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卓球 WTTコンテンダー リマ優勝 
ダン・チウのコメント

 2022年6月14~19日にリマ(ペルー)で開催されたWTTコンテンダー リマで、男子シングルスと混合ダブルスの2冠を獲得したダン・チウ(ドイツ)からコメントが届いた。

写真提供=WTT


ーー男子シングルスと混合ダブルスで優勝したお気持ちをお聞かせください。

 WTTの決勝に進出したのは3回目ですが、ようやく優勝することができました。最近行われているコンテンダー大会はとても強い選手が多く出場しており、優勝することは簡単ではないので、とても特別です。とてもうれしいですね。
 混合ダブルスは、ヨーロッパ選手権大会でタイトルを獲得して以来の優勝なので、シングルスと同じく、とてもうれしいです。

ーー混合ダブルスの決勝は、マッチポイントを2回握られるなど厳しい試合でした。振り返ってみていかがですか。

 決勝はその日の4試合目で夜遅い時間だったこともあり、とても厳しいものでした。ただ、相手は技術的にも戦術的にも、とても良いプレーをしていました。私たちはゲームカウント0‐2で負けていましたし、マッチポイントを2回握られていたので、タイトルを獲得できたことはとても幸運でした。

ダン・チウ(左)とミッテルハム

ーーシングルスは、1回戦で鈴木颯(日本)、2回戦でシュトゥンパー(ドイツ)、準々決勝で吉山僚一(日本)と対戦しました。勢いのある若手選手たちを相手に、どのように試合を進めたのでしょうか?

 最初の3試合はとても若い選手との試合でした。鈴木選手は予選から上がってきて、どのくらい強いのかよく知りませんでしたが、アクジュ(フランス)に3-0で勝って予選を通っているので、かなり良い選手だと分かり、ビデオを見て対策をしっかりと練り、試合をうまく進めることができました。シュトゥンパー(ドイツ)は練習もよくやっていて、よく知っているので、うまく試合を進められました。そして、吉山選手と対戦しましたが、彼が2022年の全日本選手権大会でベスト8まで勝ち上がっていることや、前の試合(1回戦)でピッチフォード(イングランド)に勝っていたことから、強い選手であることは分かっていました。
 彼らは年齢が若いにもかかわらず、すでにとても質の高い卓球をします。私はこれまでやってきたことを出すだけでしたが、自分のプレーができ、3名の有望な若手選手たちに勝つことができて、うれしく思います。

準々決勝は若い吉山僚一(左)に勝利

ーー準決勝はカット型の姜動洙(韓国)との対戦でした。攻撃がとてもうまく、独特のスタイルの選手なので、とても厳しい試合だったと思います。どのように戦ったのでしょうか?

 準決勝で姜動洙と対戦することは驚きでした。正直、私は長いことフィルス(ドイツ)以外のカット型と試合をすることがなかったので、この試合は私にとって特別でしたし、とても楽しんでプレーすることができました。また、7ゲームマッチも楽しみでした。
 彼はとてもタフでした。とても速く動き、フォアハンドでとてもよく攻め、とても勇敢にプレーし、私を限界まで追い込んできました。また、彼のプレーは安定感があり、サービスの種類も多く、攻撃パターンも多いので、ゲームを読むのがとても難しかったです。
 でも、私は集中するように心掛けましたし、カット型とは何度も対戦しているので、最終的には6ゲーム目の接戦を勝つことができました。7ゲーム目に入っていたら、コイントスだった(勝敗は分からなかった)と思います。
 彼は、カット打ちが上手で有名なアポロニア(ポルトガル)やカルデラーノ(ブラジル)に勝って上がってきたので、将来有望だと思います。

準決勝で対戦した姜動洙

ーー決勝のオフチャロフ(ドイツ)戦は、よく知っている同士で、ゲームプランを立てるのが難しかったと思います。実際、試合はとても接戦でした。最初に0-2とリードされ、3-2と逆転し、3-3のフルゲームとなり、最終ゲームで決着をつけることになりました。決勝を振り返ってください。

 ディマ(オフチャロフ)はもちろん互いによく知っていますし、デュッセルドルフで一緒に多くの練習をしてきましたし、良い友人でもあります。また、大会ではよく話をしていますし、互いに助け合ったりしています。
 決勝を振り返ると、ディマは戦術的にも精神的にもよく準備をして臨んでいたと思います。最初の2ゲームと3ゲーム目の途中まで、彼はリードしていました。彼は私よりも強く、私の全てのボールに対応していたといえます。私が3ゲーム目を取れたのは幸運でした。一般的に0‐3でディマにリードされたら、その試合はとても厳しいものになるでしょう。彼があれだけ高い精度と集中力でプレーしているのですから、勝つのはほぼ不可能だったと思います。
 先ほども言いましたが、第3ゲームを取れたのはとてもラッキーでした。その後、ディマが1、2回簡単なミスをし、私は自分のプレーに自信を持ち、いくつかのポイントを簡単に取ることができたので、試合全体を良い方向に持っていくことができました。そして、最後はとてもいい勝負になったと思います。第7ゲームは、どちらに転んでもおかしくない展開でした。5-1とリードしていたのですが、彼が急に追い上げてきて8-7になり、最後に勝てたのはとてもラッキーでした。
 今大会はとにかくアグレッシブにプレーするようにしました。振り返ってみると、第3ゲームを取れたことがこの試合のカギになったと思います。そうでなければ、ディマがこの大会で優勝していたと思います。

ダン・チウ(奧)とオフチャロフ

ーー今シーズンはWTT大会で好成績を残し、世界ランキングは自己最高の10位(2022年第25週)まで上がりました。好調の要因は何でしょうか? また、技術的にはいかがでしょうか?

 今シーズンは、今のところ自分にとってかなりいいシーズンになっています。世界のトップ10に入るというのは、とても特別なことで、達成するのはとても難しいことですから。
 技術的に向上したのは、それぞれの打法をより正確に打てるようになったことだと思います。それが、私の試合に最も大きな影響を与えているのかもしれません。でも、技術的にはあまり変えていません。というのも、私の技術の基本は正確に打つことにありますし、うまくできている感じだからです。そして、私はそれを続けています。なぜなら、マイナス面が見当たらないからです。

ーー邱建新さんからは、アドバイスをもらっていますか? また、父親として、コーチとして、邱建新さんからどのような影響を受けていますか?

 もちろん、父からはたくさんの注意やアドバイスをもらっていますし、私のプレーについて常に連絡を取り合っています。時差の関係で大変なこともありますが、ほぼ毎試合見てくれています。父は次の試合に向けてどのように準備すればいいか、改善するためにフィードバックをしてくれます。もちろん、それは大きな助けになっています。
 昨年の世界卓球2021ヒューストンの前には5~6週間一緒にいてくれました。父が一緒にいてくれた時が私は最も伸びた時期だったと思います。父は練習を見てくれ、私の試合に最も影響を与えてくれていると思います。父は私が幼少のころから見てくれていますし、他の指導者よりも私の卓球をよく知っているので、私はこれからも父と連絡を取り合って自分の卓球の進歩につなげていきたいと思います。

ーーシェークハンドが全盛の中、なぜペンホルダーを選んだのですか? また、その戦型でやっていくと決めたのはいつですか?

 私がペンホルダーの選手になった理由は簡単です。私はシェークハンドでのバックハンドが下手だったからです。シェークハンドラケットのグリップが私の手には長すぎたので、打つ時に手首を曲げるのが難しかったのですが、その時に父が冗談で「だったらペンホルダーにしたら」と言いました。
 私が卓球を始めた頃は、王皓(中国)が全盛期で有名でした。ですので、ペンホルダーラケットを試し、シェークハンドの代わりに最終的にペンホルダーを使うようになりました。

ーーあなたのプレースタイルにはどのような利点があると思いますか? また、若いペンホルダー選手へ世界のトップになるためのアドバイスがあったらお願いします。

 ペンホルダーの最大の利点は、(シェークとは)異なる角度でボールが打てることです。ペンホルダーの選手は多くないため、今はそれぞれのペンホルダー選手が独特だといえます。ですので、初めて対戦する選手との試合では、相手は私の技術、球質、スピンなどに合わせなくてはならず、若干のアドバンテージがあると思います。
 強くなるためには、自分を信じてたくさん練習することです。ペンホルダーであろうが、シェークハンドであろうが、練習をしなければ良い結果は得られません。馬琳(中国)、王皓(中国)、許昕(中国)、黄鎮廷(香港)のように、多くの強いプレーヤーが私より前にハードな練習をしてきているのです。これからもペンホルダーの選手には未来があります。だから、ペンホルダーの持っている長所を生かして、自分のスタイルを作っていけば良いと思います。

左から馬琳、王皓、許昕、黄鎮廷

ーー使っている用具について教えてください。

 現在、私はティモボル ALCのペンホルダー型の特注ラケットを使用しています。表面はディグニクス09Cを使用し、裏面にはディグニクス05を使用しています。アリレート カーボンラケットはとても弾みますが、私はこのラケットを長く使っているので、コントロール性能も良く感じます。どの打法でもとても感触が良いですね。
 ラバーですが、特にフォアハンドで使っているディグニクス09Cは、私にとって良いラバーです。相手のボールをカウンタードライブする際には、特に安定性が高いですし、これまで使ってきたどのラバーよりも軌道が高いので、ここぞという場面で相手のコートにボールを入れることができます。これはこのラバーの大きなアドバンテージだと思います。
 裏面はディグニクス05を使っていますが、バックハンドではスピンよりもスピードが必要だと感じています。バックハンドで打つときは、ほとんど台の近くで打つので、ディグニクス05のスピードは、相手にプレッシャーを与えて、フォアハンドがより効果的になるので、とても役立っています。

ーー最後に、短期的な目標と長期的な目標をお聞かせください。

 2024年のオリンピックを短期と見るか、長期と見るかは分かりません。しかし、ドイツのオリンピック代表選手になることが目標であることは確かです。ドイツには、過去数十年にわたり、オリンピックで多くのメダルを獲得してきた豊かな伝統と歴史があります。ですから、私もその一員となり、チームの一員となることができればと思います。ドイツチームに入りたいのなら、かなり強くなければなりません。これは私の大きな目標の一つです。
 短期的にせよ長期的にせよ、目標設定としては、私は常に自分の競技力を向上させることを念頭に置いています。どんなトーナメントが控えていようと、最も重要なのは上達することです。


 ダン・チウは、元中国代表であり指導者として名高い邱建新を父に持つサラブレッドだが、生まれも育ちもドイツという生粋のドイツ人である。伝統的なペンホルダーの技術を習得し、25歳にして進化を続けている。今後のダン・チウの活躍に注目したい。

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