1月12~18日まで東京体育館で開催されている平成26年度全日本選手権大会(一般・ジュニアの部)。大会の全日程が終了し、水谷(beacon.LAB)が2年連続7度目の栄冠をつかんだ男子シングルスについて平成11年度全日本チャンピオンの渋谷浩が振り返った。
男子シングルスは前回王者の水谷が初の決勝進出を果たした神(明治大)をストレートで破り、連覇を達成しました。
決勝では吉田海偉(Global Athlete Project)や丹羽(明治大)といった全日本で優勝の経験がある選手を退け、勢いに乗る神に対して、水谷が徹底した戦術を見せて4対0で勝利しました。
神は威力のあるフォアハンドドライブが特長の選手ですが、水谷は神のドライブを防ぐために、中途半端なレシーブをしないことをプレーの軸にして試合を展開しました。特に神の下回転のサービスに対して、ストップレシーブやフリックなどを織り交ぜて、3球目攻撃でフルスイングさせないようにした点が良かったです。
また、要所で神のフォア側に打球することで、神が得意としているバック側に回り込んでからのフォアハンドドライブの攻撃パターンを防いだことも勝因の一つに挙げられるでしょう。
初の決勝進出を果たした神は、勢いそのままにゲーム序盤でファインプレーを連発してスタートダッシュを成功させましたが、水谷に得意のフォアハンドドライブを封じられてしまいました。神としては威力のあるボールを前陣で打ちたかったのですが、水谷の打球点の早いブロックの前に台から下げられてしまいました。加えて、水谷は守りから攻めに転じるスピードも速く、前陣で攻撃する隙を与えてもらえませんでした。
決勝で敗れはしましたが並みいる強豪に対して、ドライブの連打で打ち勝ってきたことは非常に評価できます。相手の想像を越えるような意外性のあるボールを打つ力も備えており、今後の大会でもその活躍に注目が集まります。
準決勝の水谷対岸川(ファースト)は、水谷が台上処理で岸川を上回りました。岸川はストップレシーブを中心にしたプレーで水谷の攻撃を防ぎたかったのですが、水谷がストップレシーブとツッツキレシーブを巧みに使い分けたことで、岸川の返球が甘くなり、攻撃のチャンスを与えてしまいました。
また、水谷は返球時にフェイントを入れるなど、技術の高さを見せて岸川に的を絞らせなかったことも勝因として挙げられます。
もう一方の神対丹羽の試合は神がゲームオールの激戦を制しました。神はフットワークを生かした攻撃で第1ゲームを先取しましたが、第2ゲームからは丹羽が台上のボールに対して積極的にドライブで攻めてゲームの主導権を握りました。このまま丹羽のペースで試合が進むかと思いましたが、中盤から終盤にかけて、丹羽のドライブのスピードやコースが甘くなり、神がドライブを打ち返して得点を重ねる展開になりました。神は2対3とリードされて迎えた第6ゲームでも1対4のビハインドから逆転して、試合の流れを引き寄せ、決勝進出を決めました。
丹羽の終盤にかけての失速の要因は昨日、試合がなかったことで試合勘が鈍ってしまったことが挙げられるでしょう。あと一歩で2年ぶりの決勝進出だっただけに本人としても悔しい結果だったと思います。
詳しい情報は日本卓球協会ホームページに掲載されています。
日本卓球協会:http:/www.jtta.or.jp
全日本卓球(特設サイト):http://japantabletennis.com/zennihon2015/
記録ページ:http://www.jtta.or.jp/AJ/result2014/
全日本選手権大会の特集は卓球レポート3月号(2月20日発売号)に掲載します。