1. 卓球レポート Top
  2. 大会
  3. 国際大会
  4. 世界卓球
  5. 2021ヒューストン
  6. 世界卓球2021ヒューストン 邱建新が見た世界卓球 男子シングルス準々決勝 梁靖崑対カルデラーノ

世界卓球2021ヒューストン 邱建新が見た世界卓球 男子シングルス準々決勝 梁靖崑対カルデラーノ

 数多くの選手をトップレベルへと引き上げ、また勝利へ導いてきた邱建新。世界屈指のプロコーチである邱氏が、その深くて鋭い視点で、世界卓球2021ヒューストンの熱戦を読み解く。
 今回は、男子シングルス準々決勝の梁靖崑(中国)対 カルデラーノ(ブラジル)を解説してくれた。

気持ちを切らさず逆転した梁靖崑

カルデラーノはメダル目前で失速

●男子シングルス準々決勝
梁靖崑(中国) -4,-12,-8,8,4,8,8 カルデラーノ(ブラジル)

卓球の面白さや難しさ、怖さがよく表れていた好試合
梁靖崑は少しの積極性を大逆転勝利につなげた
 梁靖崑は少し前についてカウンター気味に打球することを得意とする選手です。一方のカルデラーノは、ボールの威力はすごいですが、台から少し下がる傾向があります。
 そのため、カルデラーノは時間の余裕がなくなり、梁靖崑が優位かと試合前は予想していましたが、試合は大きくもつれました。

 第1ゲームから第3ゲームまでは、カルデラーノがパワーで梁靖崑を上回りました。
 一方の梁靖崑は勝ちを意識しすぎたためか、第1〜3ゲームまで、ミスせずボールを卓球台に入れることを優先しているかのような消極的なプレーが目立ちました。いつもの梁靖崑ならドライブに対してはブロックせず、カウンター気味に打球していくのですが、カルデラーノの球威に対しては防戦一方になってしまいましたね。梁靖崑のプレーが消極的だったことを差し引いても、カルデラーノが第1〜3ゲームで見せたパフォーマンスは素晴らしかったと思います。
 ただし、梁靖崑は第2ゲーム10-9でのチャンスボールの打ちミスと第3ゲーム8-7でのサービスミス、この2つの大きなミスがなければゲームカウント0対3と追い詰められることなく、もう少し楽に勝利できていたと思います。

 カルデラーノの調子から、このままゲームセットもあり得ると思いましたが、第4ゲームから梁靖崑が追い上げます。
 0対3と追い詰められたことで無駄な力みが取れた梁靖崑は、チキータやループドライブなどの質が上がり、ラリーで優位に立つ場面が多くなりました。第1〜3ゲームまでの梁靖崑のチキータやループドライブは安定性重視でそれほど質は高くなかったのでカルデラーノは攻め込めましたが、第4ゲームからそれらの技術が少し攻撃的になったので、カルデラーノはミスが多くなりました。
 このことが梁靖崑の逆転勝ちのきっかけになりましたが、とはいえ、梁靖崑が劇的に何かを変えたというわけではありません。
 梁靖崑の技の質が少し上がったことと反比例するように、カルデラーノのパフォーマンスが下がっていったことも大きな要因です。序盤はまるでフリーバッティングかのようにラケットを振っていたカルデラーノでしたが、第4ゲームからプレーが少しおとなしくなってしまいました。梁靖崑の技が少し攻撃的になったということもありますが、それよりも「勝てばメダル」という意識がカルデラーノに働いてしまったからでしょう。

 第6ゲームでは、カルデラーノが梁靖崑のストップに対してネットミスを繰り返しましたが、このあたりにカルデラーノの気負いや頭の中の混乱ぶりが表れていたと思います。
 最終ゲームは序盤でファインプレーを連発した梁靖崑が引き離します。最終ゲームの終盤、大きくリードされたことでようやく目が覚めたのか、カルデラーノが序盤のような素晴らしいプレーを見せましたが、時すでに遅しでしたね。

 序盤のカルデラーノは素晴らしいパフォーマンスでした。このまま優勝してもおかしくないほどのプレーでしたが、徐々に積極性を失っていき、大魚を逃しました。一方、梁靖崑の調子は比較的フラット(一定)でしたが、中盤、少しだけ積極的になったことでカルデラーノの気持ちや技を乱すことに成功し、それが逆転勝ちにつながりました。
 総じてハイレベルな試合でしたが、場面によって心理面がプレーに大きく影響するという卓球の面白さや難しさ、そして怖さがよく表れていた試合でもあったと思います。

(取材/まとめ=卓球レポート)

\この記事をシェアする/

Rankingランキング

■大会の人気記事

NEW ARTICLE新着記事

■大会の新着記事