5月20〜28日までダーバン(南アフリカ)の国際展示場ICCダーバンで世界卓球2023ダーバンが開催される。
大会7日目の5月26日は、男女シングルス準々決勝、男女ダブルス準決勝、混合ダブルス決勝が行われた。
女子シングルスは準々決勝が行われ、早田ひなが王芸迪(中国)を破り、世界卓球2017デュッセルドルフの平野美宇以来、日本勢としての女子シングルスメダルを決めた。伊藤美誠は陳夢に敗れベスト8に終わった。
▼女子シングルス準々決勝
孫穎莎(中国) 6,8,6,5 ハン・イン(ドイツ)
早田ひな(日本) -4,3,9,-6,9,-8,19 王芸迪(中国)
陳夢(中国) 7,5,5,5 伊藤美誠(日本)
陳幸同(中国) 5,8,8,9 王曼昱(中国)
今大会一の大激戦と言って間違いないだろう。
早田のメダルをかけた1戦の相手は、前日の4回戦で平野美宇をストレートで破って勢いに乗る王芸迪。世界卓球2021ヒューストンでも4回戦で対戦し、この時は2対4で敗れている因縁の相手だ。そして、この試合の直前に行われた伊藤対陳夢に伊藤が敗れたことで、残る日本勢は早田1人となっていた。
序盤から高速ラリーが続く打撃戦となったが、王芸迪は早田の強力なフォアハンドを封じようとバック側にボールを集める。これに対して早田は、回り込んでフォアハンドを使わずに、あえてバックハンドで対応。一進一退の攻防で2対2となるが、お互いのサービス・レシーブにも慣れてきた中盤以降は、両者がリスクをかけて大きな戦術転換はせずに、定石を外さない戦術でがっぷり四つに組み合う。
第5ゲームを取って、ゲームカウント3対2と先に王手をかけた早田だが、第6ゲーム終盤ではやや消極的になったか、このゲームを逆転で落とす。最終ゲームは早田がスタートダッシュで5-2とするが、王芸迪は8-8と追いすがる。逆転した王芸迪が10-8と先にマッチポイントを握るが、ここから早田の驚異的なメンタルの強さを発揮し、サービス2本で追いつきジュースに。ジュースになると王芸迪がサービスで1本先に、次の1本は早田がサービスで取り返す形を繰り返し、早田は14-14まで6本のマッチポイントをしのぐ。早田のエッジインで15-14と初めてマッチポイントを握り、ここで終わるかに思われたが、王芸迪の開き直ったかのような両ハンドの連打で再びジュースに。先にサービスを持っている王芸迪が有利かと思われたが、この後も早田は3度のマッチポイントをしのぎ、20-19。最後は早田のサービスから3球目、5球目をバックハンドで相手のフォア側に連続攻撃を決めて、1時間15分を超える熱戦に幕を下ろした。
試合後、早田は「お互いにすべてを出し尽くして、コース取りもわかっている状態でお互いにどう打つかの勝負だった。長かったですけど、あの舞台を経験できてすごくうれしかった」と激戦を振り返った。
日本勢の女子シングルスのメダルは、世界卓球2017デュッセルドルフで銅メダルを獲得した平野美宇以来6年ぶり。準決勝で孫穎莎を破り決勝進出を決めれば、1969年ミュンヘン大会で優勝した小和田敏子以来、54年ぶりの快挙となる。
一方、ベスト8に勝ち残った伊藤は陳夢と対戦。大舞台でも度々中国勢から勝ち星を挙げてきた伊藤だが、唯一勝ったことがないのがこの陳夢。ここまでの好調ぶりから初白星を期待されていた伊藤だが、回転量の多いドライブで異質型の伊藤を崩す陳夢に対して打開策を見いだそうと粘り強くプレーしたが、あえなくストレート負け。
ここまでの勝ち上がりは4試合ともストレート勝ちと中国勢以外には敵なしといっていい伊藤。試合後のコメントでは「(けがのため)練習もほとんどやっていなくて、こっちに来ているので、動けること、卓球ができることの喜びを感じながら試合をした」と涙ながらに語ったが、万全ではない中で世界ベスト8という結果驚くほかない。
だが、その半面、今大会の結果は、やはり万全ではなくては中国選手に立ち向かうことができないということの証左にもなったとも言える。また、インスピレーションあふれるプレーで中国勢を脅かす伊藤の姿を大舞台で見せてほしい。
大会を通じて、好調とは言いがたい印象の前回王者の王曼昱は、準々決勝で陳幸同との同士打ちとなった。4回戦では鄭怡静(中華台北)を大接戦の末に破った陳幸同は、初のメダルをかけてチャンピオンに挑んだ。
試合は終始、前陣で攻める陳幸同と台から少し距離を取ってラリーに応じる王曼昱という展開で進んだ。王曼昱は時折、持ち前の長身を生かしたダイナミックなフォアハンドドライブで決定打を放つ場面もあったが、ラリーの大半は前陣で速いピッチで攻める陳幸同の鋭いボールへの対応に追われ、主導権を握れず。陳幸同は的確なミドル攻めからの両サイドというパターンを軸に、どこか冴えない表情の王曼昱を3対0と追い詰める。
最終ゲームも陳幸同リードで展開するが、2-5のタイムアウトから王曼昱が6-6、7-7と追いすがる。しかし、ラリー戦で優位に立つ陳幸同は勝利を確信しているかのように落ち着いてプレー。最後は王曼昱がチキータレシーブからの4球目攻撃のバックハンドがオーバーして、陳幸同初めてのメダル獲得が決まった。
4月に行われたWTTチャンピオンズ マカオでは中国勢を3連破して優勝していただけに、2連覇も濃厚かと思われた王曼昱だったが、持ち前のダイナミックなプレーを大会終盤で見られないのは残念だ。
第1シードの孫穎莎は、ここまで1ゲームも落とさずに勝ち上がってきたカット主戦型のハン・インと対戦。直近のWTTチャンピオンズ マカオの2回戦では、ハン・インが2ゲームを先行し、孫穎莎をおびやかしたが、基本的にはカット打ちが安定しており、ハン・インのカットを強打の威力で打ち抜ける孫穎莎が圧倒的に有利という味方が多勢を占めるだろう。
そうした予想の通り、鋭角に打ち分けられる孫穎莎のドライブを守備力に定評のあるハン・インのラケットが届かずに、エースで抜かれる場面が何度も見られた。ハン・インの攻撃にも慌てるなく、ブロックで対応し、カット攻略のお手本のようなプレーを見せた孫穎莎がストレート勝ちで準決勝進出を決めた。
(まとめ=卓球レポート)