元全日本王者の梅村礼が見た世界卓球ハルムスタッド2018。日本女子の決勝トーナメント準決勝、コリア戦の戦いぶりと、決勝の展望を聞いた。
動揺を見せずに自分たちのプレーを貫いた日本女子、決勝へ
くみしやすかったコリアのオーダー。石川の頑張りが大きかった
相手のオーダーで、3番に梁夏銀を持ってきたのはビックリしました。梁夏銀は日本選手に対して勝率がよくないので、日本側は北朝鮮の選手が出てくるだろうということで対策を立てていたということです。同程度の実力であればやり慣れていない方が、何が起こるかわかりません。ですから、3番梁夏銀というオーダーは日本にとってはやりやすいオーダーということになったと思います。これは推測ですが、昨日の日本対ウクライナで、日本がカットに対してかなり強いということを意識したコリア側が、カットの徐孝元をあえて入れずに、その代わりに梁夏銀を入れてきたということなのかもしれません。
でも、なんといっても今回3対0で勝てた理由は石川の頑張りですね。終盤であれだけネット、エッジが続いても集中力が切れずに、逆によい方に吹っ切れたのだと思います。「どれだけアンラッキーでも絶対に負けない」という気迫が伝わってきました。
「速さ」で田志希のパワーや戦術を上回った伊藤
1番の伊藤対田志希は、伊藤のフォア前から崩そうという相手の戦術だったと思いますが、逆にチキータで振り回したり、テンポの速さでパワーのある相手にも打ち負けないというアドバンテージがありました。伊藤だけでなく、石川、平野も対攻撃型選手に対しては非常に安定しています。このカードはワールドツアーをみているともっと競るかと思いましたが、今日は本当に完勝に近い形でした。
石川は質の高いカットと攻撃に苦戦するも、最後は強いメンタルを見せた
2番の石川対キム・ソンイは、石川が第1ゲームを取りましたが、こちらがゲームを取ると相手が戦術を変えてきて取り返し、ということが続きました。あとは、キム・ソンイのカットが試合が進につれて深く入るようになってきていました。それに対して、石川が踏み込んだあと戻り切れてない場面がありました。体が前に突っ込んだまま戻り切れていないので、キム・ソンイの攻撃に対してブロックミスが出てしまったのだと思います。本来であれば、あのくらいの攻撃は止められるはずなので、その前のカットの質の高さに少し押し込まれていたということになります。
石川のカット打ちは基本的には安定していましたが、昨日までの相手なら決まっているボールも返ってきていたので、そういうボールに対する準備が少し遅れてミスにつながっていたという印象を受けました。しかし、最後はよく踏ん張ったなという一言に尽きます。技術ではなくメンタルですね。チームとしても2対0と1対1では、3番の平野のプレッシャーもまったく違ってくるので、とても大きな一勝になったと思います。
平野の攻撃的な面がよく出た梁夏銀戦
3番の平野は、比較的プレッシャーなくできたと思います。両ハンドもよく振れていましたし、平野の攻撃的な面がよく出た試合でした。ただ、2対0から勝ちを意識したのか、足が止まりがちになり攻め急ぐ場面がありました。平野は相手の速いボールに対してはよく対応できますが、遅いボール、相手が繋いだボールに対して、早く点が取りたいと思うあまり、1ゲームを落としてしまいました。落ち着いて攻めればまったく問題ないと思うので、勝ちを意識してしまったときにはそこを注意してほしいですね。
ギアを上げてきた中国に対しても積極的にプレーしてほしい
日本の選手は、統一コリアという「ハプニング」に対して動揺はあったと思いますが、プレーへの影響はまったく見られませんでした。影響を受けずに自分たちのプレーを貫いたというところはよかったですね。
決勝で対戦する中国ですが、準決勝の香港戦では少し様子がおかしかったですね。敗れた丁寧だけでなく、朱雨玲も劉詩雯も競りあいになっていました。相手の弱点を見つけるまでに少し時間がかかっているという印象を受けました。ただその弱点を見つけてからは相手をたたきのめすような典型的な中国選手の戦い方を見せました。それでも、1本のイージーミスから連続失点をする場面もあり、今回の中国は今までよりもつけいる隙は大きいと感じます。
ただ、決勝では、日本に対しては今日までのような戦い方はしてこないと思います。ギアを上げてくると思うので、それに対して受けに回らずに挑戦者のマインドで積極的にプレーしてほしいですね。
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(写真=佐藤孝弘 文=猪瀬健治)