元全日本王者の梅村礼が見た世界卓球ハルムスタッド2018。日本男子の決勝トーナメント1回戦、香港戦の戦いぶりと、明日からの展望を聞いた。
張本が思い切ったプレーで流れをつくった
張本本来の戦い方を見せてくれた黄鎮廷戦
黄鎮廷が台から下がってプレーするので、張本の速さを生かせる展開になりました。左右に大きく振り回してとどめをさせる本来の張本の戦い方ができていましたね。張本は先手を取れる相手に対しては終始押して行けるので、今日は安心して見ていられました。
黄鎮廷にしてもそこまで下げられたら仕方がないという展開だったでしょう。張本のバックハンドも今まで以上に厳しいコースを突いていました。張本もパワーは付いてるきていますが、引き合ったときにどうかなという不安がありました。しかし、この試合では台から下がることなく、自分の距離を保って、下げた相手に対して自分のタイミングで打てていたので、そこが良かったですね。
トーナメントに上がってもう負けられないというのはあるけどリーグを抜けて肩の荷がおりてリラックスしてできてる部分はあるのかもしれません。一昨日まではイージーミスが多かったのですが、今日はそうした不安がありませんでした。
水谷は凡ミスが減ってきた。何鈞傑には貫禄勝ち
苦戦はしましたが、昨日よりは仕上がってきています。イージーミスが減りました。今日は自分がやりたいことをやった上でミスをしたというミスの仕方だったので、修正がきくミスの仕方に変わってきています。イングランド戦だと相手にやられたい放題、自分がやろうとするまえに相手に先に攻められて後手後手に回るという展開でしたが、昨日のシンガポール戦と今日は自分が仕掛けてミスをしてしまったとう修正がきく感じにかわってきているので、積極的なミスになっています。
今日も相手は向かってきていましたが、それをうまくかわしながら自分のプレーをしていたので、ちょっと競りましたけど、心配はだいぶ減りました。経験の差も見せて、貫禄勝ちといったところでしょうか。
上位進出には丹羽の復調が鍵。敗戦を払拭してほしい
倉嶋監督も3番のオーダーには頭を悩ましたと思いますが、やはりこれが今の日本のベストメンバーですね。準々決勝、準決勝と勝ち上がって行く上で、丹羽が復調してくれないと厳しいと思うので、そういう考えもあってのことだと思います。
対戦相手とは力の差はかなりありましたが、今日の試合は丹羽らしい展開でしたね。パワーがある相手ではないので、その分修正しながらでもやりやすいかったのかなと思いました。イングランドのウォーカーみたいにがんがんこられないので、安心した部分はあるのではないでしょうか。ウォーカーに負けてから試合に出ていませんでしたが、選手は負けた後の試合っていろいろ考えてしまうことがあります。この試合がそれを払拭できるきっかけになってくれたらいいですね。
組み合わせのよさを生かして勝ち上がってほしい
ドローは日本に有利な結果になりました。準々決勝で韓国は厳しいですが、ドイツや中国の可能性もあったことを考えればベストの結果とも言えるでしょう。また、1回戦の相手がブラジルという可能性もありました。予選を見てきた感じではブラジルが一番怖かったですね。確かに香港は力はありますが、やりなれている相手ですし、対策は立てやすかったと思います。倉嶋監督の強運を生かして勝ち上がってほしいです。
韓国戦で鍵になるのは、今日の3人でいくとすると、張本は今日みたいに思い切ってプレーするとチームがうまく回っていきます。そして、団体戦は3番を取るか取らないかで勝敗が大きく左右されます。例えば1対1で3番落とすと4番、5番は負けられなくなります。3番が勝って次に回してあげることが重要になってきます。
総合力では韓国よりも日本の方が高いでしょう。しかし、団体戦なのでなにが起こるか分かりません。少しの差なら流れ次第で簡単にひっくり返ってしまいます。実力では中国が頭一つ抜け出ていますが、今はどこが勝ってもおかしくありません。ですから、日本も早く流れをつかんで離さないように、トップから流れをつくって、2番がそれを引き継いで、3番でそれを離さないように、負けるとしても競って競って次につなげることが大事です。3番に限らず、簡単に負けるとチームの士気が下がってしまうので、もちろん勝つに越したことはありませんが、無失点で行くのも現実的には難しいと思うので、次につながるような負けということを意識してプレーすると、チームの流れがよくなってくると思います。
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(写真=佐藤孝弘 文=猪瀬健治)