元全日本王者の渋谷浩が大会4日目の男女ジュニア、混合ダブルス準決勝・決勝について振り返る。
■ジュニア男子決勝・準決勝
決勝は吉村対酒井の対戦になりましたが、吉村の直線的なボールに威力と破壊力があったこと、それにつきますね。一発で打ち抜くボールが非常にすばらしいコースにことごとく決まっていました。酒井は1ゲーム返しましたが、内容的には吉村が圧倒していたといっていいでしょう。酒井もあの手この手と目先を変えたプレーで揺さぶりましたが、吉村のパワーが勝っていました。両者の卓球に共通しているのはハイリスクハイリターンという点ですが、ボール1個分浮いたり、台から出てしまったときの一発の厳しさ、またそのときの集中力は吉村がすばらしかったと思います。
吉村は準決勝で村松を破りましたが、カット対ドライブのラリーになったらほとんどストップせずに強いドライブを打ち続けていました。決め手になったのは通常より早い、頂点前の打球点で打つスピードドライブです。村松はこのボールをしのぎきることができませんでした。また、ストップとツッツキがほとんどなかったので、村松は攻撃を仕掛けるタイミングも見つけることができませんでした。吉村のスケールの大きなプレーに圧倒されましたね。
酒井対郡山は、酒井がフォアストレートで郡山のフォア側を攻めて、郡山の回り込みフォアハンドドライブを防ぐ戦術が功を奏しました。フォア側を意識させてうまく回り込みを封じましたね。高速ラリーの中でもいろいろなバリエーションのドライブを持っているという点でも酒井が上回っていたと思います。
■ジュニア女子決勝
お互い手の内を知っているチームメイト同士の対戦で、どちらが勝ってもおかしくない試合になりましたが、わずかな勝負どころでの平野のミスが勝負を分けたというところでしょう。ラリーではお互い遜色なく、息が詰まるような前陣高速ラリーの応酬になりました。平野はほとんどのボールに回転をかけて返す、一方、加藤は上からたたける、浅かったら踏み込んで打てるという違いはありますが、実力には差はないと思います。加藤は精神的な我慢強さもありました。終盤、自分から決めようと勝負をかけてきていたのは平野の方でしたが、加藤は得点を取るよりも失点を防ぐようなプレーが多かったので、前陣高速ラリーですが、持久戦で加藤が勝ったと言ったところでしょう。
■混合ダブルス決勝・準決勝
攻め込むのは吉村・石川でしたが、張・森薗はとにかく耐えてすきをうかがうという展開でしたが、結果的には「肉を切らせて骨を断つ」といったような、要所要所で攻撃でポイントしていましたし、ミスを誘うようなプレーで、最初から最後まで安定していました。プレー内容に波がないローリスクローリターンでした。かたや、吉村・石川はハイリスクハイリターンで、入れば決定打になりますが、連続失点も多かったですね。1ゲーム目は吉村・石川の流れでしたが、ほんの少しコースを厳しくしたり、回転をかけて伸ばして返したりすることで、相手のミスを誘っていきました。
準決勝の張・森薗対笠原弘・笠原多はお互いに安定感のあるペアでしたが、笠原弘がレシーブのときにとにかくチキータでチャンスをつくろう、得点しようという戦術でポイントを稼いでいましたが、張・森薗を崩すまでには到りませんでした。しかし、兄妹で息の合ったプレー、どんなボールにも返せる対応力、そういう強みがよく出ていました。健闘したと言っていいでしょう。
吉村・石川対松平・若宮は、昨日の見どころでも語ったとおり、台上の勝負になりました。台上でチャンスをつくって先に上から打った方が勝ちという勝負でした。意外にすんなり決まってしまったのは、松平・若宮の方が、厳しくいこうとしすぎてナーバスになったからかもしれません。
記録・タイムテーブル等の情報は日本卓球協会ホームページに掲載されています。
日本卓球協会:http:/www.jtta.or.jp
記録ページ:http://www.jtta.or.jp/AJ/result2013/
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全日本選手権大会の特集は卓球レポート3月号(2月20日発売号)に掲載します。
[国内大会]
元王者が全日本を語る「渋谷浩の眼」⑤男女ジュニア・混合ダブルス決勝
2014.01.17
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