2回目は、男子シングルスのメダルをかけて戦ったファルク(スウェーデン)とゴズィーのヨーロッパ対決について、強豪ドイツチームの総監督であるR.プラオゼ氏に聞いた。
シンプルな戦術が奏功し
圧倒的な勝利を導いた
こんなに強いマティアスを見たのは初めてだ。
今回のゴズィーは許昕を倒して勢いがあったにもかかわらず、マティアスは調整がちゃんとできていて、まったく動じずにプレーしていた。
いつものマティアスはレシーブからチキータを使うが、今回の戦術で一番成功していたのは、「ゴズィーのフォア側の深くにツッツキを送ってドライブをかけさせて、それを上から叩きにいく」というものだ。この戦術がとても機能していた。
女子選手によくみられる戦い方で、相手に先にドライブを打たせるこの戦術は、パワーがある男子選手ではリスクがあるので、普段あまり使わないものだが、この試合では徹底していた。
逆に、ゴズィーはチキータやストップ、フリックなどさまざまなレシーブに対する準備をしていたところに、単調なツッツキレシーブしかこないことで、意表を突かれてしまい対応がうまくできなかった。
また、今日のマティアスは、フォアハンドの打球タイミングを意図的に変えていた。早い打球点で打ったり、遅い打球点で打ったりして、表ソフトラバーの変化に加えて、タイミングの変化もつけて、相手に的を絞らせない工夫をしていた。
ただでさえ表ソフトラバーのボールは変化が読みにくいのに、タイミングやボールのスピードも変えて、ゴズィーを翻弄した。
マティアスはもともとブロックが得意な選手だが、バックハンドのブロックは裏ソフトを使っているのでボールが伸びる、フォアハンドのブロックは表ソフトなのでナックル性になってボールが落ちる特徴がある。
今日のマティアスの戦術はバック側に来たボールにはとにかくミスをせずにつないで、フォアに来たボールは叩くというシンプルなものだったが、こんなに完璧に戦術がはまっていたことは見たことがない。
一方、ゴズィーが取った戦術としては、台から距離をとり、回転をかけて相手のタイミングを狂わせようとしていたはずだ。本来であればそこでボルや水谷隼、丹羽孝希のように回転の「量」に変化をつけることで相手のミスを誘ったり、チャンスをつくったりしなければ相手を崩せない。
だが、ゴズィーのボールは回転量が少なく中途半端だったためにそこをマティアスに狙われた。回転量が少ない中途半端なドライブは、ボールが相手コートで沈まずにバウンドが高くなってしまうので上から叩かれるのだ。ゴズィーはマティアスに深いツッツキを送られて、質が高いドライブを打てなかったのが敗因の一つだ。
私がアドバイスするとしたら、ドライブをあえて回転をかけずにフラット気味に打たせる、またはドライブに横回転を入れるなどをして、ラケット角度が重要な表ソフトラバーを使うマティアスの手元の感覚を狂わせる戦術を採用していたと思う。
サービスもロングサービスを出したり、レシーブでも、逆に、マティアスのフォア側深くにツッツキを送るなど策はあったと思うが、あそこまで表ソフトラバーのフォアハンド強打で打ち込まれてしまうと実行するのが難しかったのが実情だろう。
今日の試合は、完璧なパフォーマンスを見せたマティアスを褒めたい。
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なお、詳しい試合の結果は大会公式サイトでご確認ください。
ITTF(国際卓球連盟):https://www.ittf.com/tournament/5000/2019-world-championships/
2019 World Table Tennis Championships - Budapest:http://wttc2019.hu/