3月17日、両国国技館でTリーグの年間王者を決めるプレーオフ・ファイナルが開催された。
女子はレギュラーシーズン1位の木下アビエル神奈川と、2位の日本生命レッドエルフが対戦。日本生命レッドエルフが木下アビエル神奈川を3対2で下し、栄えあるTリーグ初代王座を手にした。
【プレーオフ・ファイナル】
日本生命レッドエルフ 3-2 木下アビエル神奈川
◯常晨晨/蒋慧 -8,7,11 石川佳純/木原美悠
平野美宇 -5,6,-12,7,-9 杜凱琹◯
◯早田ひな 8,-9,9,-3,17 袁雪嬌
前田美優 -10,10,-10,-5 石川佳純◯
◯早田ひな 7 袁雪嬌
レギュラーシーズン中の木下アビエル神奈川はさまざまなペアリングでダブルスを戦ってきたが、ファイナルでは全日本2位の木原美悠に大エースの石川佳純を合わせて必勝を期してきた。一方、日本生命レッドエルフはシーズン中もエースペアとしてチームをけん引してきた常晨晨/蒋慧の中国ペアのオーダー。
ともに裏裏のサウスポーとバック面に表ソフトラバーを貼る右利きという組み合わせの両ペアの試合は、ラリーの安定感と速攻で互いに譲らず、フルゲーム(第3ゲーム)のジュースまでもつれ込む。11−10と木下ペアがマッチポイントを握ったところで、石川が絶好のチャンスボールを痛恨のミス。九死に一生を得た常晨晨/蒋慧が2連続で得点し、日本生命レッドエルフに貴重な先制点をもたらした。
2番は木下が杜凱琹、日本生命は平野美宇。試合は、ハリケーンと称される高速両ハンドを打ち込む平野と、平野の猛攻を台から少し距離を取って杜凱琹がさばくという構図で進む。世界ランキング上位者同士らしい場内が固唾を飲む打撃戦になったが、杜凱琹が多彩なサービスと徹底したミドル攻めで平野の高速プレーをほんのわずかに狂わせてゲームオール9本で勝利。ダブルスで敗れた嫌な流れを断ち切り、木下が振り出しに戻した。
2番に続き、レギュラーシーズン14勝で勝率ランキング2位の袁雪嬌(木下アビエル)と、シーズン11戦全勝の早田ひな(日本生命)の3番もゲームオールにもつれ込む激戦になった。
鋭い両ハンドと時折みせる素早い回り込みで早田のミドルを中心に攻める袁雪嬌。一方、サービスからの3球目とストレートへの連続攻撃で得点を重ねる早田。優勢と劣勢が目まぐるしく入れ替わる試合はゲームオールジュースまでもつれ込み、ジュースに入ってもなかなか決着が着かないしびれる展開になった。
袁雪嬌がコースの読めないバックハンドドライブでマッチポイントを握れば、早田も得意のサービスからの目の覚めるような攻撃でしのぐ。勝てば王手がかかるプレッシャーの中、お互いがゾーンに入ったかのような素晴らしいラリーが繰り広げられたが、最後は早田が気迫でしのぎきり、17本で勝利。不敗神話で日本生命に大きな大きな1勝をもたらした。
4番、あとがなくなった木下はエースの石川佳純。一方の日本生命は好調の前田美優を持ってきた。
石川は、負けたら終わりのプレッシャーに加え、前田の広角に打ち分ける表ソフトラバーでのバックハンドと思い切ったフォアハンドスマッシュに動きを止められて苦しむ。しかし、ゲームカウント1対1で迎えた第3ゲームをジュースで物にすると、第4ゲームはスタートダッシュをかけて前田を引き離し、勝利。石川がエースの意地を見せ、5番のビクトリーマッチへとつないだ。
5番ラストは1ゲーム先取のビクトリーマッチ、追いついた木下は袁雪嬌。一方の日本生命は早田ひな。3番で激闘を繰り広げた再戦になった。
試合は出足から早田がシュートドライブなどの思い切ったプレーで飛び出す。早田に逃げられまいと袁雪嬌もバックカウンターを決めて追いすがる。両者とも中盤まで競り合う展開で進んだが、終盤、ボールを必死に追い、1本多く返す早田が袁雪嬌のミスを誘って抜け出し、マッチポイントを握る。最後、早田のストップを袁雪嬌がネットにかけると、早田は歓喜の涙を浮かべた。
1ゲーム先取のビクトリーマッチは選手間の実力差が出にくいことはもちろんのこと、技術や戦術よりも、気持ちの差が大きく物をいう。この点で「相手より1本多く返す」というシンプルで迷いのない境地に達した早田が上回ったといえよう。
日本生命レッドエルフが激闘を制し、Tリーグ女子の初代王者に輝いた。しかし、敗れた木下アビエル神奈川のプレーも素晴らしく、プロスポーツとして堂々と胸を張れる内容だった。これからもファイナルのような素晴らしい試合を国内で見ることができる幸せを、みんなが共有した千秋楽だったのではないだろうか。
(取材=佐藤孝弘)
詳しい試合の結果はTリーグ公式サイトでご確認ください。
卓球 Tリーグ:https://tleague.jp/