日本初のプロ卓球リーグ・Tリーグが10月24日、東京・両国国技館で開幕した。開幕戦は男子の木下マイスター東京対T.T彩たまが対戦し、木下マイスター東京が3対1でT.T彩たまを下し、勝ち点3を上げた。
ついにTリーグが開幕!
中国の元総監督・劉国梁(右)も観戦!
開幕戦の会場となった両国国技館には、卓球の新たな夜明けを目撃しようと5千人を越える観客が詰めかけた。生オーケストラに乗って各チームの紹介が行われたあと、松下浩二チェアマンの開幕宣言で試合が開始された。
木下マイスター東京 3対1 T.T彩たま
◯水谷/松平 7,11 鄭榮植/平野
◯大島 10,6,-9,6 吉村
◯張本 5,7,9 黄鎮廷
水谷 8,-4,-6,7,-11 鄭榮植◯
※ダブルスは3ゲームスマッチ、各ゲームの最終ゲームは6対6からスタート
Tリーグの試合形式について詳しくはこちら
※ダブルスは3ゲームスマッチ、各ゲームの最終ゲームは6対6からスタート
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水谷(左)と松平が先制!
1番はTリーグの独自ルールによりダブルスが行われ、2ゲーム先取した方が勝ちとなる。両チームともタレントが豊富なだけに、誰と誰がペアを組むのかに焦点が集まったが、木下マイスター東京は全日本王者の水谷隼と大島祐哉ではなく、水谷に松平健太を合わせ、テクニシャン同士のペアリング。
一方、国内外のタレントが豊富なT.T彩たまは、バックハンドが強い韓国の鄭榮植とフォアに強みを持ちつつオールマイティーな平野友樹のペアをぶつけてきた。
日本のみならず世界が注目するTリーグの1本目のプレー。平野のサービスから高速ラリーになったが、最後は鄭榮植が得意の快速バックハンドで松平のバックをえぐり、Tリーグの記念すべき1点目はT.T彩たまが上げる。「Tリーグ最初のプレーでサービスミスなんか絶対できない状況で下回転のサインが来たらどうしようと思っていましたが、鄭榮植はナックルのサインを出してくれたので助かりました(笑)」と試合後の平野。
1点目はT.T彩たまペアが取ったが、木下マイスター東京ペアも持ち前のテクニックで離れず、中盤までもつれる展開になる。しかし、6-6から水谷がチキータを狙い撃つと、そこからT.T彩たまペアにミスが出て木下マイスター東京ペアが先制。両ペアとも固さがいまひとつ取れない中、2ゲーム目もジュースまでもつれる展開になったが、水谷のチキータ狙いと松平のカウンターが要所で決まり、木下マイスター東京ペアがT.T彩たまペアを振り切って貴重な先制点を上げた。
大島が豪快なドライブで王手!
2番は大島祐哉(木下マイスター東京)対吉村真晴(T.T彩たま)の同級生ライバル対決になった。この試合も1番のダブルス同様、両者共固さが取れず、普段では出ないミスが出る中、ゲームが進む。しかし、足を積極的に動かし、要所でバックストレートへのフォアハンドドライブを打ち込んだ大島が吉村を3対1で退け、木下マイスター東京が2点を先制。
木下マイスター東京が早くも王手をかけたが、これまで出場した6人には総じて固さが見られた。両国国技館という歴史ある場所でなおかつ5千人を越える観衆の前で緊張するなというのが無理な話だが、あれほど経験豊富な猛者たちが思うようにプレーできない様子には、Tリーグが特別な舞台であることを再認識させられたと同時に、そこに賭ける彼らの思いの強さが表れていたように思う。特に、全日本をはじめとして、オリンピックや世界卓球の決勝など、数々の大舞台を踏み、緊張とは無縁だと思っていた吉村が、最初のサービス機会で2本連続サービスミスしたシーンが、そのことを如実に物語っていた。
強靭なメンタルを見せた張本
10分間のハーフタイムをはさみ、3番は木下マイスター東京が全日本王者の張本智和。一方、T.T彩たまは香港の黄鎮廷で巻き返しを図る。
試合が始まると、張本が黄鎮廷を圧倒する。張本は得意の両ハンドでのストレート攻撃で黄鎮廷の足を止め、ストレートで快勝。チキータとストップの使い分けやロングサービスに対する抜群の反応など、張本は最先端ともいえるテクニックを随所で披露したが、それ以上に際立っていたのが精神力だ。「1番と2番が勝ってくれたので楽にプレーできた」と本人は言うが、この大舞台でもまったく動じずに自分のプレーを貫いた張本の気持ちの強さには感嘆するほかない。
開幕戦随一の好試合は鄭榮植に軍配!
試合は張本の勝利で木下マイスター東京が勝利を収め、勝ち点3をゲットしたが、ここで終わらないのが勝ち点制を採っているTリーグだ。4番で木下マイスター東京が勝てばさらに1点がプラスされる。一方、T.T彩たまとしては木下マイスター東京に走られないためにも、勝ち点が加算されるのは是が非でも防ぎたいところだ。
4番は木下マイスター東京がエースの水谷隼、T.T彩たまが鄭榮植。結果的に、この4番が両チームの対戦で一番の好試合になった。水谷が得意のサービスからの3球目攻撃で先制すれば、鄭榮植が快速バックハンドで追いすがる。好ラリーが続出した両者の試合は最終ゲームにもつれ込んだ。
Tリーグ特別ルールで最終ゲームは6−6から始まり、水谷がスタートダッシュを決めて10−7とマッチポイントを握る。しかし、ここから鄭榮植が驚異の粘りを見せてジュースに追いつくと、最後は水谷のサービスをチキータで狙い撃ち、T.T彩たまが木下マイスター東京に一矢報いた。
記念すべき開幕戦は、木下マイスター東京がT.T彩たまを3対1で下し、歴史的勝利を上げた。
この開幕戦では、勝ち点制で3番までに勝敗が決しても4番が消化試合にならない点や、ダブルスの2ゲーム先取やシングルスの最終ゲーム6−6からスタートするスピード感など、Tリーグの醍醐味を味わうことができた。
また、今回は会場にいた誰もがうぶ声を上げる我が子を見守るような心境だったためか、応援もいく分控えめに感じられたが、それもホームでの試合を重ね、各チームにファンが付けばさらにグルーブ感のあるものになっていくだろう。
「卓球が変わる、Tリーグが変える」−このスローガンのもと、Tリーグが力強く走り始めた。