元日本代表の経歴を持ち、その真摯な人柄から「卓球界の賢人」として名高い上田仁が、確かな実力と経験に裏打ちされた深く鋭い洞察力で世界卓球2023ダーバンの攻防を読み解く。
今回は世界卓球6日目に行われた張本智和対ボボチカ(イタリア)の男子シングルス4回戦を解説してくれた。
▼男子シングルス4回戦
張本智和 5,10,10,10 ボボチカ(イタリア)
張本は、世界卓球2017デュッセルドルフで史上最年少の13歳でベスト8入りして以来となるベスト8入りをかけて、イタリアのベテラン・ボボチカと対戦しました。
ラブオールから集中していた張本は、いきなり6-0とスタートダッシュを決めます。今大会好調のサービスもよく効いて、第1ゲームをあっさり先取しました。
続く第2ゲームは、ボボチカがサービスをいろいろ組み替えて攻撃を仕掛けてきてジュースまでもつれましたが、競った場面でも張本の攻守の精度がとても良かったですね。張本はゲームポイントを握ってから初めてYGサービース(逆横回転系サービス)を使ってこのゲームを取りましたが、このあたりの頭もさえていました。
第3ゲームも張本が充実したプレーで主導権を握ります。張本の質の高い攻守になかなか突破口を見出せないボボチカは1-3とされたところでたまらずタイムアウトを取りました。ここから攻撃のミスが少なくなったボボチカが連続得点を重ね、ジュースにもつれましたが最後はまたしても張本のサービスが効いて勝利に王手をかけます。
第4ゲームも張本が前半に引き離してボボチカが追い付くという展開でまたもジュースにもつれますが、最後は張本がしっかり得点を重ねて勝利を収めました。
結果的にストレート勝ちでしたが、この試合の張本は、第2〜4ゲームとも序盤リードしてから追いつかれるパターンでした。次戦でそうした展開になりそうな場合は、途中で間合いを取るなどして時間をうまく使い、連続失点を防げるような工夫をしたいですね。
次はメダルをかけて強敵の梁靖崑(中国)と対戦です。張本はこれまで1ゲームも落とさない内容で勝ち上がっており、攻守のバランスがとにかく良いですが、梁靖崑に対しては守りだけにならないことです。守りだけでなく、攻めも必ず意識すること。加えて、今はフォアハンドが強くなっているので、カウンターなどフォアハンドで自分から狙っていく機会を増やせば、必ず勝機が巡ってくると思うので、ぜひとも頑張ってほしいですね。
※文中敬称略
(まとめ=卓球レポート)