宇田対張本の決勝もさることながら、それに負けずとも劣らない激戦になったのが、張本対戸上隼輔(野田学園高)の準決勝だ。試合はゲームオール9本で張本が戸上を振り切ったが、張本をあと一歩まで追い詰めた戸上の疾走感あふれるプレーは観衆の目を奪った。
ここでは、準決勝の直後に行われた戸上のインタビューを紹介する。激闘の余韻が消えない中、強くなる糧をわずかでもつかもうと、敗因を懸命に分析する次期スター候補の言葉に目を通してほしい。
ー準決勝を振り返っていかがですか?
1ゲーム目は非常に展開の悪いゲーム運びだったので、2ゲーム目から積極的に攻めることだけを心に決めて戦おうと思ったのですが、3対1とリードした場面で勝ちを意識してしまったのが......。
今まで何回もそういう場面に遭ってきたんですけど、どうしても心に余裕を持ってしまう弱点というか、課題が今の試合に出てしまったのかなと思います。
ー3対1になった第5ゲーム、第6ゲーム、終盤まで競りましたが、そこで勝てなかった要因は?
7ゲーム目の展開と一緒で、小さいミスの積み重ねが1番の原因かなと思います。
ー張本選手は追い詰められていたように感じましたか?
世界で活躍する選手の一人なので、どんな場面でも諦めず立ち向かってくるというところでは本当に、劣勢の場面でもこちらがプレッシャーを受ける戦いをしてしまいました。
ーどんなところに張本選手のプレッシャーを感じましたか?
僕が積極的に攻めても臆することなく、台から下がらずにプレーできることが(張本の)強みだと思います。
丹羽選手と比べて、(張本は)僕が顔を見ていた限りでは何も表情が変わらず、相手の読みが本当に分からなくて。僕が取ったゲームに関しては相手も雑な部分があったんですが、終盤にかけてていねいにミスを少なくしてきたことが、自分にとってプレッシャーに感じた部分ですね。
ーあと一歩まで追い詰めましたが?
今まで張本選手と何回も試合をしてきて、勝ちが目の前にあるところで何回か敗れているので、対戦していて分が悪い相手ではないので勝てると思ったんですけど、自分が焦ってしまって負けてしまいました。
ー今回の全日本選手権大会の結果を今後どのように生かしていきたいですか?
今大会は本当に調子が良くて、自分のプレーも貫くことができて、丹羽選手にも勝つことができて、今まで勝てなかった選手にも勝つことができて、この本調子を普通のどんな場面でも出せるような選手になるように、反省して次から勝負をかけたいと思います。
ー張本選手を前陣から下げようと思っても難しかったですか?
そうですね。僕が前陣でプレッシャーをかけてもなかなか下がることなく、前陣ブロックで壁になった状態で、逆に僕が下げられてしまった場面が何回もあった。そのことにすごいと思います。
ー第7ゲームについてはいかがですか?
中盤追い付かれてしまって、並んだ状態でやっとリードできたんですけど、心の余裕が少しできてしまって、攻めるというところだけを見てしまって、戦術という部分を捨ててしまったのかなと思います。(張本が緩く返してきたボールに対して)逆にチャンスボールだと思って焦ってしまいました。
ー張本選手の強さ、すごさはどこで感じましたか?
試合している流れで、張本選手は僕の弱点が転々としていく中で、(弱点を突くために)戦術を変えてくる早さというのはすごいなと思いました。
ー戦術を変えてくるというのは具体的には?
最初(序盤)はフォア前のミスが多かったんですけど、中盤にかけてフォア側に隙ができてしまって、そこを突かれてしまいました。最後、7ゲーム目はバック側を攻められて、自分のミス待ちという状況をつくられて。攻略(対応)しても、弱点が出てきたらすぐにそこを攻められる状況でした。
それまで(中盤まで)雑というか、無理矢理打ってきてミスも多かったんですけど、急にブロックで緩急をつけられて、どうしても焦ってしまう部分が出てしまって、それを勘違いしてチャンスボールだと思って打ったら次すぐに返ってくる展開で、決めきれないっていうプレッシャーがありました。
ーこの試合での収穫は?
今大会、用具を変えて初めての大会なんですけど、丹羽選手や張本選手とは練習しかあまりやったことなくて、試合でこれだけ自分がしっかり(ボールに回転を)かけてオリンピック選手二人からミスを誘えたことは、世界で活躍するためには必ず必要なことなので、用具を変えたことが一番の財産だと思います。
ー具体的にはどう変えましたか?
ラケットを硬いものから柔らかいものに変えて、ラバーを柔らかいものから硬いものに変えました。
ー狙いは何ですか?
もともと自分は細身なので、パワーをつけたいと思い、ラバーを固くすることによって、より回転量も威力も増すと思ったので変えました。
(まとめ=猪瀬健治)
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