水谷隼(木下グループ) -11,6,7,6,-9,5 大島祐哉(木下グループ)
序盤はやはり、水谷が大島にフルスイングされないように、また、台上で強打されないように気を使いながらプレーしていましたが、それが逆に水谷自身のプレーを小さくさせてしまっていた気がします。中盤はわざと大島に打たせてからミドルにブロックして詰まらせたり、カウンターを狙ったりして流れをつかみました。最後は水谷ワールドが全開でしたね。
どうしても大島は回り込んだときにフォアサイドを気にしてしまうので、そこを読んでバック側にボールを集めるなど、水谷はさすがのコース配分でした。大島は力を出し切ったと思います。バックハンドのミスが格段に減ったことと、フォアハンドのスピードが上がっていたことは今大会で見られた大きな成長です。フットワークは元々素晴らしいものを持っていますからね。
大島は台上プレーも水谷と同等のレベルでできていたと思います。久しぶりにストップの重要性が感じられる試合でした。最近はチキータレシーブが試合の鍵を握るような展開が多いですが、この試合では、ストップ対ストップから深くツッツいて相手を詰まらせるなど、ベテランならではの展開が見られました。
V10で見える景色は水谷にしか見えないと思うので、心から素直におめでとうと言いたいです。私も一卓球人として尊敬しています。13年連続で決勝に行くなんて想像もできないことですから。
<男子シングルス準決勝>
大島祐哉(木下グループ) 8,4,-1,8,-8,-4,9 張本智和(木下グループ)
序盤は大島が張本のフォアサイドをうまく攻めていました。最後はロングサービスから捨て身の攻撃でよくやりきりましたね。ロングサービスから、フォア側に返されたら失点覚悟で、サービスを出してすぐにバック側にヤマをはって回り込む。それが張本を精神的に追い詰めたんだと思います。ギリギリの勝負でしたが、大島の捨て身の攻撃が功を奏しました。
大島は打つコースもよかったし、ボールも深く入っていたので、張本はネットミスが多かったように思います。張本は、疲れがあったのか、フォアハンドのボールが走っていない印象を受けました。それと、珍しく凡ミスが多かったですね。本人は全然納得していない負けだと思います。ただ、「張本智和」なので、これを糧に今以上に必ず強くなってくると思います。
水谷隼(木下グループ) -5,8,9,6,6 木造勇人(愛知工業大)
1ゲーム目が勝負でしたね。昨日の予想で水谷が木造のすごいボールに驚かないようにと言いましたが、実際に木造の立ち上がりは素晴らしかったですね。前陣でカウンターをするときの、上から叩きつけるようなフォアハンドが威力抜群で、このままだと水谷は押されっぱなしになってしまうかと思っていたら、やはり、そこは水谷。2ゲーム目からは厳しい攻めをし出しました。特に、打球点を厳しく攻めていきました。
台上プレーはフェークモーションを使って、とにかく相手の待ちを外す作戦で、台から少しでも出たボールは厳しく攻めてという感じでしたね。水谷がこういう戦い方をするときは、1点がただの1点じゃないんですね。先に相手の待ちを外すことでラリーを有利にできるので、相手によりプレッシャーをかけられる。競ってくると水谷に仕掛けられる前に相手が先に攻めたくなると思いますが、そこで無理に攻めた相手のミスも誘えるし、得意のブロックも生きてくる。水谷はそのために台上のモーションに非常に神経を使っていました。
木造は思い切ってやるしかなかったと思いますが、特に1ゲーム目は彼の良さがすごく出ていました。ただ、中盤以降は水谷に読みと待ちを外されたという感じですね。全日本のシングルスではベスト8からワンランクアップしたので、順調に伸びていると言っていいと思います。さらに大きな目標に向かっていってほしいですね。
(まとめ=佐藤孝弘)
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