元日本代表の経歴を持ち、その真摯な人柄から「卓球界の賢人」として名高い上田仁が、確かな実力と経験に裏打ちされた深く鋭い洞察力で世界卓球2023ダーバンの攻防を読み解く。
今回は世界卓球4日目の女子シングルス2回戦に出場した早田ひな、伊藤美誠、木原美悠の試合を解説してくれた。
▼女子シングルス2回戦
早田ひな 7,4,2,8 ピッコリン(イタリア)
ピッコリンはイタリアで4連覇中のエースで、早田に対して前半から思い切りのよい攻撃でプレッシャーをかけてきました。競り合う場面もありましたが、早田が要所で得点を渡さず、ストレートでしっかり勝ち切りました。
このラウンドでは、早田の方が世界ランキングも実績も高いのでピッコリンは思い切って向かってきました。プレッシャーを感じる場面もあったと思いますが、受け身にならずにプレーできていたところが早田は良かったですね。
3回戦は、残念ながら長﨑美柚との同士打ちになってしまいましたが、そうした組み合わせになってしまうのは強い国の選手同士では仕方のないことでもあります。お互いが勝負だとしっかり割り切って、良い試合を期待したいと思います。
▼女子シングルス2回戦
伊藤美誠 4,4,3,2 カミーユ・ルッツ(フランス)
伊藤は、フランス期待の若手・カミーユ・ルッツとの対戦でしたが、初戦同様、相手に本来の卓球をさせなかったですね。サービースの変化、表ソフトラバーでの変化、コース取りとあらゆる面で相手が対応できていませんでした。相手もなんとか伊藤を崩そうとサービースの変化を変えたり、出し位置を変えたりと打開策を考えていましたが、それでも全く伊藤選手が崩れませんでしたね。圧勝といって良い内容だったと思います。
選考会前からの怪我の影響が少し心配ですが、伊藤のプレーはキレているので、少しでも多く休息をとって次の試合もベストを尽くしてほしいですね。
▼女子シングルス2回戦
木原美悠 4,7,5,2 オラワン(タイ)
木原は、女子ダブルス、混合ダブルスと試合を重ねて会場に慣れた関係もあるのか、プレーの質が初戦よりもかなり上がっていました。相手のオラワンも丁寧なプレーの中に時折威力あるスマッシュを放ってきましたが、その攻撃も木原はうまくさばいていました。得意の巻き込み系サービスの配球も良く、相手に良いレシーブをさせずに終始ゲームを優勢に進めている印象でした。
特に良かったのは、バック面の表ソフトラバーの使い方。相手のボールが少しでも甘ければ弾き打ち、ツッツキが来た場合は早いタイミングで打つボールとゆっくりしたタイミングで打つボールとの緩急の使い分け、攻撃されたときは的確なブロックと実に多彩でした。オラワンは最後まで、この木原の表ソフトラバーを軸としたプレーにほんろうされていましたね。
木原はすごく伸び伸びプレーできていて良かったと思います。次にも期待したいですね。
※文中敬称略
(まとめ=卓球レポート)