3連覇の偉業を手中に収めかけていながらも、張本智和(智和企画)の奇跡的な粘り強さの前に屈してしまった戸上隼輔(明治大)。決勝では敗れたものの、その戦いぶりは、彼の強さと成長を多くの卓球ファンに目に焼き付けたことだろう。
ここでは決勝後の戸上のコメントを紹介しよう。
--決勝を振り返って、いかがでしたか?
戸上 そうですね、8本のマッチポイントを取っていながら、冷静さが欠けていて、自分の狙いが定まらず、そのままプレーしてしまったのが敗因だったのかなと......。
自分のスタイルは通用したんですけど、あと1本という時に思い切っていけなかったのは非常に悔しいです。やっぱり勝ちたい気持ちが先走ってしまって、力んでしまったり、どうやって得点をしていたかを振り返った時に、思い出せずにそのまま試合に入ってしまいました。自分を客観的に見ることができませんでした。
今年はオリンピックイヤーで特別な年ですし、これから半年後にオリンピックがある中で、こうして全日本の決勝で張本選手と対戦できたことは、僕としては一生忘れない試合になりましたし、この悔しい気持ちを糧に、次の世界卓球、オリンピックのメダルを目指して頑張って行きたいという思いです。
--マッチポイントを先に取りながらもしのがれて、気持ち的に優位に立てないときはどんな心理状態でしたか?
戸上 選択肢がたくさんある中で、頭の中でシミュレーションした時にどうしてもうまくいくイメージが浮かばずに、それで安易なサービス・レシーブをしてしまって決めきれませんでした。
--どういった思考からそういった気持ちになってしまったのですか?
戸上 う〜ん......。ゲームの終盤になるにつれて、緊張とプレッシャーで、気持ち悪さが出てきてしまって、あと1本という時に自分の気持ちを抑えようとしてプレーをおろそかにしたというところがありました。
--最終ゲーム、13-13になった時に張本選手が会場をあおるパフォーマンスがありましたが、気になりませんでしたか?
戸上 うれしかったですね。張本選手がどういう意図でそうしたのかは分かりませんが、彼も足がつっているような仕草をしていた中で、あの時は気持ち悪さが勝って、声を出したくても声が出ず、あのパフォーマンスのおかげでちょっと気持ちが前向きにプレーに集中できたので、どういう意図かは分かりませんが、「盛り上げてくれてありがとう」という気持ちはありました。
--「決勝で何度も戦いたい」「これからも競い合っていきたい」と張本選手が言っていました。
戸上 張本選手とは日本代表の1番手、2番手として、日本を背負ってこれから戦っていきたいという思いは僕もあります。張本選手に認めてもらって、半年後のパリ五輪に向けて切磋琢磨していけたらいいなと思っています。
--選考レースの2年間はどうでしたか?
戸上 一言で言うなら......、重圧に押しつぶされそうな2年間でした。やっぱりたくさんの方が期待してくれているからこそ、結果を求められる機会が増えたり、大きな大会を経験させてもらう機会も増えて結果が出ないときもありました。そういう時は辛いなって思いましたけど、自分が日本を背負って、日本を引っ張ると宣言したからには、その言葉の責任もあると思っていたので、この2年間は本当に苦しかったです。でも、成長も実感できたり、世界ランキングや、トップ選手に勝つ機会も増えてきたので、重圧というのは、これからの半年の方がつらいというのは、自分の中では覚悟しています。
まずは、この2年間を戦い抜いた自分をほめたいです。今後の方はキツいと思うので、世界卓球前に、もう一度気持ちを引き締めて頑張りたいです。
--決勝の張本選手のプレーはどうでしたか?
戸上 前と比べて攻める意識が高くなっていて、試合を重ねるごとに(自分の)フォアハンドのラリーでの得点が減ってきて、自分の長所がなかなか通用しなくなってきました。試合をするたびに強くなっているな、もっともっと強くなるんだろうなと思ったので、自分も離されないようにやっていきたいと思います。
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