令和元年8月15日?20日、鹿児島アリーナ(鹿児島)にて第88回全国高等学校卓球選手権大会が開催中。
大会5日目は男女学校対抗の優勝が決まった。男子は愛工大名電が野田学園を3対0で破り、愛工大名電が4連覇を達成した。
【男子学校対抗決勝】愛工大名電がV4
愛工大名電(愛知) 3-0 野田学園(山口)
○加山裕 -5,-3,10,8,10 戸上隼輔
○曽根翔 -6,9,10,8 今泉蓮
○曽根翔/篠塚大登 -8,9,-8,6,9 戸上隼輔/宮川昌大
篠塚大登 - 宮川昌大
谷垣佑真 - 松田歩真
昨年はベスト8という悔しい結果に終わった野田学園が決勝の舞台に帰ってきた。迎え撃つのは3連覇中の王者・愛工大名電。選手層の厚さを誇る愛工大名電に対して、インターハイチャンピオンにして全日本ジュニアチャンピオンの戸上を要する野田学園がどこまで通用するのかに注目が集まった。また、昨日の男子ダブルスでは愛工大名電ペアを破って、戸上/宮川が優勝を果たしているだけに、ダブルスもこの決勝の見どころの1つとなった。
トップは愛工大名電加山に対して、野田学園はエース戸上を投入。野田学園にしてみれば、絶対に落とせない1点だ。そうしたプレッシャーが戸上にどのように影響したのかは分からない。第1ゲーム、第2ゲームを11-5、11-3と圧倒し、第3ゲームも10-5とマッチポイントを握ったところから、戸上の歯車が狂い始めた。後がない加山の好プレーに戸上の凡ミスが重なって、戸上はこのゲームを逆転で落とす。調子を上げてきた加山に対して、チャンスを逃し自信を失ったかに見える戸上は、第4ゲームも先行され、加山が連取。最終ゲームは一進一退の攻防となるが、先にマッチポイントを握ったのは要所でロングサービスを決めた戸上。しかし、チャンスを生かし切れずに、最後まで思い切ってプレーした加山が再び逆転し、先制点は愛工大名電に。
2番は曽根対今泉。実績では曽根が上回るが、決勝という舞台では何が起こるかは分からない。緊張のためか、両者とも本来の力を出せないまま、1対1に。第3ゲームからはやや力が抜けた曽根が一歩リードし、競り合いになるも気迫のプレーで3ゲームを連取。愛工大名電が、優勝に王手をかける2点目を挙げた。
もう1点も落とせない野田学園は、戸上/宮川のチャンピオンペアが無理に攻めずに丁寧な台上から先手を取って第1ゲームを先取。しかし、決勝のために準備してきたという曽根/篠塚も、篠塚の柔らかいプレーと曽根の強打が噛み合うと爆発力がある。1ゲームずつ取り合ってむかえた最終ゲーム、野田学園ペアが優勢にゲームを進めたが、やはり、0対2という厳しい流れからか、ここで勝ちたいという愛工大名電の強い思いに飲み込まれるような形で、愛工大名電ペアが最後まで自信を持ってプレー。ゲームオール11-9という熱戦の末に、曽根と篠塚が両手を天に突き上げ、愛工大名電の勝利を宣言した。
■愛工大名電 今枝一郎監督
1試合目はびっくりしましたね。あの1,2ゲーム目から考えて、誰が加山が逆転勝ちすることを想像できたかと思うんですよね。加山が戸上君に人生で一度も勝ったことがないということを分かった上でトライしてみたんですけど、本当に辛抱強く、マッチポイントが何度もありましたが、11-5、11-3で10-5ですから、あきらめてもおかしくないところで、よく辛抱強く試合してくれたと思います。それが優勝の流れを一気に引き寄せることになりました。
加山は当初やろうとしていたことをやらずにベンチに帰ってきましたが、彼が本来の力を出せば、それほど一方的にやられるとは思っていませんでした。自分が思う作戦を伝えて、それを遂行してくれとお願いして送り出しましたが、それが彼のひらめきによって徐々にいい方向に行ったんだと思いますね。だから、1,2ゲーム目を簡単にやられていたのはあまり悲観していませんでした。戸上はボロボロとミスをしてくれるインターハイチャンピオンではないので、挽回できるとは思っていませんでしたが、やるべきことをやらないと点数は取れないとおもっていました。それができていないのに点数が取れないのは当たり前のことなので、3ゲーム目からはトライしてくれるようになってよかったと思いますね。
2番は、曽根翔の力が何パーセント出たかなといういう内容でしたが、結果には100点をあげますね。あの場面で、僕らでは想像がつかないプレッシャーを受けていたと思うので、ましてや1番で加山が勝ってきたので、余計にプレッシャーで、「勝たなきゃ」というのがいつもの何倍もあった中で勝ってくるわけですから、すごいとしか言いようがないですね。本当にありがたいですね。感謝しかないです。よくこらえるなと思います。
曽根/篠塚のダブルスは最初から野田学園との決勝のために練習してきていました。単純に言えば、選抜で負けているので、それに策を講じないというのは間違っている。ひとひねりしただけです。
オーダーは1番、2番どちらに戸上君が来てもいいと思っていましたが、直前で篠塚が宮川君に勝っていたので、できれば当てたいなというのはありました。それくらいですね。
ダブルスは連覇がとだえたことで、逆にそれがよかったと思います。選手たちは「勝たなきゃ、勝たなきゃ。負けられない」と大きい目標を立てて、それが逆にプレッシャーになってしまっていたので、みんなには昨日そういう話をしました。「よかったね、これで解放されたね。明日はチャレンジャーで行こう」と。その通り、オーダーもチャレンジして、勝ったことのない選手に当てて、乗り切ってくれましたので、本当に感服します。ありがたいばかりです。
■野田学園 橋津文彦監督
戸上、宮川がフル稼働しないといけないチームだったので、正直、1番取らないといけなかったんですけど、そこで(戸上)隼輔を責めることもできないので、僕もタイムアウトが遅かったなと結果論ですが思うところもあるし......。明日のシングルスがんばります。
曽根君もかなり硬くなってて、そこを狙っていこうという話はしていて、今泉なりにがんばってくれたとは思います。
ダブルスは変えてくると思っていました。前半1対1でこのダブルスなら悪くないと思いました。ただ、0対2で回った時点で、篠塚君にかなりやられることは想定していたので、篠塚に対するレシーブに注意を払って、曽根を長短で崩して、という展開に持ち込もうとしたんですが、やはり、この状況では難しかったですね。
宮川にもう1試合やらせてやりたかったんですけど、それだけがちょっと悔しいですね。でも、楽しいのと悔しいのと、そんな感じです。
ただ、総合力でうちが下回っているのは事実なので。それは意識だったり、取り組みだったり、選手層だったり、部内の競争だったり、いろいろなものを総合してうちの方が下回っていることは感じつつ、それでもチャンスはあるから、流れをつかんで勢いに乗れるように選手に寄り添って声がけしてきたつもりですが、僕自身にも足りないものがあるんだなと反省しています。
もったいないので楽しい時間をもう一日、完全燃焼したいと思います。
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(取材=佐藤孝弘)