昨年末に世界トップが一堂に会したワールドツアー・グランドファイナルを史上最年少で制し、今大会でもダントツの優勝候補だった張本智和(JOCエリートアカデミー)は、準決勝で大島(木下グループ)の豪打の前に沈んだ。あまりにも前例がないスピードで結果を出す張本を見るとき、どこか常人の努力では到達できないような特別なものを感じてしまうが、彼は決して降って湧いたように現れたわけではなく、ほかの選手と同じように日々懸命に強くなろうとしてきた15歳の少年だ。負けてむしろほっとしたような表情で敗戦を語る張本の素直な心情は、そのことを我々に気付かせてくれる。
●男子シングルス準決勝
張本智和(JOCエリートアカデミー)-8,-4,1,-8,8,4,-9 大島祐哉(木下グループ)
ー試合を終えて感想は?
1ゲーム目が先手を取れなくて落としてしまい勢いに乗せてしまいました。惜しかったのが、4ゲーム目で8-4から逆転負けしたことです。そこから何とか持ち直しましたが、7ゲーム目は気持ちと気持ちの戦いなので、ここまでは勝ってきましたけど毎回自分が勝つとは限らないので、しっかり4ゲーム目で2対2のタイに戻して、できるだけフルゲームにもつれないで勝てるようにしなければいけないと思いました。
(準々決勝の)吉村選手(名古屋ダイハツ)のときは、緒方選手(早稲田大)や田添健汰選手(木下グループ)のときよりも強気で攻めることが出来て、自分本来の卓球に戻りつつあったのですが、きょうはまた戻ってしまい、あと一回勝てば決勝ということで守りに入ってしまいました。逆に、相手はフォアで動き回って攻めてきたのでやられてしまいました。
ー今日の大きな敗因は?
サービスやレシーブも強気で攻められて、ラリーでも相手が有利で、こちらは強気に攻めることができませんでした。これまで優勝してきた大会は全部自分が向かっていくことができましたけど、今大会は試合しながら感じましたが、フォア前をストップしたり安全にいきすぎて相手にいいプレーをさせてしまいました。
ー大島選手のサービスはどうでしたか?
大島さんはYGサーブがうまいので対策はしてましたが、ゲームごとに横とYGを混ぜられて対応できませんでした。もう少し食らいつきたかった。それから、大島選手のフォアハンドは回り込みも飛びつきも同じ威力で来るので、自分にはプレッシャーでした。それに対してカウンターやブロックでのあと一球がつながりませんでした。
ー大島選手が張本選手のチキータを狙っているように見えましたが?
狙われているのは分かっていましたが、それに対して自分が対応できませんでした。勝つときは明確に何をするか見えているのですが、今日はそれがなかった。今回はプレーに迷いがありました。
ー準決勝が終わった瞬間はどうでしたか?
決勝でプレーしたかったですが、大島選手も水谷選手(木下グループ)と同じくらいやりにくくて、決勝まで行けずに終わるとは思っていなかったの悔しかったです。今大会は全力を出しきれないまま終わってしまって、他の大会ではこういう風にならないようしっかり準備していきたいです。
ー試合後、ベンチで座ったまま動けませんでしたが?
何も考えていなかったです。負けを受け入れても悔しいだけなので。体調は万全でした。ただ、明確な作戦がなく試合してしまったのが敗因です。相手が何をしてきても自分のプレーを貫けるようにしたいです。
ー今大会でのプレッシャーは?
初日の混合ダブルスから始まって、ずっと苦しい全日本でした。毎日相手は向かってきましたし、今日も(大島に)フォアハンドで今まで以上に強く攻めてこられたので、大事なところで点が取れませんでした。
今回は連覇の期待も自分でしていましたし、その分、プレッシャーもあって苦しい戦いになると思っていましたが、想像以上に苦しい全日本でした。去年と全く違う大会に感じて、全日本の怖さを感じました。去年優勝して、今年はみんな向かってくるのは想定していましたけど、想定外に相手のボールが何でも思い切り入ってくる感じでした。
ー去年と違う全日本というのはどのあたりで感じましたか?
ランク決定戦(男子シングルス5回戦)で緒方選手に今日と同じくらい追い込まれて、あのときから少しおかしい感じはありました。大会期間中に完璧に修正できなかったのが良くなかったと思います。
ーあらためて全日本はどんな大会ですか?
本当に苦しくて、怖い大会だなと思いました。
ー世界ランキング3位ということで今後も追われる立場は続きますが?
相手が格上でも格下でも守るときは守らないといけないんですけど、7~8割は攻めていかないと行けないと思いました。
ー今後の今年の目標は?
全日本で負けてしまったのは悔しい、本当に悔しいんですけど、今年全体で考えたら全日本は世界ランキングには関係ない大会なので、3月からのカタールオープンがあるので、それまで死ぬ気で練習したい。去年はダントツで優勝しましたけど、この一年間で相手も研究してきて差はほとんどないので、もっと強くなって一気に突き抜けていきたいです。
(まとめ=猪瀬健治、写真=佐藤孝弘)
詳しい試合の結果は大会公式サイトでご確認ください。
全日本卓球:http://www.japantabletennis.com/zennihon2019/