世界卓球2016クアラルンプール(2月28日~3月6日)大会7日目は男女決勝トーナメント準決勝の3試合が行われた。19時30分(日本時間20時30分)からは男子準決勝の日本対イングランドが行われ、日本が3対1で勝利。1977年のバーミンガム大会以来39年ぶりの決勝進出を決めた。
<男子決勝トーナメント準決勝>
日本 3−1 イングランド
○水谷 8,9,4 ドリンコール
○吉村 5,-12,7,-10,9 ピッチフォード
大島 -6,-6,8,-9 ウォーカー○
○水谷 -8,-10,7,10,6 ピッチフォード
吉村 ー ドリンコール
日本は準々決勝からオーダーを変更。水谷、吉村の2点起用は変わらないが、不調の丹羽に変えて大島を起用するオーダーでこの大一番に挑んだ。
1番は水谷対ドリンコール。試合の序盤から水谷の動きに固さが見える。それでも厳しいストップの応酬から積極的にフォアハンドで攻めて得点するなど、8-8で試合終盤を迎える。この場面でサービスを持った水谷は2本連続でサービスで得点。これでゲームポイントをつかんだ水谷は10-8のラリーをきっちりと締めて第1ゲームを先制した。
続く第2ゲームも終盤まで接戦が続いたが、10-9のラリーで相手のレシーブが浮いたところを見逃さずに3球目で強打して得点。ゲームカウントを2対1とした。
2ゲームを奪い、固さがとれた水谷は第3ゲームでドリンコールを圧倒。それまで互角のラリー戦を繰り広げていたドリンコールに打ち勝つ場面が増えるなど終始相手を圧倒して11-2で勝利。日本に大きな1勝をもたらした。
続く、2番は吉村対ピッチフォードの対戦。この試合、吉村はスタートから動きの良さを見せた。両ハンドの強打が特長のピッチフォードに対して、得意とするサービスからチャンスをつくり出してゲームを優位に進めて11-5で先制。幸先の良いスタートを切った。
続く第2ゲームは相手のサービス時のフォルトもあり、10-5とゲームポイントを奪ったが、サービスの位置をバック側からフォア側に変えたピッチフォードに対して吉村が立て続けにミス。10-7となったところで日本ベンチはタイムアウト。自身のサービスで決着をつけたい吉村だが、ピッチフォードにうまく対応されてしまい10-8。続く相手のサービスに対してバックハンドのミスが続き、ゲームはジュースに突入した。なんとかしてこのゲームを奪いたい吉村だったが、レシーブで吉村の逆を突いてチャンスをつくるなど、ピッチフォードが驚異の集中力で逆転。ゲームを奪い返された。
第3ゲームは2-5とリードされた吉村。しかし、フォアハンドの打ち合いを制して5-5と同点に追いつくと、吉村の持ち味であるバックハンドドライブが冴えて6連続ポイントで逆転。このリードを最後まで守り切ってゲームカウントを2対1とした。
第4ゲームで決着をつけたい吉村は序盤でリードするも、ピッチフォードの強烈な両ハンドドライブに押し込まれて10-12と逆転され、勝負は最終ゲームへ。
第5ゲームはスタートからダイナミックなラリーが展開されると、会場がヒートアップ。このラリーを制したピッチフォードに観客が大声援を送った。これで勢いに乗ったピッチフォードに対して、その後も攻め立てられて4-8と苦しい状況に立たされた。6-9の場面では壮絶なラリー戦を制した吉村だったが、ラリーの途中でボールが割れてラリーがやり直しになるなど、不運も重なり万事休すかと思われた。しかし、ここから吉村が猛追。ミスが続いていたチキータでピッチフォードの両サイドを打ち抜くいて、10-9と逆転すると、最後はフォアクロスの打ち合いを制して勝利。窮地に追い詰められてから真骨頂を発揮した吉村。会場全体のボルテージが上がり、極限の状態で行われた大打撃戦を制して日本に2勝目をもたらした。
3番は大島対ウォーカー。盟友・吉村に続きたい大島だったが、39年ぶりの決勝進出という重責が重くのしかかる。フットワークが持ち味の大島だが軽快な動きが見られず。ウォーカーがバック深くに突っついたボールを回り込んでフォアハンドドライブするも、大きく空いたフォア側へのバックハンドに追いつけず失点する形が目立ち、第1ゲームを先取された。
厳しい立ち上がりとなった大島は、この状況を打開したいところだが、堅実でミスの少ないウォーカーを崩すことができず。第2ゲームも6-11で落とした。
追い込まれた大島は第3ゲーム、バック対バックの展開から得点する場面が増える。ウォーカーにもミスが出始めるなどこのゲームを我慢強く戦って11-8で取り返した。
大島は第4ゲームも8-5とリード。徐々にフットワークを使った攻撃で得点する場面も見られたが、最後は戦術を徹底し、空いたフォア側を厳しく突くウォーカーの的確な攻撃に対応できず9-11で敗れた。
4番は水谷対ピッチフォードのエース対決。水谷は第1ゲーム、ピッチフォードの思い切りの良い強打や自身のミスが重なり、まさかの7連続失点。0-7から巻き返しを図った水谷はサービスからの展開や打ち合いで得点するも8-11で第1ゲームを奪われた。
第2ゲームは両サイドを突いた攻撃で打ち破ろうとするが、手足の長いピッチフォードにとって打ちやすいコースにボールが集まってしまい、強打を打ち込まれる。水谷も大きなラリーから相手のミスを誘う場面もあったが、攻めの姿勢を貫くピッチフォードに第2ゲームも奪われた。
後がなくなった水谷。第3ゲームも豪快にドライブを打つピッチフォードに苦しめられたが、リードして迎えた終盤にサービスで2連続得点を挙げるなど、相手のレシーブを崩して1ゲームを奪取した。
第4ゲーム、水谷はフォア前へのストップを多用したが、長さをコントロールできず、台から出たボールををピッチフォードにフリックされる。反対にストップの展開から仕掛けたいところだが、水谷の台上プレーにミスが目立って6-10と絶体絶命の危機に立たされた。それでも6-10からピッチフォードのミスやラリーの中で相手のミスを誘うなどして10-10とばん回すると5連続ポイントで逆にマッチポイントを奪う。11-10のラリーではピッチフォードがラリーで水谷を追い込んだが、水谷は必死にしのぎ続ける。ピッチフォードが強打を打ち込むごとに大歓声が上がる中、ことごとくピッチフォードの強打を返してスマッシュミスを誘い、12-10で水谷がゲームを奪う。
最大のピンチを乗り切った水谷は最終ゲーム、中盤まで競り合いが続いた接戦の中で、ストップの応酬からピッチフォードのミスを誘う。ここまで思い切り良く返球してきたピッチフォードだが、この場面ではストップをネットにかけるミスが続いた。その後も、厳しいストップからの展開で得点を挙げた水谷。最後はサービスからの3球目強打を決めて11-6で勝利。死闘という言葉だけでは言い表せないほど熱く、激しい試合を制した水谷が日本を決勝と導いた。
日本男子は1977年バーミンガム大会以来の決勝進出。39年間重く閉ざされた「決勝」の扉をこじ開けた。決勝で待ち構えるは王者・中国だが、苦しい試合の連続を切り抜いた日本選手たちが最終関門である中国を突破することに期待したい。
■倉嶋監督のコメント
オーダーは昨日のイングランド対フランス戦後に伝えました。また、メンバーには昨日の夜に、油断して足をすくわれることもあるからもう一度気を引き締めようと伝えました。
今日は全体的に選手に固さがありました。(世界ランキングでも勝っていますし)さすがに負けないだろうという部分が心の中にあって弱気になったり、不運が重なったりということが得てしてあります。サービスミスを取られたり、本当に苦しくて簡単には(決勝の舞台は)つかめないんだなと思いました。
吉村もすごく苦しい試合でした。イングランドは僕らを相手に思い切ってやってくるだけで、ピッチフォードも思い切りのいいプレーをしてきました。2ゲーム目は10-5でリードしていて、相手がロングサービスを出してきたのをいい加減に打ってミスをして、普通だったらここでタイムアウトを取るのですが、タイムアウトをとるか迷ってしまってそこから流れが変わりました。10-7でタイムアウトを取りましたが、自分でも1本遅いなと思いながらタイムアウトを取りました。それでもまだ大丈夫かなと思っていたのですが、逆転されてしまいました。吉村は最後は思い切って振れる選手です。それが入って今回も苦しい試合を乗り越えてきていると思います。この世界選手権のキーマンになっていますね。
大島は負けないだろうとみんなが思っていましたが、あれが世界選手権という舞台なんだなと思います。試合に入っていく時点で緊張していて氷で固まっているような状態でした。3ゲーム目からちょっとずつ緊張がとけ始めて、4ゲーム目に持ち込めばいけるかなと思いましたが、慌てていろいろなことを考えられないような状況になったのだと思います。
(4番の)水谷は信じられないようなプレーを見せてくれましたね。第4ゲームの6-10になるまで凡ミスをしていたので気持ち的に落ちているかなと思っていましたが、タイムアウトを取ったときに目は死んでいなかったので、そこにかけました。タイムアウト時にはシンプルに、「あまり速くいくと速く返ってくるから、ゆっくりのペースで自分からかけていく」という指示を出しました。
明日は最終関門の中国戦になります。全力を出さなければ勝てる相手ではないですし、競り合うこともできない相手なので、どの選手も緊張している状態ではなく、思い切って世界選手権の決勝の舞台に臨んでほしいです。
■吉村選手コメント
自分たちがやらないといけない1つの目標でしたし、それが達成できたことに非常に満足感というかとりあえずほっとしています。
自分は準決勝という舞台が初めてだったので緊張していました。試合中はやることをやって、どうやって勝つか、どうやって1点をとるかを考えるだけで精一杯なので、39年ぶりの決勝進出は頭にありませんでしたが、試合が終わったときにやっと決勝にいけるんだなと感じました。
2ゲーム目を落としてしまったのが一番痛くて、あそこをとれていれば3対1だったり3対0で勝てたですが、少し気の緩みが出てしまってそこからは五分五分の戦いになりました。最後のゲームも4-8とリードされていました。その場面でタオルを取ったときに自分で気持ちを落ち着かせて、「自分のやるべきことをやって戦おう」ということをもう一度自分で口に出して戦うことによって気持ちをリセットできたかなと思います。
世界ランキングは僕の方が高いですが、2年前に負けていたので、2年前から自分がどう成長しているかが今回の試合で証明されると思っていました。苦しい試合になりましたが、ああいう試合をものにできたのは2年間で成長があったのかなと思います。
世界選手権独特の雰囲気があって、自分がすごいプレーをしたら拍手してくれているし、競った場面での応援が自分のボルテージを上げてくれるというか、やってやるしかないという気持ちになって、楽しかったです。お互いに良いプレーをして、試合を行えたことは観客も楽しかっただろうし、自分も楽しかったですし、本当にいい試合だったと思います。
(決勝は)誰と当たるかわかりませんが、誰にせよ中国は大きな壁なので、チャレンジャー精神で戦うことは間違いないです。大きな舞台でどれだけ自分の力を発揮できるか、中国に対してどれだけ迫ることができるかがポイントになると思います。厳しい戦いになると思いますが、絶対に勝つという気持ちだけは折れずに勝つために準備していきたいです。
■大島選手のコメント
今日、準決勝の舞台に初めて立たせていただきましたが、本当に緊張しましたし、自分のプレーができなかったことは悔いが残っています。しかし。チームが勝ってくれたので僕はそれで良かったかなと思います。
2対0で回ってきたので自分が決めてやろうという気持ちはありました。(4番で勝利した水谷選手は)ああいった局面で最後は日本に勝ちを持ってきてくれると感じました。僕にはその力はまだまだないですし、粘って勝つことがこれからもっともっと大事になると思います。あの舞台で自分のプレーができずに負けてしまう自分の弱さも感じたので、今日ここで経験させてもらったことを次につなげていけるようにしたいです。
明日は出場するかわかりませんが負けたことを生かして、明日は全力でぶつかって中国から1点とれるように頑張りたいと思います。
■水谷選手のコメント
まだ実感がないです。あの極限の状態の中で試合が終わって勝つことができて、自分の勝利でチームが決勝にいけたので非常にうれしいです。
(4番の第4ゲームの)6-10の場面はまだまだやれると思っていました。ここで終わらせる訳にはいかないという思いがすごくありました。1、2ゲームは様子をみながらの展開でゲームを落としてもそこまで動揺はありませんでした。香港戦同様、序盤で相手のことをしっかりと研究できました。4ゲーム目は5-2とリードしていたのですが、そこで少し気が緩み、5ゲーム目のことを考えだした瞬間に流れが変わって6-10になってしまいました。しかし、そこでまた気持ちをひき締めることができたので良かったです。(台上のボールに対するミスが続いていますが)今大会を通じてボールがよく止まり、同じミスを続けてしまいました。4ゲーム目からは打たないでダブルストップにしてからこちらのペースになりました。
(39年ぶりの決勝進出については)長い間低迷していたので僕たちが変えたいという気持ちが強かったです。歴史を変えることができたましたが、これからは若い選手のために築いていかないといけないと思うので、まだまだここで終わる訳にはいかないです。明日は今大会初めて格上の選手と戦います。今までの試合は全体的に消極的なプレーが多かったので、明日は積極的に攻めていくしかないと思っています。リスクを冒してどんどん攻めていこうと思います。
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今大会の模様は卓球レポート4月号(3月20日発売)に掲載
公益財団法人日本卓球協会:http://www.jtta.or.jp
世界卓球2016クアラルンプール/公式サイト(英語):http://www.perfectwttc2016.com.my/
国際卓球連盟(ITTF)世界卓球2016クアラルンプール(英語):
http://www.ittf.com/competitions/competitions2.asp?Competition_ID=2587&category=WTTC