世界卓球2019ブダペストが、ハンガリーのハングエキスポで開催。
最終日は男子シングルス決勝が行われ、馬龍(中国)がファルク(スウェーデン)を4対1で下し、優勝。世界卓球3連覇を果たした。
●男子シングルス決勝
馬龍(中国) 5,7,-7,9,5 ファルク(スウェーデン)
男子シングルス決勝は、馬龍対ファルクという、8大会ぶりに中国対中国以外の国の選手のカードになった。
試合が始まると大方の予想通り、馬龍が圧巻の強さで試合を優位に進める。ファルクのサービスや台上がほんのわずかでも甘くなれば一撃で決め、ゆっくりとした軌道で飛ばすバックハンドで、これまで快進撃を支えてきたファルクのバックハンドのミスを誘う。台上でもラリーでも馬龍が主導権を握り、2ゲームを先取する。
このまま馬龍がすんなり勝つかに思えたが、3ゲーム目は、台上の勝負では全く点にならないことを悟ったファルクが、思い切ったロングサービスやツッツキからカウンターを決め、取り返す。4ゲーム目も終盤まで競り合ったが、9-9の大詰めでファルクが3ゲーム目から封印していたストップで置きにいってしまい、馬龍に狙い打たれて万事休す。あの場面でツッツキやフリックなどで長くいっていたら展開は変わっていたかも知れないが、そこはファルクの選択ミスを責めるよりも、ファルクにストップさせた馬龍の圧力を称えるべきだろう。
5ゲーム目は中盤まで競り合ったが、4-4からファルクの2本連続バックハンドドライブのミスを機に馬龍が抜け出し、中国の大先輩・荘則棟にならぶ3連覇を成し遂げた。
今大会の馬龍は、技術はもちろんだが、戦術の選択と対応力が抜群で、相手をすっぽり包み込んでしまうようなスケールの大きさがあった。世界卓球の会場を見渡せば、馬龍よりチキータがすごい選手やボールが速い選手はいくらでも見つかる。それでも馬龍がトーナメントを圧勝した事実は、卓球が技術を研いだだけでは勝てないことを物語っていた。今の卓球は、みながチキータからの速いラリーをこぞって磨く時代だが、「速さばかりじゃないんだよ」と言わんばかりのストップやツッツキから優位に立ってしまう馬龍の緻密なプレーには、今の若い選手では醸し出せない気品が満ちていた。
決勝のゲーム間、近くで分析しながら観戦していた倉嶋男子監督に、ファルクのベンチが倉嶋監督だったらどうアドバイスしますかと訪ねると、しばし間を置いてから「馬龍に引退してもらうしかないですね」と冗談めかした答えが帰ってきたが、そのコメントが冗談には聞こえないほど、馬龍は強かった。
一方、敗れたファルクも今大会を大いに盛り上げた。ファルクの質の高いバックハンドと表ソフトラバーでのフォアハンドスマッシュというコンビネーションはよく練られており、馬龍のように対応力がなければそうそう打ち破れる仕組みではない。シェーク裏裏が全盛の現代卓球に一石を投じるファルクの活躍だった。
●馬龍のコメント
「記録(3連覇)のことはあまり考えずに、一戦一戦全力で臨みました。シングルスに出場するのは最後になると思うので、悔いが残らないようにという思いがありました。
ファルクのこの2年間の進歩はとても素晴らしく、昨年の世界選手権大会団体でもベスト4進出、また、今回もシングルスで決勝進出と、技術面だけでなくメンタル面でも進化しています。我々中国チームにとって強大な相手の一人に違いありません。
今でも毎日のようにプレッシャーを感じています。ひとたび中国代表になれば、偉大な先輩たちが与えてくれた機会に答えなければという責任からプレッシャーを感じるものです。
怪我でコートを離れていたのは3ヶ月ほどですが、私は幸運にも怪我から復帰し、今回優勝ですることができました。どんな選手でもこういう苦しい時期はあると思います。昨日劉詩雯の優勝を目にして、私も泣きました」
●ファルクのコメント
「大会を通じてアグレッシブなプレーを貫くことを心がけました。自分自身、これまででいちばんの出来でした。とてもハッピーです。
馬龍は非常に強い相手で完成されたプレーヤーです。これからも腕を磨き、1年後はもう少し競れるようになれたら良いですね」
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(写真=佐藤孝弘、文=猪瀬健治)