【男子シングルス決勝】
張本が張継科とのゲームオールジュースの死闘を制し、頂点に!
張本は激闘を制し、床に倒れ込む
ワールドツアー通算2勝目の張本
バックハンドが大きな武器になった
必死に迫った張継科。敗れはしたが、全盛の力に近づきつつある
【スコア】
張本智和(日本) -9, -8, 9, 4, -10, 7, 11 張継科(中国)
先に行われた中国オープンでは張本智和が張継科(中国)をストレートで下しているため、戦前は張本の勝ちは固いと見ていたが、そのつたない予想はいい意味で裏切られ、すさまじい試合になった。東京オリンピックを目標に復帰を決めたビッグタイトルコレクターは、中国オープンで完敗を喫した若手に鉄槌を与えるべく、猛然と襲いかかってきた。
張継科は出足からチキータからのパンチが利いたバックハンドで主導権を握る。スピードチキータに加え、時折横回転が強いチキータを混ぜて張本のミスを誘うなど、「さすがチキータの有効性を世に知らしめた元祖」ともいえるチキータ活用のバリエーションの豊富さで、張継科が2ゲームを連取。中国オープンのときと明らかに仕上がりが違う張継科のプレーに戸惑い気味の張本だったが、「簡単なミスをできるだけなくし、チキータ以外のレシーブを多用した」と本人が語る戦術転換で2ゲームを奪い返し、試合を振り出しに戻す。
第5ゲームは、張本が得意のフラット気味のフォアハンドブロック、通称「ハリパンチ」を終盤立て続けに決めるが、動きがいい張継科が奪い、第6ゲームは張本が奪い返して勝負は最終ゲームにもつれ込む。
最終ゲームは張本が、チキータを待っている張継科の裏をかいてストップを多用するレシーブの組み立てが功を奏し、6-2とリードを奪う。しかし、勝ちを意識したのかプレーがややおとなしくなって6-7と張継科にリードを奪われてしまう。ここでとっておいたチキータで張継科に離されずにしがみつき、シーソーゲームの末、カウントは11-11に。この場面でレシーバーだった張本は「そろそろ長いサービスが来るだろうと思っていてフォームが少し違ったので分かった」と恐るべき読みと観察力を発揮し、張継科のロングサービスをフォアハンドで狙い打ってマッチポイント。続くサービスは、ロングサービスを狙い打たれた張継科の動揺を見透かした上でのロングサービスで空振りを誘い、壮絶な死闘にピリオドを打った。
この大会で張本は、周雨、馬龍、張継科の中国選手3人に加え、日本人キラーの張禹珍と世界3位の李尚洙を破ったが、一大会でこの5人に立て続けに勝てる選手は世界を見渡してもそうはいない。今回のジャパンオープンは、張本が間違いなく世界のトップ、それも限りなく頂点に近い位置にいることを世界中が認知した大会になったといえるだろう。
■張本智和の優勝コメント
「今までたくさんワールドツアーを出てきた中で、今回ドローを見たときに馬龍選手と準々決勝で当たるということが分かり、そこまでいくのも難しいのに優勝なんて1回も考えていなくて、その大会で優勝することができてびっくりしています。そして嬉しいです。
今回のジャパンオープンは世界選手権のリベンジという位置づけで臨みましたが、その結果が優勝で本当に嬉しいんですけど、これから何試合もワールドツアーありますし、世界選手権や全日本もあるのでこの1回の優勝で満足せずにもっともっと優勝できるようにがんばりたいです。
決勝は1、2ゲーム目ミスが多くて、レシーブはチキータだけだったので、ミスしないようにすることと、ストップとかチキータ以外のレシーブを混ぜて2対2に追いついたのが大きかったです。最終ゲームは6-2でリードしてから勝ちを意識してバックハンドのミスが多くなってしまい6-7と逆転されました。その場面では落ち着いてチキータをしっかり入れることから始めてもう1回追いつこうと考えました。最終ゲームはチキータで全部レシーブしたかったのですが、そこは抑えてストップを多く使っていました。ストップは相手も意識していなかったと思うので、あえてチキータせずにストップから入ったことで、大事なところでチキータが効ききました。その点は、我慢できてよかったと思います。
最後(勝った瞬間は)は本当に疲れていたので、おつかれさまという意味で床に倒れ込みました。それと、今日はずっとリードされていて厳しい展開だったので本当に優勝したんだなと。実感がなかったのでびっくりして倒れ込みました。(今日着用していた)黄色いウエアは嫌いな色なんですけど、昨日馬龍選手に勝ったので、これ以上いい色はないと思って着ました(笑)。
張継科選手は復帰したばかりですが、オリンピックチャンピオンに2回連続で勝ったということは自信になります。ワールドツアー優勝はチェコオープンに続いて2回目です。全日本終わってからタイトルがなかったので中国オープンかジャパンオープンのどちらかで優勝したかった。これからも、もっともっと努力を怠らずに頑張っていきたいです」
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(写真=佐藤孝弘 文=猪瀬健治)