女子シングルス決勝で優勝の最有力と目されていた伊藤美誠(スターツ)を振り切り、5年ぶりに戴冠した石川佳純(全農)。中国選手をも圧倒する伊藤の攻めに対し、ダウンを喫したボクサーが何度も立ち上がるかのように、懸命にしのぎ続けた石川のプレーは観る者の心を打った。
次々と台頭してくる有望選手たちを前に、「全日本でもう勝てないのでは」と悟りそうになったという石川。しかし、そうではないと教えてくれたのは、ほかならぬ卓球だった。
決勝の激戦をくぐり抜け、優勝の素直な心象を語った石川のインタビューをお届けする。
ー準決勝(木原美悠戦)はどうでしたか?
出足がすごく良くて3対0になって気持ち的に優位にできたんですけど、そこから2ゲームを取られて3対3になってたら厳しかったと思います。3ゲーム目、競ったところを取れたのが大きかったです。
木原選手は実力がついている選手なので、自分がオリンピック選手だから負けられないということはなかったです。
ー決勝(伊藤美誠戦)についてお聞かせください。
ゲームカウント1対3の劣勢から、最後まであきらめずにプレーできたのが良かったと思います。5年ぶりということで優勝から遠のいていて、9オールになったときは心臓が飛び出しそうになってました。
東京オリンピックという大きな目標に向かって、レベルが高い日本女子の中で勝てたことはすごく自信になりました。ゲームカウント1対3になって、前半リードしていたのに逆転される展開が続いたんですけど、簡単に点は取れないので、流れを変えるために強気のプレーを入れました。
いつも伊藤選手と対戦したときは駆け引きが多くなるんですけど、精神面でも技術面でもチャレンジをしようと思って、決勝の5ゲーム目以降はレシーブが弱気になると絶対勝てないと思ったし、チャレンジすることでしかこういう結果は出せないので、今までと違うレシーブ、今までと違う攻撃ができたのが勝因です。
(最終ゲームは)9-5からチャンスボールを2本ミスして「あちゃー」となったけど、9-9になった時には思い切ってやろうと思いました。もう、最初は(試合の序盤は)相手の球が早すぎて、でも最後はフォアハンドだと思ったので、回り込んで打っていきました
プレースタイルだったり、年齢だったり、周りから言われて落ち込むこともあったんですけど、全日本でもう勝てないんじゃないか、と思ったこともあったし、周りから言われることもあった。自分でももう無理なんじゃないかって思うときがありました。でも、そうじゃないんだって卓球が教えてくれました。同じ思いをしている選手にも勇気を届けられたと思います。
そうじゃないということを卓球が教えてくれたし、自分もそうだし、コーチやいろんな人が信じてくれました。自分がやりたいようにやればいいと思いました。
ー決勝に臨むときの心境をお聞かせください。
決勝の前はプレッシャーは全くなくて、どれだけできるか楽しみでした。試合前、絶対最後まであきらめないという気持ちを持てたのも今日の勝因。
本当に伊藤さんと戦うときには世界で活躍している選手なので、胸を借りる気持ちです。
卓球を20年やってきて、東京オリンピックは私にとって最高の舞台になるので私は頑張り続けるしかないと思っています。完全な形でなくても、東京オリンピックには出たいです。
(まとめ=卓球レポート)