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2021年全日本卓球 男子NT監督 倉嶋洋介「海外リーグ経験者に心技体と粘り強さを感じた」

世界卓球2020釜山の延期と中止、東京オリンピックの延期など、ナショナルチームとしては活躍の場を奪われ続けている現状において、男子ナショナルチームの倉嶋洋介監督は何を思うのか? 全日本卓球を観戦した今、その感想と今後の展望を語った。

-今回の全日本卓球男子選手の総括をお願いします。

 コロナ禍で行われた全日本ということで、いつもと違う全日本でしたが、ベスト4の顔ぶれを見ると、森薗(政崇・BOBSON)、及川(瑞基・木下グループ)、吉田(雅己・栃木県スポーツ協会)、この3選手は海外のリーグでも10年近くやってきた選手たちです。
 やはり海外のリーグって、ものすごく悪い環境であったたり、床が滑ったり、10時間かけて移動してすぐ試合をやったり、冷暖房が効いていない体育館で試合をやったり、観客がいない中で試合をやるなど、そういった経験がこの全日本に結びついているんじゃないかと思います。このベスト4に残った選手が、一番、心技体と粘り強さがあったと実感しましたね。
 オリンピック代表の丹羽(孝希・スヴェンソン)、張本(智和・木下グループ)が出場していましたが、丹羽については、プレー自体はそこまでは悪くなかったと思います。敗れた田中(佑汰・愛知工業大)についてもですね、海外の強豪サムソノフ(ベラルーシ)を倒すぐらいの力を持っていますから。1、2本で流れが変わってしまって結果が変わることはあると思います。
 張本については、昨年からのこのコロナの影響で、自宅で半年以上、自粛生活をしていたので。はっきり言うと、まだ(調子が)戻ってきていないというのが正直な感想です。これからオリンピックまで時間がありませんので、全日本が終わってからTリーグはありますけど、しっかりとした強化をしていかないといけないのかなと思います。

-及川選手のプレーを見てどう思いましたか?

 及川はここ1、2年で力をつけている選手の一人です。そして、海外の経験も豊富で、ここ最近の国際大会でもランキングの高い選手に勝ったり、今回も吉村真晴(愛知ダイハツ)、張本に勝って優勝しているということは、非常に評価できることだと思います。
 決勝は森薗が勝ちかけていたんですけども、最後まで自分のペースというか、慌てないでプレーができていたことが最後の逆転劇につながったと思います。

-森薗選手についてはいかがですか?

 2016年の世界卓球の男子ダブルスで銀メダルに輝いてから、その後も「シングルスで勝ちたい」という気持ちをもって、合宿でも自分の進化を常に追い求める選手で「自分が強くなるにはどうしたらいいのか?」と、この1、2年すごく迷っていました。そういった自分を進化させようという気持ちが、ようやく少しまとまってきたんじゃないでしょうか。それがこの全日本につながってきたのではないかと思います。

-張本選手はどこが戻ってきていないと思いますか?

 やはり、自宅でやっている練習というのは、もちろんトレーニングセンターみたいに施設がそこまで整っていませんし、練習相手も限定されてしまいますし、強い者同士で練習する機会もありませんから、その環境でどうやって強くなるのか?と逆に思ってしまいます。
 今回良くなかったのは、昔から僕が言っているようにフットワーク力とフォアハンド。その点の強化がしっかりとなされていないと、バックハンドも効果をなさないという部分ですね。  ワールドカップでは3位に入りましたけど、その試合を見ていても、今後危ないなと思っていたので、そういった部分をこの全日本が終わってから、少しずつ少しずつ改善していって、また、張本自身も1カ月後、2カ月後にはもう1回、ものすごく自信にみなぎっている姿を皆さんにお見せできるかと思います。

-今回の張本選手は敗戦後、淡々としていた印象ですがいかがでしょうか?

 本人の中でも、今の自分ではだめだなというところはあったと思います。ただ、彼はいつも負けた後に落ち込みますけど、すぐ戻るというか、次に進む傾向があります。僕が話したのは昨日の夜なので、そこはしっかりもう一度立ち直って、次に向けての気持ちでいたのではないかと思います。話してるときもそこまで落ち込んでいる印象はなかったですし、今が一番どん底で、これから這い上がっていくだけなんだと、そのような気持ちは強く感じました。

-監督はワールドカップで張本選手のフットワークとフォアハンドが落ちていると思っていたのですか?

 そうですね。結果は出ましたが、フォームであったり、見る人が見れば分かる部分で、張本が目指すところではまだまだなかったと思います。

-オリンピック代表の2人にはどんなアドバイスをしましたか?

 大会期間中は僕も選手と直に会う機会がありませんでしたが、今後のことであったり、この後、WTTのカタール大会があるのでどういう風にやっていくかを丹羽とは話しました。
 張本についても同じホテルにいたので、少し話をして、今後どういう風に強化するのか、どこを重点に環境を整えていくのかを話しました。

-東京オリンピックに向けてどのように調整していきますか?

 すごくよく聞かれることですが、経済とコロナ、どうアクセルとブレーキを踏むかっていうことが言われてますけど、僕らにとっては、強化することにアクセルを踏んで、コロナにはブレーキを踏む。この繰り返しです。
 今はどういうふうに強化をしようかというイメージは持っていますが、そういうことができる環境を整えていくことが大事です。国際大会に行くと2週間の隔離があるので、そこでもう練習ができません。強化の部分で、自分たちでもどうすることもできないことが起きている状況なので、そうした中で、まずは強化する環境であったり、そういったものを今後どうしようかと悩みながらやっている状況です。
 ただ、オリンピック選手たちとはしっかりとコミュニケーションを取りながら、こういう厳しい状況でも、どのように強化していけばいいのか、オリンピックを目指すのか、ということは話し合っていきたい思います。

-東京オリンピックに向けて意気込みをお聞かせください。

 前回のリオオリンピック以上の結果を目標を使命として頑張りたいと思っています。選手たちもそのつもりでいると思います。あとはオリンピックに向けて先ほども言いましたように、どういう強化していくか、そこを環境整備しながらオリンピックに向けて進めていけたらなと思っています。

(まとめ=卓球レポート)

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