数多くの選手をトップレベルへと引き上げ、また勝利へ導いてきた邱建新。世界屈指のプロコーチである邱氏が、その鋭すぎる視点で、李尚洙(韓国)対荘智淵(中華台北)のアジア選手権大会男子シングルス決勝を解説してくれた。
台上の短いボールへの対応で上回った李尚洙
▼男子シングルス決勝
李尚洙(韓国) -10,6,6,-7,8 荘智淵(中華台北)
第1ゲームは、序盤に李尚洙のサービスが効きました。一方の荘智淵はストップが甘くなり、李尚洙に強打されるシーンが目立ちました。このまま李尚洙が第1ゲームを先取するかという流れでしたが、終盤に李尚洙が荘智淵のツッツキやゆっくりしたフリックに対してバックハンドドライブのミスを重ね、第1ゲームはジュースで荘智淵が先制しました。
李尚洙の凡ミスに助けられて第1ゲームを先取した荘智淵は、勢いに乗りたかったところでしたが、第2ゲーム、第3ゲームは受け身のプレーが目立ちました。荘智淵は第1ゲームの終盤と同じように、ツッツキやフリックなどの長いレシーブでミス待ちのようなプレーが多くなってしまいましたが、一方の李尚洙は凡ミスが減り、ボールの質がどんどん高くなって荘智淵がブロックできない展開が多くなり、李尚洙が第2、第3ゲームを連取して王手をかけました。
このままの戦術では勝ち目がないと思った荘智淵は、第4ゲームは一転して、相手のサービスやストップに対してチキータで仕掛け、ほとんど全てのラリーで先手を取りました。フットワークが速くなり、ドライブの質も良かったですね。このあたりの荘智淵のギアチェンジは、百戦錬磨のベテランらしさが表れていたと思います。
優勝が決まる最終の第5ゲーム目、出足の両者のサービスとレシーブからの展開は互角でした。
そんな中、荘智淵は序盤から中盤にかけて、フリックミスやストップミス、台からワンバウンドで出るか出ないかのボールに対するドライブのミスなど、台上の短いボールに対してミスを続けて犯しました。力が拮抗した相手に対し、優勝が決まる最終ゲームのこの局面でこのような凡ミスは致命的です。
李尚洙は、荘智淵の凡ミスで得たアドバンテージを最後まで保ち、優勝をつかみ取りました。
両者の試合は、ラリー戦になったらほとんど互角の展開でしたが、台上の短いボールへの対処という点で、李尚洙が荘智淵をわずかに上回っていました。李尚洙のサービスとレシーブがわずかに良かったと言い換えることもできますが、李尚洙は高い集中力を保ち続け、持ち味であるショートスイングからの鋭いバックハンドドライブもよく決まっており、アジアチャンピオンにふさわしいプレーを見せてくれたと思います。
(取材/まとめ=卓球レポート)