同世代の平野美宇(日本生命)、伊藤美誠(スターツ)に遅れはとったものの、初の決勝進出、そして、初優勝を決めた早田ひな(日本生命)。ライバルの伊藤、先輩の石川を破っての全日本初Vは早田にとって何を意味するのか。
決勝後の記者会見では、早田が飾らない言葉で心中を語った。
―初優勝のお気持ちを聞かせてください。
平野選手が優勝して、伊藤選手が優勝して、そこに私も続きたいなという気持ちはやっぱりあったので、準決勝で伊藤選手、決勝で石川選手に勝って優勝することができたのはすごく自信になりました。
―準決勝はフルゲームまでもつれましたが、第7ゲームはどんなこと考えてプレーしましたか?
伊藤選手はすごく戦術の幅も広いですし、攻めても、次絶対に対応してくるので、そう簡単に勝てないことはもちろん分かってましたが、第7ゲームになるとやっぱりお互い緊張するので、気持ちが強い方が絶対勝つと思っていたので、気持ちで負けないことを意識して、しっかり最後まで攻めていくことだけを考えていました。
―世界で活躍する伊藤選手を破ったことにはどんな意味がありますか?
伊藤選手は中国選手に勝ってワールドツアーも優勝したりだとか、東京オリンピックもワールドツアーの途中で代表に確定したりだとか、中国人選手もなかなか勝てないような選手になってきています。でもその選手がダブルスの時はお手本で、一緒にパートナーとして練習して、間近ですごい伊藤選手のプレーを見ることが多いので、そこで彼女から色んなことを学ぶことが多いです。
私の卓球人生をいろいろ変えてくれたりとか、プレースタイルをもっと戦術の幅を増やしてくれたり、彼女のプレーを見てこういうことをやってみようかなとか自分もできるかもと思えるような存在だと思います。
―石川選手との決勝の試合はいかがでしたか?
年末のTリーグで試合をしていましたが、その時はボールも紅双喜ですし、いろいろと環境が違ったり、緊張も違ったりして、本当に初めて対戦するような気持ちで、チャレンジャーの気持ちで向かっていくだけでした。
―決勝の勝因はどのようなところでしょうか?
3対0の3-0とリードして,自分の中ではそんなに勝ちを意識したわけではないんですけど、少しボールを見てしまったりだとか、次の動きというよりは1本に対して、すごく自分の動きが硬くなってしまったかなと思います。
第5ゲームからは逆に何本も何本もラリーして、でも最後はしっかり打って決めることだけを考えていたので本当に最後の最後まで攻め切ることができて、自分らしい試合ができたかなと思います。
―東京オリンピックの内定選手2人を破ってのこの優勝を今後どのようにつなげていきたいか?
昨年1年間、同じように東京オリンピック選考レースとして戦ってきた方たちと全日本の大きな舞台で試合することができて、私自身、伊藤選手と石川選手に勝てたことはすごくうれしいんですけど、やっぱり東京オリンピックに出たかったという気持ちはもちろんあります。
でも、逆に東京オリンピックに選ばれなかったことで、発表されてからのちょっとした期間ですけど自分を本当に追い込んで追い込んで、練習も自分が納得して、でもそこからもう少しやったりだとか今まで逃げていた部分から逃げなかったのが、この2週間くらいの練習の成果が試合の中で、気持ちだったり、技術の面で出たかなと思います。そういった感覚を大事に、また頑張っていきたいなと思います。
―準決勝のターニングポイントとなったプレーはどこでしょうか?
3対3の6-4リードの時に結構ラリーが続いて、それまで私がクロスにしか打てなかったフォアに飛ばされたボールをストレートに打った1本です。私にとっても思い切っていけましたし、ノータッチだったので伊藤選手にとってもそれが影響して、そこから焦りがあったかなと思ったので、あそこを思い切ってストレートにいけたのがすごくよかったかなと思います。
―優勝した瞬間の涙の意味は?
ワールドツアーで一緒に帯同してもらっている、今回ベンチに入ってもらった石田大輔先生や、私が4歳から教えて頂いている大輔先生のお父さんお母さんだったり、本当に石田卓球クラブにずっとお世話になってきて、でもなかなか結果で恩返しできなくて、東京オリンピックの選考レースの時もたくさん連絡や励まし、頑張れよって言っていただいたり、でも、東京オリンピックで代表に選ばれなくて、そこで恩返しができなかった分、今回絶対優勝しようという気持ちがありました。
そういった石田卓球クラブに対しての思いだったり、家族や身近でサポートして頂いている方へのいつもの感謝の気持ちがあの涙に影響したのではないかなと思います。
―今回自力で世界卓球の切符を取ったことはどんな気持ちでしょうか?
昨年、今年と選考会であと1点だったり、あと1勝ができずに代表を落としてきて、でも今大会は世界選手権というよりも、全日本で優勝したいという気持ち、目の前の試合でここでしっかり優勝したいという気持ちの方が強かったのです。
その結果があって世界選手権に選ばれる、そういった面であまり考えていませんでした。でも、自力で勝ち取ることができたのですごく自信になりましたし、世界選手権に向けて、オリンピック前の団体戦というすごい貴重な経験をさせてもらえると思うので色んなことを学んで、自分の成長につなげていけたらと思います。
―オリンピックの代表発表から全日本までの期間についてどのような気持ちで過ごされましたか?
発表があった時は落ち込んだというよりも、確かにこの結果じゃ無理だろうなと改めて確信しました。じゃあここから4年間私がどう変われるのか、2020年の1年間のテーマを『挑戦』にして、いろんなことに挑戦する、逃げずに頑張るということを目標に頑張ろうと思いました。
―今大会のプレーの手ごたえについて教えてください。
私はもともと両ハンドをぶっ飛ばしてしまうタイプで、卓球を始めた時も台に入らず、ホームランばっかりだったので、でも今となってはそれが生きているのかなと思います。でも、力加減を調整したりだとか、それを手だけでなく体で覚えさせたり、足の微調整をしたりとか、そういうところでたくさんアドバイスをもらったり、色んな形で指導を受けて、今大会に臨みました。
やっぱり100で打ったら決まるけど、自分が戻れない、それだったら70パーセントの力でコースを突いたりとか、相手のいないところ、予測している逆のところを狙ったり、そういった相手を見ながら打つっていうところも本当に基本なんですけど、今大会、そういうところを大事に、練習から試合につなげていきました。
―お手本になった伊藤選手に恩返しができたと感じますか?
同世代3人いて、本当に私からしたら"みうみま"2人から学ぶことがたくさんあって、やっぱり負けて成長すると思うので、今回伊藤選手が私に負けたことによって、伊藤選手はもっともっとさらに強くなると思いますし、それをまた追い越そうと平野選手や私が練習に取り組もうとしたりっていう本当にいいライバルでもあるので、今回、私が勝ったことによってさらにまた伊藤選手が強くなると思います。
私が今の実力の伊藤選手に勝つことができたことはもちろん自信を持っていいと思うんですけど、まだまだ足りない部分があったりとか、伊藤選手ともう1回試合をしたら、次はもう0対4で負けてしまうかもしれないという部分もたくさんあったので、確実に強くなって絶対負けない選手になれるように頑張りと思っています。
(まとめ=佐藤孝弘)
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