9月10日、5年目となるノジマTリーグ2022−2023シーズンの男子が大田区総合体育館(東京)にて開幕。
開幕戦は有観客で行われ、昨シーズンファイナルで優勝を争った木下マイスター東京とT.T彩たまの対戦となった。試合はビクトリーマッチまでもつれる接戦になったが、T.T彩たまが木下マイスター東京を0対2から逆転で下し、白星スタートを切った。
T.T彩たま 3-2 木下マイスター東京
上田仁/松平健太 10,5 大島祐哉/篠塚大登○
曽根翔 4,-9,-10,-6 及川瑞基○
○英田理志 9,10,-4,6 カルデラーノ
○松平健太 10,8,10 篠塚大登
○英田理志 4 及川瑞基
※ダブルスは3ゲームスマッチ、シングルスは5ゲームスマッチで第5ゲームは6-6から。ダブルスは第3ゲーム、シングルスは第5ゲーム以外はジュースなしのサドンデス(11点先取)
4度目のリーグ制覇を狙う木下マイスター東京は、大島と篠塚に先取点を託す。一方、リーグ初制覇を目指すT.T彩たまは経験豊富な上田と松平をトップのダブルスに起用してきた。
第1ゲームはジュースまで競り合うが、木下ペアがチキータで物にすると、第2ゲームは篠塚の両ハンドと大島のフットワークが冴えた木下ペアがペースを握り、木下マイスター東京が先制点を挙げる。
2番は、木下が昨シーズンMVPの及川、彩たまは同じく昨シーズン大車輪の活躍を見せた曽根で巻き返しを図る。
試合はバックハンドが冴えた曽根が先制するが、及川が持ち前の粘り強いプレーで曽根のバックハンドを受けつつフォアハンドのミスを誘って勝利。木下マイスター東京が早くも勝利に王手をかける。
一気に勝利を決めたい木下は、今シーズンの目玉ともいえるカルデラーノ、一方の彩たまは英田に望みをつなぐ。
カルデラーノの登場で木下が勝利を収めるかに思われたが、英田が踏ん張った。「向かっていく気持ちしかなかった」という英田は、得意のバックハンドサービスから攻撃を的確に決め、ときにカットでミスを誘い、カルデラーノを後手に回す。世界ランク5位のプライドにかけて簡単に負けられないカルデラーノもなんとか打開策を見出そうとするが、英田の変幻自在のプレーにペースがつかめない。結果、英田が3対1で値千金の勝利を挙げ、彩たまが一点を返した。
初戦で手痛い洗礼を浴びたカルデラーノだが「(来日して間もないため)ベストコンディションではなかったが、英田選手は普段対戦しないようなタイプの選手で良い選手。これからも試合は続いていくので、チームの勝利に貢献できるよう頑張りたい」と、巻き返しを誓った。
イーブンに追いつきたい彩たまは松平、一方の木下は篠塚に引き続き勝利を託す。
天才的なボールタッチを持つ両者の試合は、随所に好ラリーを見せながらも要所を物にした松平が勝利し、彩たまがビクトリーマッチへと持ち込んだ。
文字通り勝者が決まる1ゲーム勝負のビクトリーマッチ、彩たまは英田、木下は及川を起用。過去の対戦では及川優位だが、「(3番でカルデラーノに勝ったのに)負けて終わるのは嫌だなと思っていたが、ヒーローになれるチャンスだと気持ちを切り替えて覚悟ができた」という英田がラブオールから猛然とスパートをかけ、及川に勝利。
岸川聖也氏が監督となり、新体制でリーグ初制覇を目指すT.T彩たまが、大逆転勝ちで好スタートを切った。
●T.T彩たま 岸川聖也監督のコメント
0対2の時点では、やっぱり木下さん強いなという感じでしたが、3番の英田が流れを全部変えてくれました。(英田の勝利が)その後の健太(松平)もそうですし、ビクトリーマッチにもつながったのかなと思います。オーダーは運ですが、たまたま今日は選手たちがやりたいという相手とばっちり当たりました。ビクトリーマッチは、曽根も考えましたが、2番で負けていたので、出場が予想された及川には英田も分が悪いですが、彼の勢いを買いました。
(監督に就任して半年だが)1番意識しているのはチームワークの良さ。技術的にはみんなトップ選手なので、彩たまの練習場に行くのが楽しいと思ってもらえるような雰囲気作りを心掛けています。
本当に良いスタートが切れたので、これをどんどん継続していい試合を続けていければ、ファイナル進出も見えてくると思うので、そこを目指して頑張っていきたいです。
●T.T彩たま 英田理志選手のコメント
個人の試合もそうですし、チームとしてもですが、出足がすごく大事だなって思っていたので、今日、勝つことができて本当に嬉しいです。 カルデラーノ選手は世界のトップ選手で負けて元々なので、逆に気楽に本当に挑戦者の気持ちで思い切ってプレーすることができました。自分のプレーがどこまで通用するのかなという気持ちで入って、1ゲーム目で自分のサービスもプレーも効いたので、それは自信になりました。自信になりましたけど、どんどん慣れられてくると思うので、慣れられてからでも勝てるように練習していきたい思ってます。勝ったのはうれしいですけど、1回勝っただけで、これから強くなっていけば何回も対戦していく相手だと思うので、何回やっても勝てるような実力をつけれるように頑張りたいなと思います。
ビクトリーマッチはこれまで6回くらい出させてもらって1回も勝ったことがない。せっかくカルデラーノ選手に勝って、ビクトリーマッチ負けたら、負けて終わりみたいな、ちょっと嫌な気持ちになるなという思いは正直あったんですけど、逆にそんなこと思っていても仕方がなくて、「ヒーローになれるチャンスだ」っていうふうに自分に言い聞かせて、気持ちを切り替えて覚悟を持ってできました。
Tリーグに入ったばっかりの時は、自分は全国大会の個人戦でランキングランクに入ったこともなかったし、Tリーグの選手の中で、多分、僕だけが公立中高卒業出身の選手なので、卓球エリートばかりの選手の中で自分が活躍できることを証明したい気持ちでやってきました。
これまでたくさん負けて悔しい思いをしてきましたが、今日みたいに嬉しいこともあるので諦めずにこれからも頑張ろうと思います。
●木下マイスター東京 倉嶋洋介監督のコメント
準備してきたことがしっかりできた部分もあれば、最後の詰めが甘い部分から逆転されたり、悪い流れになってしまったりしたかなと。団体戦として、あまりいい形に持っていけなかった。やっぱり1本が流れをがらっと変えてくるものなので、そういったところの詰めが少し甘かったかなと思います。
良かったところは、団体戦においては1番のダブルスが重要なので、ダブルスはしっかり練習してきた部分が出せたかなと。もう一つは、日本人のエースの及川が、ここ最近自信をなくしていましたが、今日はいつも負けている曽根くんに対して良いプレーをしてくれたので、自信につながるのかなと思います。
(カルデラーノは)来日して3日目で、英田選手はトリッキーな素晴らしい選手なので、きつかったのかなと。乗り越えてほしかったですが、コンディションがあまり良くない中、よくあの場に立ってくれたなと思います。
(今シーズンは)戦力的に他のチームも非常にそろってきていますので、今年も混戦が予想されます。小さな差をどれだけ勝てるかがポイントになるところで、今日はその小さな差で負けてしまいましたね。
詳しい結果はこちら
T-LEAGUE:https://tleague.jp/
(取材=卓球レポート)