男子シングルス1回戦
フィルス(ドイツ) -9,-9,6,5,7,9 黄鎮廷(香港)
5月に行われたタイオープンで優勝して以来好調のフィルスが、0対2から4ゲーム連取して逆転勝ちしました。1,2ゲーム目も9-11、9-11と競っていたので、劇的に流れが変わったということはありませんが、フィルスが徐々に黄鎮廷のカット打ちに対して距離感をつかんで、カットのミスが減り、攻撃の精度が上がったのが一番の勝因でしょう。前後の揺さぶりに対しても、うまく攻撃を交えて、完全にフィルスの流れでした。対する黄鎮廷は、後半、決めきれず無理に攻めて自分からミスをするという悪循環に陥ってしまいました。
フィルスが距離を見つけてから、大きくフィルスに流れが傾いた一因に、黄鎮廷のつなぎのカット打ちと強打の振れ幅が小さかったことが挙げられると思います。そのため、フィルスはわりと一定の距離でプレーできていました。黄鎮廷はもう少し強弱、緩急の差をつけないと、対応されてしまいますね。
孫聞(中国) 8,5,7,8 張本智和(日本)
張本君は昨日、練習場でチキータからのバックハンドカウンターの4球目攻撃の多球練習をしているのを見かけました。張本君の得意のパターンですが、この試合では、孫聞はこのボールを待っているような試合展開でした。本来であれば、得点できているようなボールにも対応されていたので、次のボールを張本君が無理して攻めさせられるような状況になっていました。
孫聞は相手が張本君なので思い切ってプレーしていました。予選の1回戦で吉村真晴(日本)に勝ち、2回戦でアサール(エジプト)に勝ちましたが、そのときよりも今日の方がボールが走っていました。また、張本君の速さに対応するためだと思いますが、回り込みを減らしてバックハンドで対応する機会を増やしていました。上背もリーチもあるので、ちょっと穴が見あたらないという感じだったと思います。
張本君は4ゲーム目で少し点差が離れてしまって、肩の力が抜けたときに、逆に安定したいいボールが出ていました。今朝の最初の試合、混合ダブルスの1回戦が相手の棄権で、試合がなくなったので、この試合が今日の1試合目になってしまったので、その影響も少しあるかなとは思いますが、ちょっともったいない試合でした。
後半は点数が取れない苛立ちからか、張本君がおとなしくなってしまったのも気になりました。卓球の場合は、フィギュアスケートなどと違って芸術点はないので、気持ちよくノータッチで抜いても、相手の凡ミスでも1点です。気持ちよく自分の得意な形で得点を重ねて調子が上がっていくというのは、張本君に限らず、ほとんどの選手に当てはまることだと思いますが、いつもそのようなプレーができるとは限りません。この試合では張本君はそこにこだわりすぎたかなという気がしました。
うまくいかないときは、点の取り方にこだわらずどのような形でも1点を取るという気持ちでプレーすること、自分がベンチにいるような気持ちで客観的に自分の試合を分析できるようになると、的確な位置取りや戦術の変更がしやすくなります。張本君は技術レベルは間違いなく世界のトップレベルなので、そういう勝ち方をするという経験を積むことで取りこぼしはなくしていってほしいですね。
なお、詳しい試合の結果は大会公式サイトでご確認ください。
ITTF(国際卓球連盟):https://www.ittf.com/tournament/5005/2019/2019-ittf-world-tour-japan-open/
Seamaster 2019 ITTFワールドツアープラチナ ライオン卓球ジャパンオープン荻村杯 札幌大会:http://www.japantabletennis.com/japanopen2019/
(取材=佐藤孝弘)