元全日本王者の梅村礼が見た世界卓球ハルムスタッド2018。男子準決勝、中国対スウェーデン、ドイツ対韓国の戦いぶりを聞いた。
韓国戦のラストで金星を挙げたフランチスカ。ドイツ次代のエース候補だ
前陣でプレーしたボルとチャンスをつかんだフランチスカ
準々決勝のブラジル戦では出場しませんでしたが、今のドイツのメンバーだと、実力的にはフランチスカが3番手ですね。やはり、パワーのある韓国選手にカット主戦型のフィルスを使うのは怖いですね。今日はフランチスカを2点使いにして、不調のオフチャロフをまた3番に置いて、昨日は休ませた腰の調子がよくないというボルをエースとしてオーダーを組みました。韓国は今大会の準々決勝と同じ鄭栄植、李尚洙、張禹珍というベストオーダーですね。オフチャロフを2点使いできない、3番でしか使えないという点で、やや韓国が有利かなと思いました。
ボルが4番の李尚洙戦でほぼ負け試合でしたが、それを取ったのがこういう結果につながったのだと思います。腰の調子がイマイチなのか、いつものボルよりも少し台に近いところでプレーしていました。2番の鄭栄植と対戦したときも、いつもより前陣でプレーしていました。たぶん、前陣で速いプレーをする韓国選手に振り回されたくないからだと思いますが、そこでブロックもカウンターもよく入っていたので、そこが韓国から2点取りできた一番大きな要因ですね。
5番のフランチスカは鄭栄植から金星を挙げました。私も驚きました。鄭栄植に対しては、動きも悪くなかったし速さにもついていってました。逆に、鄭栄植はかたくなっていてイージーミスが多かったですね。フランチスカは立ち上がりから2ゲーム連取して、3ゲーム目を落としましたが、このゲームはサービスやレシーブが台から出ていて、ゲームを取られましたが、第4ゲームはしっかりと修正してきました。また、体格がよく手足が長いのでフォアに振り回されてもよく止まっていたし、盛り返すこともできました。世界ランキングから見ればドイツ不利だったと思いますが、フランチスカがこんなにいい試合をしたのを久しぶりに見ました。これまでも期待の若手でしたが、メンタルに少し弱さがあってなかなか出てこられないというところがありましたが、この試合ではチャンスをしっかりつかみ取りましたね。今後のドイツにとってもいいニュースになったと思います。
試合内容はよくても勝てない。それが中国の怖さ
スウェーデンは中国選手を相手に競った場面もありましたが、やはり、技術、経験、これだけアウェーの状態でも中国がストレートで勝つというのは、実力の大きな差があるということですね。あれだけ勢いのあるスウェーデンを結構簡単に止めてしまいました。
スウェーデンは2000年の大阪大会以来18年ぶりのメダル獲得となりました。このメンバーでよくここまできたというのが正直なところです。準決勝の相手が韓国かドイツだったら、結果は変わっていたかもしれません。
大会を通して、M.カールソンはしっかり前半でポイントを取って、かなり自信がついたと思いますし、Jon.パーソンも当初は5番手くらいのイメージでしたが、一番活躍した選手といってもいいほどでした。みんな若くはないですが、ヨーロッパではドイツに次いで警戒すべきチームになったと思います。
中国は、日に日に隙がなくなってきていますね。M.カールソンと馬龍の試合が典型ですが、カールソンがいい形で攻めていても点数にならない。内容は悪くないけど、点が取れない、ゲームが取れないというパターンですね。言い換えれば、相手のいいところを出させてもそれを上回るだけの実力があるということでしょう。ドイツには思い切って挑戦してもらいたいと思います。
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(写真=佐藤孝弘 文=猪瀬健治)