元全日本王者の梅村礼が見た世界卓球ハルムスタッド2018。日本男子のこれまでの戦いと、決勝トーナメントで勝ち抜く鍵を中心に話を聞いた。
張本が思い切ってプレーできるかどうかが日本の鍵だ
張本がのびのびプレーできるかどうかが鍵
男子のグループリーグの戦いぶりは全体的にプレーに固さが感じられました。水谷が故障で万全でなく、丹羽のプレーの調子も上がっていないため、そのしわ寄せが張本にかかり,知らず知らずのうちにポイントゲッターである彼(張本)が受け身になってしまっているのがそう感じた理由だと思います。
全日本チャンピオンとはいえ、張本はまだ14歳です。加えて、昨シーズン今シーズンと目覚ましい活躍をしていてみんなが張本に注目しています。そのことも無意識にプレッシャーになり、受け身としてプレーに表れているのではないでしょうか。本来ならばカウンターできるボールを、ブロックして相手に打ち抜かれるシーンが目立ちました。私が見るところ、これまでの張本は本来の力の6割から7割といったところでしょうか。
ただし、今日のシンガポールのガオニン戦のように、相手が強いと分かっていれば思い切って素晴らしいプレーをします。日本が決勝トーナメントを勝ち抜いて行くためには張本が鍵になるので、彼がのびのびプレーできるように周りがサポートしてほしいですね。
水谷はシンプルで大きなラリーに
水谷はギアが入ったときはさすがですが、けがの影響からか少し彼らしくないイージーミスが多いことが気にかかります。今の男子は、チキータでどう仕掛けるか、チキータされたときにどう返すかが勝敗の大きな分岐点ですが、グループリーグでの水谷はチキータがらみの展開でうまく合っていないボールに対して、こだわってミスするシーンが目立ちました。ストップなどのシンプルな入りからもっと大きなラリーにしていく方が彼には合っていると思います。
いいサービスを出しているのに点にあまりつながらず、レシーブでも崩されている場面が多いのが気になりますが、経験豊富な水谷ですから、そのあたりは調整してくれると思います。
挑戦者としてアグレッシブに向かってほしい
イングランド戦では、オーダーが直前に変更になったことが話題になりましたが、世界選手権大会方式では誰と当たるのかオーダーが出るまで分かりません。その意味では、どこで誰と当たってもいいように選手たちには気持ちの準備をしてほしいと思います。
今回出場しているメンバーは、全員が相当の力を持っています。それゆえに、「誰かが負けてもまあ大丈夫だ」という隙が無意識にあるように見受けられます。グループリーグと違い、これからは負けたら即終了の決勝トーナメントです。調子が出なくて負けましたというのは理由になりません。前回大会2位というプレッシャーもあると思いますが、挑戦者としてアグレッシブに向かっていってほしいと思います。各々が与えられた場所でしっかり自分の仕事し、自分が勝って次に回すという波をつくってほしいですね。
中国が盤石の強さ。スウェーデン、ブラジルが台風の目に
日本以外の国に目を向けると、やはり中国が盤石です。今日の北朝鮮戦では経験を積ませるために林高遠や王楚欽を起用してもよさそうでしたが、馬龍、樊振東、許昕のベストメンバーを組んできました。恐らく、行われた1コートが準決勝、決勝を行うコートなので、その下見の意図があったのだと思います。こうした抜かりない準備を目にすると、中国は盤石だと言わざるを得ません。
中国以外の国では、地元の声援をバックにスウェーデンが頑張っていますね。日本としてはアウェーになるので、できれば当たりたくない相手です。今大会台風の目になっているのがグループリーグでポルトガルをストレートで下し、2位通過してきたブラジルです。カルデラーノはもちろんですが、3番手のヨウチが伸びているのが大きいと思います。
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(写真=佐藤孝弘 文=猪瀬健治)