■男子学校対抗決勝
愛工大名電 3-0 鶴岡東
◯曽根 -12,-11,2,4,6 中橋
◯田中 5,8,5 小松
◯田中/加山 6,8,8 中橋/星
オーダーを見て、鶴岡東が愛工大名電の2番の田中から1点取ることは難しいので、トップでエースの中橋が曽根に勝てば面白くなると思って見ていました。中橋が2対0でリードしたまではよかったのですが、そこから曽根がサービスのコースや長短を変えてきて、それに対して中橋の歯車が狂い始め、緻密さがなくなってきました。中橋にしてみれば「何か違うな」という感じで、あれよあれよという間にすんなりと3ゲーム取られて逆転されてしまったという感じだと思います。それくらい大胆な戦術転換でした。曽根は強烈なバックハンドもありましたし、1年生ながら見事な試合運びで本当に強かったなと感じました。
この1番を落として、鶴岡東にはかなり悲観的なムードが漂ったと思います。向かっていく気持ちを持ってはいても相手は百戦錬磨の王者ですから「やっぱりだめか」という雰囲気はどうしても出てきてしまうでしょう。とはいえ、2番の小松も準決勝の遊学館戦でエースの川村に勝って決勝に来ています。ひょっとしたらという思いもあったかもしれませんが、やはり田中のプレーは安定感がありましたね。私が見ていてもさすがだなというコースの突き方やタイミングの変え方があるんです。この場面でフォアストレートに行くか、とかそういう意外性のあるボールに相手はついて行けていなかったですね。レベルの高い技術と安定性だけでなく、そうした意外性もあるとなると、ちょっとやそっとでは崩せないなとは思いました。田中はどんなタイプの選手と対戦しても負けにくい選手なので、団体戦では頼りになる選手だと思います。
ダブルスになると加山が光りますね。コースワーク、特に相手のフォアサイドに流すドライブや、打球タイミングを変えて打つフォアハンドドライブなどが目立っていました。田中との連係も非常にかみ合っていました。2番、3番は名電側が力が上でしたね。
鶴岡東はフィジカルの強さを生かしたプレーで調子を上げていくのが特徴と準決勝の戦評で述べましたが、今日はその良さがあまり出ませんでした。初めての決勝という緊張感はそれほどなかったと思いますが、王者の前で少し萎縮したという印象は受けました。それくらい、名電の選手にはオーラがありましたね。
ただ、内容的には1球1球のラリーはどちらも必死でしたから、結果的には3対0ですが、少しのずれでももっともつれたと思いますし、鶴岡東にも名電を崩すチャンスがなかったわけではないと思います。しかし、今回はそれを王者の卓球で封じた名電の完勝ですね。
■女子学校対抗決勝
四天王寺 3-0 遊学館
◯宮﨑 11,10,9 津隈
◯塩見 -5,8,-11,8,10 出雲
◯宮﨑/?橋 6,4,-6,-6,3 出雲/相馬
津隈の上からたたみかけるような前陣での攻撃に対して、宮﨑は押されているように見えて、冷静に前陣で相手のボールに合わせて、うまく要所でミドルを突いたり、チャンスボールは必ず得点に結びつけるという試合展開でした。
2番はエース対決でしたが、試合内容は出雲がやや上回っていたという気がします。基本的なラリーは、出雲が塩見のバック側を狙って、回転の変化のないボールに対して出雲が逆に回転の変化をつけて返したり、打球スピードに変化を付けて攻撃するという展開でした。試合結果は、それに耐えて耐えて耐え抜いた塩見が、意地と自信でがんばり抜きました。
ダブルスは四天王寺ペアが、異質とカットの遊学館ペアに対策を十分に立てているという印象を受けました。四天王寺側からしてみれば、遊学館ペアは対策を立てやすい、特徴のあるペアです。基本的には相馬のカットをできるだけ直線的なボールで繋ぐ、そして、出雲の攻撃を確実にブロックする、その2本立てだと思います。遊学館ペアもインターハイチャンピオンですから、意地を見せてラリーで2ゲーム返しましたが、歯車が合わないと連続失点してしまうという怖さがありますね。最終ゲームがまさにそうでした。
四天王寺の6連覇はすごいですね。選手は替わってもまだ優勝戦線にはしばらく居続けるのではないでしょうか。遊学館も去年よりはチャンスがあったと思いますが、四天王寺の選手には「勝たなければいけない」「結果を出さなければいけない」という強い意識を全員が持っていて、かつ、選手に余計なプレッシャーを与えずに試合で実力を発揮させるというマネジメントが徹底しているという印象を受けました。
渋谷浩
平成11年度全日本チャンピオン
第52回インターハイ名古屋大会(1983年)
学校対抗優勝(熊谷商業)、男子シングルス2位、男子ダブルス優勝
第53回インターハイ横手大会(1984年)
学校対抗優勝(熊谷商業)、男子シングルス優勝、男子ダブルス優勝
第54回インターハイ鶴来・野々市大会(1985年)
学校対抗優勝(熊谷商業)、男子シングルス優勝、男子ダブルス優勝
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(写真/文=佐藤孝弘)