5月20〜28日までダーバン(南アフリカ)の国際展示場ICCダーバンで世界卓球2023ダーバンが開催される。
大会6日目の5月25日は、男女シングルス4回戦、男女ダブルス準々決勝、混合ダブルス準決勝が行われた。
日本勢男子はシングルスで張本智和が完封勝ちしてベスト8入りを決めた。
▼男子シングルス4回戦(日本選手関係)
張本智和 5,10,10,10 ボボチカ(イタリア)
日本男子で唯一勝ち残っている第4シードの張本は、前日に続いてベテラン勢との対戦となった。4回戦のボボチカ(イタリア)は36歳で、フランスの主軸ゴズィー、アルナ(ナイジェリア)に競り勝ったロブレス(スペイン)を下した相手。格下とはいえ、ここまで勝ち上がっている選手だけに油断できない。
試合は立ち上がりから張本がサービスと台上プレーで先手を取り、両ハンドドライブを左右のクロスに決めて優位に立って6対1、8対3とリードを広げて第1ゲームを先行した。第2ゲームはボボチカに台の近くからそつのない連続ドライブを決められて2対4とされる。攻め込まれても慌てない張本は、一歩下がって手堅いブロックでボボチカのミスを誘ってひっくり返し、8対5と決めにかかる。しかし、張本にらしくない凡ミスが続いてジュースに追いつかれた。ここで張本はボボチカの連続ドライブをしっかり跳ね返し、2ゲームを連取した。
続く第3ゲームは中盤まで攻めるボボチカ、守る張本という展開で6対6と競り合うが、攻守の精度が高い張本が3本連取して10対7とリードした。ここからボボチカに捨て身のフォアハンドドライブを決められてまたもジュースに。流れを渡したくない張本、ここで必殺のサービスエースを決めると、ボボチカの甘いサービスをフォアハンドでしっかりかけて、このゲームも12対10で連取した。
ゲームカウント3対0とリードしているが、決して楽とは言えない展開。7対7の競り合いから、バックに集まる張本の送球をボボチカに待たれて、打点の高いバックハンドからのフォアハンドというコンビネーション攻撃を喰らい、8対10とゲームポイントを奪われた。苦しい展開の張本だが、変化サービスからの台上プレーでなんとか2ポイント連取し、3ゲーム続いてジュースとなった。ここで張本はブロックからのカウンターバックハンドをストレートに決めてマッチポイントを握ると、最後は連続ブロックでボボチカの打ちミスを誘って12対10でものにした。張本は各ゲームで苦戦しながらも、しっかり締めて完封勝利を収めた。準々決勝の相手は、世界卓球で2大会連続3位の強敵・梁靖崑(中国)に決まった。
2017年デュッセルドルフ大会以来、3大会ぶりの準々決勝進出を決めた張本は「今日はシングルス4試合の中で一番満足していない。ヨーロッパ選手特有のクセに苦しんだところがあるものの、各ゲーム競り合いながら4対0で勝てた。常に自分がやりたいようにプレーして勝てるわけではない。どんな状況もあり得るのが世界卓球で、昨日はこんなに楽に勝てるとは思わなかったし、今日はこんなに苦しむとは思わなかった。想定外というものはなく、相手がどれだけアグレッシブなプレーをしても受け止められる準備をしていきたい。まだ(シングルスの)メダルを取っていないので、明日しっかり勝ちたい。」と試合を振り返り、日本男子44年ぶりのシングルスでのメダル獲得への意欲を語った。
男子シングルスは4回戦を終え、ベスト8が決定した。
大会2連覇を目指す世界チャンピオンの樊振東(中国)は、ヨーロッパチャンピオンのダン・チウ(ドイツ)を迎え撃つ。第1ゲームはダン・チウが前に位置取って樊振東を中陣に追いやってジュースにもつれたが、台上で先手を取る形で振り切って、このゲームを競り勝った。すると樊振東はダン・チウの裏面攻守の距離感をつかみ、中陣からフルスイングのドライブを連発。そのまま3ゲームを連取してストレート勝ちを収めた。
初優勝を狙う王楚欽(中国)。前回は4回戦で樊振東と対戦するという不運な組み合わせで上位はならなかったが、今回は実績を積み重ねて第2シードを勝ち取った。ここまでピッチフォード(イングランド)、フランチスカ(ドイツ)というヨーロッパの実力者を連破して勝ち上がってきたジェラルド(ポルトガル)に対しても、まったく隙を見せなかった。切れのよいジェラルドのフォアハンドドライブを高い打球点のブロックで揺さぶり、甘いボールを一撃のフォアハンドで左右に抜き去り、完封勝ちで初のベスト8入りを決めた。
こちらも初優勝をもくろむ前回3位の梁靖崑(中国)は、スロベニアの強豪ヨルジッチと打撃戦を展開。梁靖崑は上回転のラリーにめっぽう強いヨルジッチの一発強打に苦しんで2ゲームを失うが、ブロックの長さや球速を変えながらヨルジッチの打ちミスを誘い、4対2で辛くも逃げ切った。
前回2021年ヒューストン大会は出場しなかった馬龍(中国)。卓球界に君臨する中国にあって、男子シングルスを4度制した選手はいない。この歴史的偉業に挑む馬龍は、豪打が持ち味の林鐘勳(韓国)を自由に攻めさせず、点差を付けてストレート勝ち。
中国勢の5人目は林高遠(中国)。ここまで期待されながらも、世界卓球では2大会続けて準々決勝で同士討ちで敗れている。サウスポー対決となった林昀儒(中華台北)との対戦は、林昀儒のチキータからの攻めに第1ゲームを先行される苦しい展開。しかし、持ち前の粘り強い攻守で各ゲームとも競り合いを制して、東京オリンピックベスト4の強敵を4対1で下した。
上位シードのカルデラーノ(ブラジル)が1回戦で敗れたブロックから勝ち上がったリンド(デンマーク)は、2017年ブダペスト大会ベスト8の張禹珍(韓国)に挑んだ。最新の世界ランキング180位で、ここまでノーマークの存在と言えるリンドだが、攻めさせると怖い張禹珍に先手を取らせず、圧巻のプレーで快勝し、本人も驚きの準々決勝進出を果たした。
昨日の3回戦で前回準優勝のモーレゴード(スウェーデン)を下したアサール(エジプト)。アフリカの期待を背負ってプッツァー(クロアチア)戦に挑んだ。昨日に続いて持ち前の低い姿勢から繰り出す攻守にミスがなく、オフチャロフ(ドイツ)に競り勝ったプッツァーを圧倒。1ゲームも与えない完勝で、見事にベスト8入りを決めた。
▼男子シングルス4回戦(組み合わせ順に掲載)
樊振東(中国) 10,7,8,5 ダン・チウ(ドイツ)
O.アサール(エジプト) 6,9,10,8 プッツァー(クロアチア)
梁靖崑(中国) 10,5,-9,6,-7,7 ヨルジッチ(スロベニア)
張本智和(日本) 5,10,10,10 ボボチカ(イタリア)
馬龍(中国) 7,5,3,6 林鐘勳(韓国)
林高遠(中国) -7,7,9,9,8 林昀儒(中華台北)
リンド(デンマーク) 7,-7,9,5,6 張禹珍(韓国)
王楚欽(中国) 4,4,4,10 ジェラルド(ポルトガル)
(まとめ=卓球レポート)