10月23日、水谷隼(木下グループ)の故郷・静岡県磐田市に隣接する袋井市のさわやかアリーナで、木下マイスター東京 対 T.T彩たまの一戦が行われ、木下マイスター東京がビクトリーマッチに及ぶ激戦を制し、地元の多くの水谷ファンに勝利を送った。
木下マイスター東京 3-2 T.T彩たま
水谷隼/張本智和 -8,8,-8 神巧也/篠塚大登○
○及川瑞基 8,9,-10,6 松平健太
松島輝空 -4,-5,-10 英田理志○
○張本智和 10,8,6 丹羽孝希
○及川瑞基 8 英田理志
※ダブルスは3ゲームスマッチ、シングルスは5ゲームスマッチ、ビクトリーマッチは1ゲームマッチ。ダブルス、シングルスとも最終ゲームは6-6から(ビクトリーマッチは0-0から)。ダブルス、シングルスとも最終ゲーム以外はジュースなしのサドンデス(11点先取)
開幕から8連勝と好調のKM東京は、新監督・倉嶋洋介がトップに水谷/張本を起用。「凱旋試合で水谷とペアを組ませるのだったら張本がいいと思った」という粋な計らいで、日本の新旧エースのペアが実現した。対するT.T彩たまは神/篠塚を起用。
五輪後ほとんど練習していないという水谷のパフォーマンスはさすがに奮わなかったものの、張本の決定力の高いボールで、彩たまペアのアグレッシブな攻撃に応戦。フルゲームを制したのは、攻撃力で上回った彩たまペアとなった。
第2マッチは及川対松平。両チームのポイントゲッターの対決は、両者のミスが少なく、質の高い攻撃の応酬となったが、「全日本に優勝してからも進化を続けている」(倉嶋監督)という及川が、打球点の早い攻撃と、ストップ対ストップからハーフロングのボールを強打するなど、攻撃に対する意識の高さを見せ、先輩の松平を3対1でくだした。
第3マッチは松島対英田。英田はバックハンドサービスからの両ハンドの3球目攻撃を軸に、ほとんど守備的なカットを用いない攻撃的なプレーで、松島にペースをつかませずにストレート勝ち。リーグ戦2位争いを抜け出たいT.T彩たまが貴重な2点目を挙げた。
第4マッチは張本対丹羽のオリンピアン対決。琉球戦では有延に敗れた張本だが、この試合では打球点の早いバックハンドの精度も高く、フォアハンドドライブも威力、安定性ともに丹羽を上回った。丹羽もサービスからチャンスを見出したが、ラリー戦で張本に後塵を拝し、勝負はラストに委ねられた。
水谷の凱旋試合、ホームマッチということで、なんとしても負けられないKM東京はビクトリーマッチに10連勝中の及川を起用。対するT.T彩たまは3番で快勝した英田。中盤までは威力のある両ハンド攻撃で英田がリードしたが、及川は集中力の高いプレーで7-8から4点を連取。敬愛する先輩・水谷の凱旋試合を勝利で飾った。
試合後の勝利チームインタビューで水谷は「残念ながら敗れてしまったが、前回よりはいいプレーができた。勝利は明日におあずけということで。(多くのファンに囲まれての試合は)最高でした!オリンピックが終わってから、直接ファンの皆さんに感謝の気持ちを伝えることができていなかったので、改めてご声援ありがとうございましたと伝えることができてうれしい」とファンへの感謝で締めくくった。
「卓球選手でよかった。卓球じゃなかったらここまで来られなかった」
●水谷隼選手のコメント
久しぶりにTリーグに出場させていただいて、残念ながらダブルスに勝利することはできませんでしたが、チームは最後及川が決めてくれて9連勝することができてよかったと思います。
3カ月卓球をやっていませんでしたが、僕の中ではもう少しいいプレーができると思っていたので、そのギャップは感じました。そういう意味で、自分の卓球はこれまでも、才能ではなく、努力を重ねることでやってきたということを感じることができてよかったです。
張本はこの先もいろんな選手とペアを組んでいくことになると思いますが、その中でも自分とのペアが一番印象に残っていると言ってもらえたらうれしいです。今日はお互い100%のプレーができませんでしたが、明日はもっといいプレーができるように頑張りたいです。
今日は自分の同級生やお世話になった関係者の方が大勢見に来てくださっていたので、やはり、地元の力は大きいというのを感じましたし、自分のタオルを持ってくださっている方もたくさんいましたし、少しでもいいプレーができるようにと頑張りました。
今後は未定ですが、自分の中では明日の試合が一区切りと考えています。
自分のアスリートとしての気持ちとしては、東京オリンピックで最後だったので、3カ月経って、まだ自分は卓球選手でいたいという気持ちではありません。オリンピックですべてを出し切って、燃え尽きたという言葉が合ってるんじゃないかと思います。明日は泥臭い試合でもいいので、皆さんに勝利をプレゼントしたいと思っています。
(選手生活を振り返って)悔いはまったくないですね。20何年間やってきて、いいことも悪いこともたくさんありましたし、その中で最後の集大成である東京オリンピックで結果を残すことができましたし、今日もこうしてたくさんのファンの方が応援してくださって、卓球選手でよかった、卓球じゃなかったらここまでこれてなかったと感じました。
選手でいたいという気持ちはありますが、目の問題もありますし、選手としての努力を続けていくために自分の気持ちが追いついていかないという部分もあります。年齢的にもいい引き際なんじゃないかと思っています。
(取材=佐藤孝弘)