元日本代表の経歴を持ち、その真摯な人柄から「卓球界の賢人」として名高い上田仁が、確かな実力と経験に裏打ちされた深く鋭い洞察力で世界卓球2023ダーバンの攻防を読み解く。
今回は世界卓球4日目の男子シングルス2回戦、張本智和対フレイタス(ポルトガル)の試合を解説してくれた。
▼男子シングルス2回戦
張本智和 10,8,9,10 フレイタス(ポルトガル)
張本とフレイタスは過去に何度も対戦があり、最近では張本に分がありました。今回も結果的に張本が難敵のフレイタスをストレートで下しましたが、鍵になっていたのはサービスです。各ゲームとも競り合いになりましたが、ゲームを重ねてもなお張本のサービスはよく効いており、その組み立てが抜群でしたね。
張本は序盤に、強烈に切った下回転サービスでフレイタスのミスを誘いました。これが伏線になって中盤以降、ナックル(無回転)性サービスや横回転系サービスが相乗効果でよく効いていました。
一方のフレイタスは張本のサービスとチキータに細心の注意を払ってプレーしていた印象です。持ち前のラリー力で各ゲームとも食らいつきましたが、ゲームが終盤に進むにつれて張本のサービスとチキータの精度が増していったため、最後の1点、2点の差がなかなか縮まりませんでしたね。
今大会の張本は、これまでの世界卓球に比べると、とても充実したプレーをしていると思います。ここから先はさらなる強敵が続きますが、一つずつ目の前の試合に集中して頑張ってもらいたいと思います。
※文中敬称略
(まとめ=卓球レポート)