令和最初の全日本、2020年全日本卓球選手権大会(一般・ジュニアの部)が1月13~19日丸善インテックアリーナ大阪(大阪市中央体育館)で開催中。
卓球レポートでは会場に足を運んだ元全日本王者の渋谷浩が、その鋭い眼で選手たちの戦いぶりを評する。大会6日目に行われた男子シングルス準々決勝4試合について話を聞いた。
<男子シングルス準々決勝>
●戸上隼輔(野田学園高) 5,9,8,10 丹羽孝希(スヴェンソン)
戸上には一発で抜き去るボールがあるので、序盤は台上からの展開で戸上が得点していましたが、丹羽もこのままではいけないと、戸上の嫌なところを少し無理して攻め出しました。リスクを冒した分、丹羽にミスが出たという展開でした。戸上は精神的にのびのびとプレーできていました。
丹羽には、オリンピック代表であったり、元全日本チャンピオンであったり、背負うもの大きいのでなかなかのびのびとはプレーできない舞台だと思います。先に攻めよう攻めようと思って、ミスをさせられたという感じですね。
戸上はバックハンドドライブでの得点が多かったですね。競り合いになった4ゲーム目を逆転で取れたのも大きかったですね。戸上のサービスも効いているように見えましたが、サービスそのものの質の高さもさることながら、「3球目を打たせてはいけない」という心理が「厳しくレシーブしなくては」と思わせるので、そこでもミスを誘うことができました。
●宇田幸矢(JOCエリートアカデミー/大原学園) 8,7,10,-4,-8,3 吉村和弘(東京アート)
吉村はフルゲームの試合を3試合続けてきて、疲れが見えていましたね。前半は宇田のスピードについていけずに、動きにキレもありませんでした。打ち合いにもなりませんでした。一方の宇田は動きが鋭く、キレがあり、吉村の得意な打ち合いに持ち込む前に、決めてしまう速さがありました。
宇田は比較的、動いてフォアハンドで決めるタイプですが、特にバックサイドのボールを詰まった状態でも強く打てる技術があるので、それが吉村のフォアサイドに厳しく入っていました。あとは、要所要所でチキータとバックハンドドライブがうまく効いていました。宇田は3対0から2ゲーム返されましたが、フルゲームやるつもりでいたでしょうから、慌てることなく自分のプレーを貫くことができました。
●張本智和(木下グループ) 6,5,4,5 吉村真晴(名古屋ダイハツ)
張本と対戦する多くの選手はそうだと思いますが、みんな「時間がほしい」んですね。なにしろ張本の打球点の早い連続攻撃はこちらに準備する時間を与えてくれない。自分も合わせて前でプレーしようとすると余計時間がなくなる。そこで、真晴もやはり少し台から距離を取ってプレーせざるを得ませんでした。少し打球点を落としてでも、しっかり自分の体勢で攻めようという考えだったと思います。
それでも崩せませんでしたね。張本の速攻のスピードと精度の方が上回っていました。これはもう張本を褒めるしかないですね。言うまでもなくバックハンドは申し分ありませんが、ここ数年でフォアハンドの威力も相当出てきました。死角がどんどんなくなってきていますね。
●吉田雅己(FPC) 3,8,9,-6,-7,7 神巧也(T.T彩たま)
吉田雅己の読み、勘が鋭かったですね。プレーも年々速くなってきていますが、今回は特にいい状態で臨んでいると思います。前半に、バックストレートを鋭く突いたことで、回り込んでフォアハンドを振りたい神の足を止めました。しかし、神もそれに徐々に順応してきます。それが如実にスコアに表れていると思います。吉田は戦術ははまりましたが、1試合最初から最後まで攻め切るというのはなかなかできることではありません。神は4対0で勝てる相手ではないので、どこかでターニングポイントがあって神が攻めに転じたのだと思います。
最後はとにかく先手必勝、先に攻めた方が点を取るという展開で吉田がよく攻め切りました。吉田は最初のプランで3対0と引き離したのが大きかったですね。
明日の準決勝、張本対戸上ですが、この組み合わせはかなり卓球ファンからは注目を浴びるんじゃないでしょうか。カウンター合戦が見ものですね。
張本は打球点の早さを追求しているので威力よりも打球点の早さ、一方、戸上は打球点よりも威力。早い打球点でもいけるし、打球点を落としてもゴリっと持っていける。ただし、打球点を落として威力のあるボールを打つことにはリスクが生じるので、戸上の方がハイリスクハイリターンな卓球をしていると言えるでしょう。
お互いのバックストレートの早い打球点のバックドライブに注目すると面白いと思います。このボールが勝敗に影響してくるのではないかと密かに予想しています。
もう1試合の吉田対宇田は、ちょっと試合展開が予想しにくいですね。吉田は高速化もしていますが、元来の粘り強さもピカイチのものを持っています。宇田は先に攻めたいと思いますが、さすがに先手を取られてからでは吉田もきついので、先手を取らせたくはないでしょう。おそらく2人とも相手の動画を見て、対策を立ててくると思いますが、試合の中で、それが一周して白紙に戻るような時がくることがあります。そこからの戦いが見てみたい。そんな対戦カードですね。
(まとめ=佐藤孝弘)
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