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宮﨑義仁強化本部長インタビュー ~選手たちは実戦の場を望んでいた~

 2021年9月1~8日にドーハ(カタール)で開催される予定のアジア卓球選手権ドーハ大会の日本代表を決める「日本代表選手男女選考合宿」が6月17~20日(17~18日/女子、19~20日/男子)に旭市総合体育館(千葉)で開催された。
 全日程を終え、この選考合宿開催に尽力された日本卓球協会の宮﨑義仁強化本部長が、男女選考合宿の総括と東京オリンピックの展望について語った。

--男女選考合宿の総括をお願いします
 この選考合宿はアジア選手権の予選ですが、来年になればパリオリンピックの選考会になります。今回男子は、水谷(水谷隼/木下グループ)と丹羽(丹羽孝希/スヴェンソンホールディングス)が出場する中、木造(木造勇人/愛知工業大)が優勝しました。これがもし来年の成績であれば、パリオリンピックへのポイントではナンバーワンになるわけですから、木造がパリに1番近い男、と言われるようになるわけです。
 今まで国際大会でワールドランキングを上げることがオリンピックへの近道でしたが、今後は日本国内でライバルを倒した人間が日本代表としてオリンピックに出場できる、ということになりますので、こういう貴重な経験を選手は積んでいく必要があると思います。そして、日本国内の争いが世界の頂点にある、というレベルに持って行くことを日本卓球協会の強化本部として考えているので、このような舞台を選手たちに与えていきたいと思います。
 男子は、東京オリンピック代表選手が2人出場する中、新人といってもいい木造が優勝し、高校生の篠塚(篠塚大登/愛工大名電高)もベスト4に入りました。新しい芽が出てきたなと感じています。
 一方、女子は、東京オリンピックリザーブの早田(早田ひな/日本生命)が優勝しました。早田は現在の力をしっかり示せたなと思っています。
 ただし、女子の場合も新人選手がかなり頑張っていましたので、来年になれば順位は全く分からないという感じを受けました。

--男子は東京オリンピック代表選手が出場しました。彼らのプレーはいかがでしたか
 皆さん見て分かる通り、卓球は中学生と社会人が試合をして、社会人が絶対勝つだろうと思ったら中学生が勝ったりします。卓球はそういう競技なんです。そして、向かっていく人間の方が強い競技でもあります。
 ただし、頂点のオリンピック、世界選手権大会については、みんなが異常な精神状態になっています。その異常な精神状態でみんなが向かっていく戦いの中では、やはり東京オリンピック代表である水谷、丹羽、張本(張本智和/木下グループ)が、今の日本の中では1番力を出せると思います。ですから、今回、丹羽が早めに負け、水谷が5位で終わりましたが、あまり問題にしていません。
 ただし、次のパリオリンピックでは、木造や戸上(戸上隼輔/明治大)、篠塚、村松(村松雄斗/東京アート)ら今回ベスト4に入った選手が、そういう精神状態の中で最高のパフォーマンスを発揮できるよう私たちは3年間かけて育成をしていきたいと思っています。

--宮﨑さんから見て、オリンピックで男女はどのような成績を残せると思いますか
 複数メダルは間違いないと思っています。特に女子は、団体ではメダルは落とさないでしょう。混合ダブルスも、メダルは落とさないと思っています。そして、男子団体と張本、伊藤美誠(スターツ)で1つ2つのメダルは取ると思っています。
 ただし、まだ日本の卓球が取ったことのない金メダルを1つは取りたい。これが念願です。金メダルに近いのは何かと言われれば、混合ダブルスだったり伊藤だったりというのはあるかもしれませんが、調子に乗れば格下が格上に勝つことがスポーツですから、日本がまとまり、地の利を生かせれば全ての種目にチャンスはあると思います。

--この選考合宿を主催した意義と、あらためて結果についての感想をお聞かせください
 まず、強化本部としては国際大会が全くない中、選手に戦う場所をつくらないといけない。ただし、不公平な場所はつくりたくない。加えて、練習みたいな形で参加する選手がいるとほかの参加者に対して失礼なので、東京オリンピックの代表権を持っている選手はアジア選手権の代表になれますが、この選考合宿に出たらアジア選手権の代表権はいったん捨て、ここでの成績が主になるという選考基準を設けさせていただきました。その中で、水谷と丹羽が出てきたのを見て、すがすがしい思いでした。やはり実戦を相当望んでいるというのを感じたので、こういう選考合宿を開いた意味があったと感じました。
 その中で、残念ながら丹羽は早めに負けて、水谷は5位で終わりましたが、先ほども述べたように、この成績については一喜一憂していません。
 ナショナルトレーニングセンターで毎日彼らの練習を見ていますが、しっかり練習を積めていますので、東京オリンピック本番で頑張ってくれたら、それでいいと思います。今回は2人(水谷と丹羽)については実戦の場を求めてやってきたということで、成績について私個人は何も問題視していません。

--張本選手の状態についてはどうですか
 トレセンで練習を見ていて、張本はちょっと調子が悪かったんですね。ナショナルチームの選手同士で練習試合をやっても負ける試合が何週間か前に続きましたが、ここ1週間くらい前から全て勝つように変わってきたので、ギアが1段上がってきた印象です。
 ただし、それは練習場の中での練習試合ですから、本来ならこういう場で試したかったところですが、彼は出ない選択をしたので、次は7月2日に開催予定のドリームマッチで張本には強敵を用意しています。そこで皆さんの前で、カメラの前でいいプレーができたら、彼も自信を持ってオリンピックに入れるのではないかと思っています。

--張本選手は、どうすれば東京オリンピックで本来の力を出せますか
 これは、その場にならないと分からないと思います。ですが、彼の克服方法は皆さん見ても分かるように、あの声です。1回戦から地球がひっくり返るんじゃないかと思うような声を出して、そして自分がその中に入り、雰囲気に慣れていく。それが成功したら、金メダルを取る可能性もあります。
 2018年のジャパンオープンで並み居る強敵、ロンドン(張継科)とリオ(馬龍)の金メダリストを倒しての優勝ですから、ああいう場面がまた東京で見られる可能性が私は十分にあると思います。それは本当に張本が、オリンピックの雰囲気を飲み込んで自分の物にできたら実現できるでしょう。
 ただし、いくら声を出しても心のうわつきが収まらなかったら張本もなかなか実力を出せません。それは対策とか、そういうことではなくて、本番にならなければ分からない。そこはもう(張本の)人間力だと思っています。

(取材/まとめ=猪瀬健治)

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