9月10日、4季目を迎えたノジマTリーグ2021−2022シーズンの女子開幕戦が大田区総合体育館(東京)にて行われた。
開幕戦は昨日の男子に続き有観客で行われ、昨シーズンファイナル優勝の日本生命レッドエルフと今季から参戦した九州アスティーダの対戦となった。3季連続で優勝杯を手にしている日本生命レッドエルフは、バラエティーに富んだメンバーをそろえた新チームの挑戦を退けた。
日本生命レッドエルフ 3-1 九州アスティーダ
○森さくら/長﨑美柚 5,-8,11 佐藤瞳/橋本帆乃香
○早田ひな 9,-6,4,9 横井咲桜
○笹尾明日香 10,10,-9,9 出澤杏佳
長﨑美柚 -10,-7,-6 橋本帆乃香○
※ダブルスは3ゲームスマッチ、シングルスは5ゲームスマッチで最終ゲームは6-6から。ダブルスは第3ゲーム、シングルスは第5ゲーム以外はジュースなしのサドンデス(11点先取)
全日本チャンピオンの早田を筆頭に、森、長﨑とパワーのある攻撃型の実力者に加え、バック表のジュニアチャンピオン笹尾を新戦力に迎え、すきのない布陣で初戦に臨んだ日本生命レッドエルフ。一方の今季から参入した新設チームの九州アスティーダは、佐藤、橋本のカット2枚に加えて、両面表ソフトのジュニア王者出澤、先月のインターハイで三冠王に輝いた高校2年生の横井とバラエティーに富んだメンバーで、Tリーグ王者に挑んだ。
第1マッチは、世界卓球2019ブダペストの銅メダリストペア、佐藤/橋本が有利かと思われたが、初のTリーグの舞台に硬くなったか、森/長﨑のパワーボールを捌ききれずに第1ゲームを失う。第2ゲームはカットペアが相手のミスを誘い取り返し、五分の勝負になるが、苦しみながらも威力のあるドライブで攻めきった日本生命ペアがジュースを制し、先制点を挙げた。
第2マッチはエースの早田に、インターハイ王者の横井をぶつけにいった九州アスティーダ。勢いのある横井は巻き込みサービスからの強烈な両ハンドで第2ゲームを奪うが、攻撃の質が高く、守備も固い早田を崩すには至らず、日本生命レッドエルフが初戦白星に王手。
第3マッチは笹尾対出澤の大学生対決。序盤、出澤が笹尾のフォア側深くを突いたボールに笹尾が対応しきれない場面があったが、次第に慣れ始めると、このボールを狙い打ってカウンターを決めるなど、次第に笹尾が主導権を握り始め、粘り強いフォアハンド連打で、出澤のくせ球に対応し2ゲームを連取。出澤も固いバックブロックからのフォアハンドスマッシュで1ゲームを返すが、1本でも多く相手コートに返そうという執念を感じさせるプレーで笹尾が勝負を決めた。ここで日本生命レッドエルフは勝利を決めた。
Tリーグの特別ルールによって行われた第4マッチでは、先日行われた世界卓球2021ヒューストンの選考合宿で行われた試合の再戦となった。先の試合では橋本がゲームオールジュースの末に長﨑をやぶったが、今回は橋本がバランスのよい攻守でペースをつかみ、ストレート勝ち。新チーム九州アスティーダが王者日本生命レッドエルフに一矢報いた形になった。
九州アスティーダの初戦を見て感じたのは、初戦は敗れてしまったが、佐藤/橋本のダブルスの強さと、相手に合わせてオーダーが組める選手の多彩さだ。相手チームは常にオーダーに頭を悩ませることになるだろう。はまれば格上の選手と当たっても勝てる可能性を秘めたチームとして、今後の活躍を期待したい。
●日本生命レッドエルフ 村上恭和監督のコメント
3対1で結果勝ちましたが、ダブルスが世界3位のペアに勝てるとは思っていなかったので、そこが勝ったのでチームの勝利につながったと思っています。長﨑と森のペアに決まったのは、4日ぐらい前です。長いこと準備していた人が故障してしまったので。長﨑は森以外とペアを組む予定でダブルスのカット対策はしていました。大変だったのは森さくら。よく最後まで攻め切れたなと思います。全員が大接戦で、特にダブルスの逆転、3番の笹尾は1度も勝ったことがないという出澤に勝ち、そこが大きいですね。
正直4チームのときは1つのチームと7試合するので後半だれたところもありましたが、今回は5試合ずつなのでメリハリがきいて、やる方も見る方もいい対戦になるんじゃないかなと思います。
●日本生命レッドエルフ 早田ひな選手のコメント
3連覇を達成して4連覇に向けての一戦で初参戦の九州アスティーダとの試合でしたが、横井さんと対戦したことがありませんでしたし、みんなも難しい試合でしたが、できることをみんなが出して勝ち切れてよかったと思います。
昨年も今年もそうですが、慣れていない環境で初めてだったり久しぶりだったりする選手との対戦は、相手は負けてもともとで思い切っていろいろなことをしてきますが、私はエースとして負けられない中、そこは昨年の反省(開幕戦で木下アビエルの木村に敗戦)を生かすことができました。
(引退を発表した)前田美優選手が目標にしていた試合があって、それが終わって引退というのを聞いて悲しかったし、前田選手は大事なところで勝ってくれて、いろいろな思い出があるので、そういう選手が引退する中、自分が引き継いでいきたい思いがあったので勝てて良かったし、美優さんに勝利を届けられて良かったです。
今日対戦した横井さんのように、Tリーグでは初対戦が多くなってくると思います。世界で活躍する選手たちと試合ができる機会があるのはうれしいですし、5チームが切磋琢磨することで日本のレベルも上がってくると思います。私自身も学ぶことが多いので、日本生命レッドエルフの優勝に貢献したいです。
●九州アスティーダ 川面創監督のコメント
今日はたくさんの方に会場に来ていただいた中、出澤以外は初のTリーグということで選手たちが緊張気味で、王者・日本生命レッドエルフの勢いにやられてしまいました。
東京オリンピックが終わってTリーグに参戦することができ、社長兼監督としてベンチに入らせていただきましたが、ついに始まったなと。シーズン20試合のうちの最初の1つを、王者の日本生命レッドエルフと戦うことができて感謝です。ダブルスもジュースでしたし、横井も早田選手と良い試合をし、チャンスはあったと思います。Tリーグの雰囲気はお客さんもたくさんいて独特で、私らは緊張感が出てしまいましたが、最後に橋本が1点を取ったのは必ず次につながります。九州アスティーダは、カットが2人いるなどバリエーションがあるので、次に向けてしっかり準備したいと思います。
(2番の横井のオーダーは)早田選手が来るだろうと読んでいたのでばっちりでした。横井はインターハイ三冠王など、今、乗っているので、エースの早田選手に当てて、そこを勝つことができれば士気がが高まるだろうと考え、敢えて当てました。もちろん早田選手は日本代表、日本王者で簡単に勝てる相手とは全く思っていませんが、緊張している中、横井は戦えていたと思います。この経験は必ず次につながります。
●九州アスティーダ 橋本帆乃香選手のコメント
最初に1番のダブルスに出させていただいて、Tリーグは初めてでとても緊張して手が震えてサービスがコントロールできない状態でした。ダブルスは負けてしまいましたが、最初に試合ができたたことが4番での勝ちにつながって良いスタートが切れたと思います。照明がいつもと違ってライトアップされて周りが暗い雰囲気だったのと、団体戦を戦うのはかなり久しぶりだったし、すごく近くにお客さんいる状況も慣れていなかったので緊張してしまいました。
ダブルスは負けてしまって良いスタートが切れず悔しいですが、(佐藤と)2人で皆さんの前でプレーできたのはうれしいですし、これからもたくさんの人に見ていただきたいと思います。
(4番の長﨑は)直近の選考会で4対3でぎりぎり勝って、すぐにまた当たると決まったときは不安もありましたが、個人戦ではなく団体戦なので、チームは負けていましたが、九州の皆さんに元気を与えられるように1勝でも届けることができたらいいなと思って全力で戦いました。
詳しい結果はこちら
T-LEAGUE:https://tleague.jp/
(取材=佐藤孝弘/猪瀬健治)