大会4日目を迎えた平成27年度全日本選手権大会(一般・ジュニアの部)。男女ジュニアと混合ダブルスで決勝が行われ、3種目で今大会初の全日本チャンピオンが誕生した。それぞれの種目の戦いについて、平成11年度全日本チャンピオンの渋谷浩が大会を振り返った。
<ジュニア男子決勝、準決勝>
木造(愛工大名電高)は前陣で速いタイミングで両ハンドを振ってくるタイプです。それに対して緒方(JOCエリートアカデミー/帝京)は台から距離を取って、オールラウンドでスケールの大きいプレーをするのですが、その緒方が、戦術だったのか木造のプレーにつられてしまったのか、自分の得意なプレー領域でプレーせずに前陣でプレーしてミスを重ねて2ゲームを失いました。3ゲーム目くらいからタイミングが合いだしてポイントを重ねましたが、最後まで続きませんでした。
緒方は強力なチキータが武器ですが、木造はサービスのバリエーションがあり、チキータ対策の準備ができていました。チキータをさせない、もしくは、威力のあるチキータを打たせないような工夫をしていました。また、木造はフォア側を狙って台から離そうとする緒方に対して、前陣を死守して緒方のリスクを背負ったプレーにも動じずに素晴らしいプレーをしていました。
準決勝は、伊丹(野田学園高)が木造を追い詰めました。得意とする「後の先」で得点を重ねました。攻めた相手は防御の体勢ができていないので、そこに隙ができます。それで反撃に合って、攻めている木造の方が失点するというパターンで最終ゲームもリードしましたが、そこで伊丹のプレーが単調になり、台との距離、ボールのスピード、打球タイミングなどがそろってしまい、木造に狙われて逆転されてしまいました。序盤で5-0とリードしていたので、「このリードを守ろう」という消極的な姿勢が単調なプレーにつながってしまったのかもしれません。ただ、どちらが勝ってもおかしくない素晴らしい試合でした。
小学生で初のベスト4入りをはたした張本(仙台ジュニアクラブ)は緒方にストレートで敗れました。張本は両コーナーにタイミング早く打つプレーが得意ですが、それに対して緒方はフォア側にオープニングをつくらないようバック側は回り込まずにバックハンドで対応していました。また、タイミング早く攻められても中陣から盛り返して、張本が防戦という展開になっていました。緒方がスケールの大きいプレーで張本に自分の卓球をさせませんでした。
<ジュニア女子決勝、準決勝>
決勝の第1ゲームは浜本(JOCエリートアカデミー/大原学園)が様子を見ながらいろいろな攻めを見せて先行しました。橋本(四天王寺高)をストップで台に寄せたところでミドルに強打するなどいいプレーが見られました。第2ゲームは浜本がカット打ちで粘りだして強引さがなくなり、それに対して橋本が腰を据えてカットしだしたのでミスがなくなり、橋本が取り返しました。第3ゲームからはまたサービス+3球目攻撃、ストップからのドライブ攻撃など、カットに対して攻撃的なプレーで2対1としました。第4ゲーム目もその流れでしたが、6-1とリードしたところで橋本のいいカットを深追いして強打をミスしたところから橋本が主導権を握りました。橋本は浜本のストップに対して強打を入れ始めるなど応戦していました。最終ゲームも浜本は強打をせず、ツッツキ、ストップ、カット打ちでリスクを負わずにプレーしましたが、最後に要所でスマッシュを決めて、精神的な踏ん張りで勝ったような試合でした。
勝った浜本は、バックミドルに高めのループドライブを入れていたのが効いていました。カット主戦型にとってラケット角度が出しにくく、もっとも処理しにくいボールです。そこから強打に結びつけるパターンが光りました。
平野(JOCエリートアカデミー)は、橋本のカットに対して、前後に揺さぶりをかけて橋本を台の近くに寄せたところで打球点の早いバックハンドドライブを打つなど、工夫をしていましたが、橋本が軽快なフットワークと粘り強さで勝ち切りました。平野としてはスマッシュの手数が少なく、ドライブの種類が少ないため、非常に苦しい試合でした。ドライブの種類というのは、例えば、浜本はフォアクロスに打つときにカーブドライブを交えるなどしていますが、平野はそういったボールが少なく、ドライブに伸びがないため、橋本に強い回転をかけられて負けてしまいました。
もう一方の準決勝は、浜本が梅村のフォアサイドを打ち抜くことができるかどうかというところがポイントになりました。フォアサイドを打ち抜くことで、梅村がフォア側で待ち構えることが多くなり、バックハンドにボールを送ったときにもミスが出やすくなります。そういった点が勝負の分かれ目になったのですが、浜本の場合はフォアハンドドライブを高い打球点で、逆モーション気味に梅村のフォア側に打つことができており、それが効果的に決まって試合を優位に進めることができました。敗れはしましたが、梅村は両ハンドともにブロックが非常にうまかったです。梅村と対戦する選手はタイミングや梅村の予測を外したり、スピードのあるボールを送るなどしないと、梅村のフォア側のブロックを打ち抜くことができません。フォア側ばかりにボールを集めてしまうと、カウンターを食らってしまうので、浜本との試合でも要所でフォアサイドを突くということがポイントになりました。浜本は要所でフォア側を突くことができたからこそ勝利することができたと思います。
<混合ダブルス決勝>
優勝した田添/前田は見た目通り豪快なプレーで得点をとっていました。相手の強打に対してもカウンターで得点したり、とにかく派手なプレーで優勝したと思います。派手なプレーでの得点は相手にとってはダメージが大きく、得点は1点ですが3点分くらいの影響力があり、そういったプレーが田添/前田はできていました。今大会の混合ダブルスはどのペアが優勝するか予想できなく、実力がきっ抗していましたが、田添/前田はその中でチャンスをものにしました。宮本/高橋は決勝で敗れはしましたが、宮本のチキータのコース取りが良くて、前田のフォアサイドを突いて得点を稼いでいましたが、相手に上回られてしまったという感じでした。
記録・タイムテーブル等の情報は日本卓球協会ホームページに掲載されています。
日本卓球協会:http:/www.jtta.or.jp
各種目の組み合わせ(PDFが開きます)
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