第58回世界卓球選手権団体戦が、韓国の釜山で2月16〜25日にかけて開催される。
大会9日目の2月24日(土)は女子団体決勝が行われ、中国が日本を3対2の接戦の末に振り切って優勝し、6連覇を果たした。
▼女子団体決勝
中国 3-2 日本
○孫穎莎 3(5,8,4)0 張本美和
陳夢 1(6,-8,-9,-12)3 早田ひな○
王芸迪 0(-8,-11,-10)3 平野美宇○
○孫穎莎 3(2,7,6)0 早田ひな
○陳夢 3(-4,7,8,7)1 張本美和
5大会連続で同じ顔合わせになった世界一がかかる大一番、中国のトップは世界女王の孫穎莎、対する日本は成長目覚ましい張本美和で勝負をかける。張本は孫穎莎に対し、昨年11月に行われたWTT女子ファイナルズではゲームオールまで迫ったが、1月に行われたWTTスターコンテンダー ドーハではストレートで敗れている。世界卓球決勝という最高の舞台でまたも世界最強の選手に挑むという大きなチャンスが与えられたが、この試合は孫穎莎が強かった。
第1ゲームは、バック対バックの多彩さと威力に加え、張本にフォア側に振られても強打で対応した孫穎莎が先制。
第2ゲーム、なんとか状況を打開したい張本はサービスを工夫して互角の展開に持ち込んだかに見えたが、要所でのレシーブミスが響き、孫穎莎がゲームカウント2対0とリードを広げる。
あとがなくなった張本はさらにリスクを負ってフォア側やミドルを攻めるも、孫穎莎が強烈なカウンターを浴びせ、世界女王の力を見せつける形でストレート勝利し、中国が先制する。
続く2番は、東京五輪金メダルの陳夢対日本のエース・早田ひな。
第1ゲームは、早田のフォア攻めに的確に対応し、3球目、4球目でも先手を取った陳夢が先制する。
早い段階でもラリーでも隙のない陳夢強しと思われたが、第2ゲームから早田が本領を発揮する。陳夢のバック側にボールを集め、動いてフォアハンドで攻める機会を増やして第2ゲームを取り返すと、第3ゲームは陳夢のミドルへのロングサービスで主導権を握って連取し、早田が2対1とリードする。
第4ゲームは、早田がミドルを起点に攻め続けるも陳夢がこれに対応する一進一退の展開でゲームが進み、10-8と早田がゲームポイントを握るが、簡単に負けられない陳夢が意地のプレーでジュースに追い付く。しかし、ここで決めたい早田が強気のロングサービスから陳夢の厳しいバックハンド連打に対してフォアハンドをねじ込んでミスを誘うと、最後は台上のボールがネットインし、早田が東京五輪女王を撃破。
前半は両チームのエースが充実のプレーで取り合い、3番につなぐ形になった。
3番は王芸迪対平野美宇。お互いに巻き込み系のショートサービスを多用し、バック対バックの展開を得意とする両者の対戦は、バックハンドの質の高さと両ハンドの決定力の高さ、要所でチキータレシーブも効いた平野が第1ゲームを先制する。
第2ゲームは王芸迪が平野のフォア側にサービスを集めてリードするが、平野がチキータで対応し、4-6から7-6と逆転。ここで中国ベンチがタイムアウトを取り、王芸迪が10-8と先にゲームポイントを握ったが、平野が懸命のバック対バックを2本制してジュースに追い付くと、王芸迪にミスが重なって平野が2ゲームを連取し、勝利に王手をかけた。
続く第3ゲーム、序盤はバック対バックで王芸迪が上回り、平野は3-7とリードを許すが、ここからバックストレートを使うなど王芸迪のフォア側へ展開した平野がじりじりと追い上げる。しかし、第2ゲームに続いて、このゲームも王芸迪に先にゲームポイントを握られてしまうが、しびれるようなバック対バックに耐えてジュースに追い付くと、最後は王芸迪のバックハンドドライブをフォアハンドドライブで攻めた平野がストレート勝利。
最強中国を相手に、日本が2対1と優勝に王手をかけた。
続く4番、前半で勝利したエース対決は、またしても孫穎莎が圧倒的な強さを見せつける。
ラブオールから早田が強烈なバックハンドカウンターとフォアハンド連打で2連続得点し、幸先の良いスタートを切ったかに見えたが、そこから孫穎莎が変化の分かりにくいサービスと質の高い両ハンドで10連続得点し、孫穎莎が先制。
第2ゲームは早田もトスの高さや下回転を混ぜるなどサービスを工夫したが、局面を打開するまでには至らず、ラリーでも強力なフォアハンドを放った孫穎莎が連取する。
第3ゲームもサービスが効く孫穎莎の優位は変わらず、早田をストレートで退けて中国が追い付き、勝敗は5番の陳夢対張本美和にゆだねられた。
運命のラストは、15歳の張本が東京五輪金メダリストの陳夢をラリーで圧倒するパーフェクトな立ち上がり。
第2ゲームはオープンラリーにしたい張本と、早い段階で決めたい陳夢のせめぎ合いが続くが、陳夢が張本のフォア前にサービスを集めてペースをつかみ、取り返す。
第3ゲームは6-6まで互角の展開で進むが、ここから張本が2連続サービスエースを決め、主導権を握ったかと思われた。しかし、陳夢も、それまで徹底して張本のフォア前からミドル前に出していたサービスを、ロングサービスとバック前へのショートサービスに切り変えて意表を突くさすがの戦術転換で8-8と離されない。続く1本のラリーを陳夢が取って8-9となったところで日本がタイムアウト。これを機にこのゲームを奪いたい張本だったが、陳夢が力強いバックハンドドライブで張本のオーバーミスを誘うと、思い切ったロングサービスからの3球目攻撃を決めて2対1とリードする。
第4ゲーム、逃げ切りたい陳夢に張本が追いすがる展開。5-5から張本が思い切ったロングサービスを2本繰り出して7-5とリードするも、ラリーで粘り強さを発揮した陳夢が逆転し、10-7とチャンピオンシップポイントを握る。最後は、陳夢のロングサービスに対して張本のバックハンドでのレシーブがオーバーし、中国女子の世界卓球団体戦6連覇が決まった。
またしても中国の厚い壁に阻まれた日本だが、2対1と王手をかけ、中国をあと一歩まで追い詰めたプレーは見る者の心を大いに揺さぶった。
可能性を感じさせてくれた。中国との差は詰まっている。これからに期待したい。これまで4大会連続決勝で中国に敗れた日本について結んできた言葉だが、今回ほど実感がこもったことはない。あと一歩というところで歴史的瞬間に立ち会えなかったことは残念の極みだが、その一方で、これだけ迫られてなお勝利を譲らなかった中国の懸命なプレーもまた感動的だった。
今大会では紙一重に見えた差でも、実はとんでもなく大きな差かも知れないし、本当に薄紙一枚ほどの差しかなかったのかも知れない。その答えは今後の両チームの戦いにゆだねるしかないが、今はただ、深夜まで球史に残る素晴らしいプレーを繰り広げてくれた中国と日本の両チームに最大の拍手を送りたい。
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詳細な記録は下記サイトでご確認ください。
WTT:https://worldtabletennis.com/teamseventInfo?eventId=2751
(まとめ=卓球レポート)