男子シングルス準決勝はフォア面表ソフトラバーという男子には珍しい異質型のファルク(スウェーデン)対今大会のシンデレラボーイとなった安宰賢(韓国)との対戦を梅村が語る。
男子シングルス準決勝
ファルク(スウェーデン) -8,7,-3,4,9,-2,5 安宰賢(韓国)
1ゲームごとに両者の戦術の展開がめまぐるしく変わる見ていて面白い試合でした。前半は特に安宰賢の方がフルスイングで打ち抜く場面が多く見られましたが、マティアス(ファルク)が我慢してちょっとずつ相手にフルスイングさせないところにボールを送ったり、後半は、バック対バックから安宰賢が回り込もうとしたところを見計らって、空いたストレートを突くという戦術も効いていました。よく相手が見えていたし、フルスイングさせないコース取りがうまかったと思います。
前半は安宰賢が、3球目攻撃や、レシーブからもアグレッシブに攻めていましたが、表ソフトラバーのボールの変化を気にし始めてからは、安宰賢が迷ってつないだボールをマティアスが叩きに行くという形も見られました。
また、マティアスは前後に揺さぶるような配球で安宰賢がフルスイングできない状況をつくっていました。ゴズィー戦で多用していたフォア側へのツッツキレシーブも、要所で使っていました。安宰賢に一度持ち上げさせてブロックで振り回して得点につなげていて、マティアスは自信を持って自分の得点パターンとしてこの戦術をうまく使っていましたね。
また、マティアスは1試合を通して、スピード勝負で一気に崩す戦術と変化をつけてフルスイングさせない戦術の2つを並行して使っていました。カタールオープンで張本君と対戦したときのようなスピード対スピードの勝負もしながら、緩急やボールの長短を使って、速さだけでは負けていたかもしれませんが、そうした変化が今回の勝利につながったのだと思います。
経験の差もあったでしょう。マティアスはブロックに自信があるので、フルスイングさえさせなければ止められるという自信があり、少しでも変化を読み誤らせたり、体勢を詰まらせたりすれば打たせてもいいという余裕がありました。
普通は、序盤で安宰賢のあの速さのドライブを見せつけられたら、フォア側にツッツキなどできませんが、自信に裏打ちされた大胆な戦術は豊富な経験があったからこそできたことだと思います。
安宰賢は初出場で、予選から出場し、張本君に勝ち、先輩の張禹珍にも勝って、今日も好調を維持していました。フルスイングしたときのボールの速さはピカイチでしたね。これだけ試合を重ねてきても動きの良さが落ちませんし、スイングスピードも速いし、台上プレーなどの細かい技術もうまく、バランスのよい選手です。
今日、驚いたのは、マティアスのフォア側の表ソフトラバーのボールに序盤から対応できていたことです。特に前半は苦にせず思い切って打ち抜いていて、少しでも浮いたボールは決めに行くという作戦として成功していました。
ただ、ちょっとの迷いやちょっとのポジショニングの悪さ(フルスイングできない)をマティアスは見逃しませんでした。7ゲームをかけて、相手に迷いを生じさせる、自信をなくさせるようなマティアスの試合運びのうまさが光った好試合でした。
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なお、詳しい試合の結果は大会公式サイトでご確認ください。
ITTF(国際卓球連盟):https://www.ittf.com/tournament/5000/2019-world-championships/
2019 World Table Tennis Championships - Budapest:http://wttc2019.hu/