男子シングルスでは、宇田が団体戦での敗戦から成長を感じさせる戦いぶりで中国選手2人を破り、決勝に勝ち進んだ。戸上はリベンジを期して挑んだ向鵬に再び敗れたものの、内容は互角といっても差し支えのないものだった。田中は優勝した徐海東にリードしながらも惜敗。団体戦の敗戦が選手たちの何を変えたのか。田㔟監督に個人戦での選手の戦いを振り返ってもらった。
勝ちたいという選手自身の強い気持ちがコートにもあらわれると田㔟監督
宇田と徐海東のシングルス決勝はチャンスがありました。1ゲーム目で10-8、4ゲーム目で9-7でリードしていたので、2対2もしくは3対1でリードしていてもおかしくない内容でした。チャンスがあっただけにもったいなかったなと思います。ロングサービスも効いていましたし、最初チキータされるのを嫌がっていましたが、チキータ処理ができたら長いサービスがより効いてくるので、チキータをさせるくらいのつもりでチキータを狙っていくように指示しました。それはうまくいきましたが、レシーブがうまくいきませんでした。1本下回転の切れたサービスを出されて、とんでもない落とし方をしていたので、それで感覚がなくなって、長く返すこともできなくなって入れにいっていました。1本そういうミスをしてしまうと、選手は脳裏に残ってしまうので、ラケットの角度が狂ったり、ミスするのが怖くなって入れにいくようになってしまいます。それで、チキータの選択しかなくなってしまいました。終盤、相手がサービスを持ったときに、こちらのレシーブの種類が少なくなってしまって、自信を持たれてしまったと思います。
ラリーについては、サービス・レシーブがあってのラリーなので、レシーブがうまくいっていたら展開は変わっていたとおもいます。それでもあそこまでやれたというのは悪い戦い方ではなかったんじゃないかと思います。
宇田が準々決勝、準決勝で中国選手2人を破ったことは高く評価できると思いますが、3人はやはりきついですね。あとはプレテアが1人于何一を倒してくれましたが、宇田が2人を倒して決勝まで行ったことは自信にしていいと思いますし、これからもっとシニアでも勝ってほしいと思います。個人戦に入ってからは「団体戦とまったく違う戦い方をしなさい」と宇田には指示して、具体的には、今まで8対2位の割合でチキータ対ストップだったのを、3対7くらいの割合でストップを多く使うように指示しました。もしかしたらそれは宇田自身の卓球ではなかったかもしれませんが、宇田がよく我慢して頑張ってくれたと思います。ただ、こうして結果がついてきたので、本人もストップも、フォアハンドでのレシーブも自分はできるんだと自信を持ってやってくれたらいいと思います。
田中も徐海東にチャンスがありました。2対1で4ゲーム目もリードしていて、惜しかったと思います。団体が終わって個人戦に入ってから、調子が良さそうに見えましたし、本人も「台上がよくなってきました」などと言っていたので、非常に期待していました。今回が最後の世界ジュニアですが、ここは通過点で大事なのはこれからなので、この経験をステップにしてシニアで勝ってほしい、活躍してほしいというのが自分の願いです。今回、よかった部分も悪かった部分もあるので、それを練習で克服していってほしいと思います。
徐海東には田中と宇田の2人がやられましたが、こちらがいろいろなことを考えすぎてしまったのではないかと思います。中国選手に勝った経験があれば、冷静に判断できたと思いますが、まだ勝ったことがないけど勝つチャンスがあるというときに、ナーバスになったり、無用なリスクを冒してミスしてしまうというところがあったと思います。徐海東には特別なことをされていたわけではありません。こちらの気持ちの持ち方、考え方、戦い方ひとつでいつも入ってるボールをミスしてしまうというところだったのではないかと思います。
戸上は団体で10-12、9-11、9-11で0対3で負けていた向鵬に個人戦では2対4で負けましたが、内容的には明らかに団体戦のときよりもよかったと思います。戸上は団体戦の1試合目、2試合目で自分の戦い方をしていなくて、アドバイスをして、自分の戦い方に戻って、自分の卓球を見つけることができたんじゃないかと思います。今回、最後負けましたが、ああいういい内容の試合ができるということは、戸上も成長できたんじゃないでしょうか。来年もまたチャンスがありますし、この前のベラルーシオープンでも決勝までいっていますし、シニアでも頑張ってほしいです。まだ、国際大会での経験が少ないのでこの経験を今後に生かしてほしいなと思います。少しずつよくなっているのは間違いないですね。
曽根については高校1年生で初めての世界ジュニアで、緊張したというのは本人も言っていましたし、負けたくない、負けたらどうしようという思いで試合をしていたようなので、少し考えすぎたのではないかと思います。非常にいい経験はできたし、明らかな課題も見つかりました。合宿からずっと継続して下半身の強化を課題にこちらにきてからもトレーニングしてきました。彼は下半身を鍛えて動けるようになれば、もっともっといい選手になると思っています。いい身体を持っていますし、いいバックハンドも持っています。この経験を生かして、来年以降に期待していいと思います。強くなったときには、今回の世界ジュニアで悔しい思いをしたので、あの大会がターニングポイントでしたと言えるようになってほしいということは本人にも伝えました。
団体戦のときには得点術がチキータ1つしかありませんでしたが、個人戦ではその反省を生かして、団体戦で負けた翌日、4時間くらい、予選がなかった曽根以外の3人は、ずっと台上の練習をしました。それが個人戦に生きてきたんじゃないかと思います。チキータだけではなく、フォアハンドでレシーブする、ストップする、フリックするということで得点の幅が団体戦のときよりも増えたことが、宇田も戸上もいい方向にいけたんじゃないかと思っています。点数の取り方は1つではないので、引き出しを増やさなくてはならないし、幅を持たなければいけません。その点、団体戦の反省が個人戦で生きてくれたと思います。
宇田にはレシーブの待ち方から変えるように伝えました。最初はフォアでレシーブ、ストップからの待ち方ですね。決勝でも宇田はラブオールからロングサービスを2本も出される。必ずああいう戦い方をしてくるので、フォアハンドで長いサービスにも対処できるような待ち方をする。昨日の徐瑛彬戦でもそうですが、最後の最後にロングサービスを狙い打っていく、それが試合の作り方なのではないかと思います。あの場面で頑張ってチキータ一辺倒でいっていたら、最後だけフォアでレシーブしようとしてもできない。逆に、最後に自分の得意なチキータで勝負するために、封印してストップで勝負していく。そういう戦い方ができたことは自信にしていいと思いますし、ああいう戦い方ができるということを頭に入れて、今後につなげていってほしいと思います。
今大会は4人とも非常に成長できたんじゃないかと思います。あとは、国際大会で勝ちたい、世界選手権やオリンピックでメダルを獲りたいと本人がどこまで強く本気で思えるかということで、私たちは多少は誘導することはできるかもしれませんが、やはり最後は本人の気持ち次第です。コートに入って、どこにどうやって打つかを一瞬で判断するのは自分なので、そういう気持ちが強ければ強いほど、それがコートの中にあらわれてくると思います。そういう強い思いを持った若い選手がどんどん増えてきてほしいと思います。
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