘った試合でした。前陣で台から離れずに早い打球点で森を左右に揺さぶっていました。それに対して森は前陣で合わせたり、少し台から下がって両ハンドを振ったり、あらゆる手段で粘って決め球は石川のフォアサイドに打っていました。とにかくチャンスがあるまでバック側につないで粘り、隙を見つけて早いタイミングで打てるときに石川のフォア側を狙うというパターンが多かったですね。
石川は粘り勝ちですね。戦術は試合を通して大きく変えず、粘りで打開したという感じでした。石川はバックハンドの打球点の早いドライブのミスが少なかったです。6割くらいの力で左右に揺さぶっていました。今日の石川のプレーは1~2ゲームは取られるけど。最終的には4ゲームをとるというものでした。肉を斬らせて骨を断つという戦い方でした。7ゲームトータルを考えてのプレーだったと思います。
詳しい情報は日本卓球協会ホームページに掲載されています。
日本卓球協会:http:/www.jtta.or.jp
全日本卓球(特設サイト):http://www.japantabletennis.com/zennihon2018
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全日本選手権大会の特集は卓球レポート3月号(2月20日発売号)に掲載します。