1. 卓球レポート Top
  2. 大会
  3. 国際大会
  4. 世界卓球
  5. 2022成都
  6. 世界卓球2022成都 「伊藤は自分のタイミングに当てはめて打つことができる」 女子決勝T準々決勝を渡辺理貴が解説

世界卓球2022成都 「伊藤は自分のタイミングに当てはめて打つことができる」 女子決勝T準々決勝を渡辺理貴が解説

 元ナショナルチームコーチとして数々のトップ選手の指導に携わり、現在はTリーグの解説者としても活躍する渡辺理貴氏が、その卓越した観察眼で世界卓球2022成都を鋭く分析する企画。
 今回は、10/6に行われた女子団体決勝トーナメント準々決勝の4試合について分析していただいた。

【日本 対 スロバキア】
決勝を見据えた布陣で臨んだ日本がスロバキアを完封

▼女子団体決勝準々決勝
 日本 3-0 スロバキア
○伊藤 9,1,3 ラボソバ
○早田 9,7,-9,6 バラゾバ
○長﨑 -6,5,11,7 ククルコバ

 グループリーグの再戦となった日本対スロバキアは、トップでラバソバ(世界ランキング178位)の戦い方を把握して臨んだ伊藤が、1ゲーム目こそ11-9と競り合いになりましたが、2ゲーム目以降はワンサイドゲームの展開でストレートで勝利。伊藤は、常に相手のボールを読むことを習慣化しているので、少々奇抜な戦術で相手がプレーしても、予測を外そうとしたボールが来ても、伊藤の想定内であれば自分のタイミングに当てはめて打つことができる強さがあります。
 サウスポー対決となった早田対バラゾバは、ヨーロッパ選手の中でもパワーのあるバラゾバ(世界ランキング48位)が、サービスや台上の変化でチャンスを作り、パワーボールで得点に繋げる戦術で早田を苦しめました。しかし、ゲーム終盤に集中力の高さを見せる早田は、第1ゲームを6-9から逆転勝利。第2ゲームも取り、王手をかけましたが、第3ゲームはバラゾバに7連続得点を許すなど、なかなかプレーにキレが出ませんでしたが、しっかり第4ゲームを取り返して3対1で勝利しました。決勝の中国戦を見据えると、苦しい試合を今のうちに乗り越えることができたのはよかったかもしれません。ツインエースの早田が上昇気流に乗っていくために必要な試合だったと思います。
 長﨑対ククルコバは、異質攻撃型のククルコバ(世界ランキング101位)が長﨑の威力のあるドライブに対してバウンドの上昇期(頂点前)の打球点を狙うカウンターで、タイミングの早さとナチュラルな変化で得点を上げる展開で第1ゲームを先取しました。しかし、今大会戦術・技術の調整能力が光る長﨑は、相手に打たせてカウンターで狙うパターンを随所に使い、徐々にククルコバの返球に自分のタイミングに合わせて、第3ゲームのジュースを取ったことが勝利への足掛かりとなり、3対1で勝利をつかみました。
 日本女子チームは、4大会連続のメダル獲得が確定しました。ここまで失点がない日本女子チームは、決勝進出をかけてドイツと対戦します。

「ツインエースとして活躍すべき早田が今のうちに苦しい試合を経験したのはよかった」と渡辺氏


【中国 対 ハンガリー】
ベストメンバーの中国にすきは見当たらない

▼女子団体決勝トーナメント準々決勝
 中国 3-0 ポルトガル
○王曼昱 8,6,5 シャオ・ジェニ
○陳夢 4,2,5 ユ・フ
○孫穎莎 4,1,3 マトス

 準々決勝もベストメンバーで臨んだ中国チームは、ポルトガルチームに一度もリードを奪わせない試合展開で完璧にシャットアウトしました。中国はおそらく決勝までこのベストメンバーで臨むのでしょう。陳夢、王曼昱、孫穎莎の3人は、全員がスピードとパワーを兼ね備えており、今のところすきが見当たりません。

ここまで、まったく付けいるすきを見せない中国女子。写真は孫穎莎


【中華台北 対 シンガポール】
中華台北が、勝利の流れを逃したシンガポールに競り勝つ

▼女子団体決勝トーナメント準々決勝
 中華台北 3-2 シンガポール
○陳思羽 9,4,7 ジョウ・ジンイ
 鄭怡静 -8,-10,9,-8 ツォン・ジェン○
○李昱諄 -9,-9,11,7,2 ウォン・シンル
 陳思羽 -4,9,-13,-5 ツォン・ジェン○
○鄭怡静 8,2,3 ジョウ・ジンイ

 1番は、終始先に攻めていた陳思羽がストレートでジョウ・ジンイを破り、貴重な先制点を挙げました。グループリーグからの好調さがうかがえる試合内容で、安定感とスピードがありました。
 2番は、ベテランの鄭怡静にピーク時のキレやボールの勢いがありませんでした。先手を取ったラリーでも逆にツォン・ジェンに振り回される展開になってしまい、 競り合いをものにすることができませんでした。
 李昱諄対ウォン・シンルは、非常にファイトあふれるプレーで李昱諄に立ち向かいと2対0とリードしましたが、3ゲーム目を逆転されて11-13で落としてから李昱諄に流れがいってしまい、惜しくも敗れてしまいました。
 王手をかけたのは中華台北ですが、4番のツォン・ジェンのタイミングの早い攻めとストレート攻撃が好調の陳思羽をも沈めました。ツォン・ジェンのボールにはタイミングの速さだけでなく、インパクトに鋭さがあり、ボールに伸びがありました。
 ラストの鄭怡静対ジョウ・ジンイは1ゲーム目こそお互いの緊張で競り合いになりましたが、2ゲーム目以降は格の違いがはっきり出たゲーム展開となり、鄭怡静が圧巻のプレーでメダル確定の勝利を決めました。中華台北は準決勝で中国に挑戦します。

李昱諄が3番で0対2から逆転勝利。値千金の1勝を挙げた


【香港 対 ドイツ】
0対2からドイツが起死回生の逆転勝利

▼女子団体決勝トーナメント準々決勝
 ドイツ 3-2 香港
 ハン・イン 7,-1,-9,-14 蘇慧音○
 ミッテルハム -3,-5,13,-5 朱成竹○
○シャン・シャオナ 11,-5,10,14 李皓晴
○ハン・イン 6,3,8 朱成竹
○ミッテルハム -9,11,5,5 蘇慧音

 出足こそハン・インのカットの変化についていけず、0-7とリードされた蘇慧音ですが、香港チームで唯一カット打ちが上手く、オーダー的にもハン・インを狙いにいったと思われる蘇彗音は、李静監督の起用に見事に応えました。前陣でラケットを下げず、打球点の高いつなぎのカット打ちとスマッシュが決まり出すと、ハン・インもカットで粘り切ることができなくなってきました。蘇慧音はハン・インが苦し紛れにドライブで返球すると、カウンタードライブでミドルを狙うなどラリー展開がほとんど蘇彗音の形になっていました。蘇彗音の見事な カット攻略が光った一戦でした。
 2番の朱成竹対ミッテルハムは、朱成竹のピッチの早い攻めに対して、ミッテルハムが自分の得意な領域でプレーさせてもらえずに苦しんでいました。3ゲーム目は、粘りと緩急の使い分けで何とかジュースで取り返しましたが、朱成竹のタイミングの速さには最後まで対応することができませんでした。
 香港としては、この試合で決めたいところでしたが、4ゲーム目ジュースでのシャン・シャオナは「絶対に相手コートに入れる」という気持ちの入った鉄壁ブロックのショートで、李皓晴を3対1でくだして、ドイツは後半へと望みをつなぎました。
 4番は、ハン・インが常に主導権のあるラリー展開で、カットの変化に対応できない朱成竹には苦しい試合になりました。ハン・インはほとんど後陣に下がることなく、カットと攻撃をミックスしてくるので、強打にパワーの足りない朱成竹は苦しい展開を余儀なくされました。
 蘇彗音対ミッテルハムは、まるで練習をしているかのように毎球長いラリーが続く展開でしたが、徐々にミッテルハムの得意な距離に蘇彗音のボールが集められるようになっていきました。「球威があるとこれほどまでに有利に試合を運べるのか」と感じるくらい球威の重要さを感じた試合でした。2ゲーム目以降は中後陣で待つミッテルハムのフルスイングの回数が増えていき、一気に流れをつかんだミッテルハムが3-1で勝利して、ドイツチームが歓喜のメダル獲得を決めました。

中後陣からのパワーボールでメダルを確定させたミッテルハム


※時刻は日本時間


(まとめ=卓球レポート)

\この記事をシェアする/

Rankingランキング

■大会の人気記事

NEW ARTICLE新着記事

■大会の新着記事