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2024年全日本卓球 男子シングルス優勝 張本智和
「やっと胸を張って日本のエースと言える価値ある優勝」

 
 14歳で初優勝を果たした時には、水谷のV10を超える逸材が現れたと信じた人も少なくなかったのではないだろうか。
 もちろん、卓球選手にとって全日本が全てではないが、張本智和(智和企画)にとって、全日本のタイトルが取れないことは、彼の言葉を借りれば、常に「しがらみ」として張本を苛(さいな)んでいた。
 この優勝後の記者会見からは、6年間の桎梏(しっこく)から解き放たれた張本の解放感を読者の皆さんにも感じてもらえるのではないだろうか。

--優勝を決めて今の気持ちは?
張本 少し時間がたって、実感は出てきましたが、2度目の優勝、ここまで本当に長かったなと、喜びよりもそっちの方が強いと思います。
 
--厳しかった昨年1年間を乗り越えた感想をお願いします。
張本 昨年は国内、国際大会ともにずっと思うような結果ではなく、戸上選手(戸上隼輔/明治大)に負けたり海外ではなかなか上位にいけなかったり、悔しい時期が長かったですけど、それも含めて自分にとって良い経験ですし、良い経験も悪い経験も全て自分に返ってくるので、それを生かせるかどうかは普段の自分の過ごし方次第だと思っています。試合の結果は思わしくありませんでしたが、試合以外の時間は大切に過ごせた1年だったと思います。
 
--今日勝ち切れた要因はどこにあったと思いますか?
張本 1対3になった時点で去年と同じ展開になったと思いましたが、去年よりも(戸上選手を)ライバルだと認識してたからこそ焦りもなかったですし、去年は自分の中で自分の方が勝てるんじゃないかとか優位に立てるんじゃないかという思いがあったかもしれないですけど、今年は本当にお互い認め合ってガチンコで戦えると思って、そういった意味で3ゲーム取られたなら取り返せると信じて一球一球粘り強く戦いました。
 
--全日本と国際大会の両立は難しかったですか?
張本 大会前はこの全日本の期間中に開催されているWTTに出ようかと思っていたりもしました。世界ランキングのポイントは大事ですし、全日本で優勝してもポイントは入らないですけど、日本で1位を決める全日本の意味というのは改めてすごいなと思って再確認しました。
 全日本を取れなかったかったとしてもしかたありませんが、今年は自分が取る番だったのかなと。あれだけ苦しい試合で、マッチポイントを8回も取られて、足もつっていたのに勝てたというのは、本当に神様が勝たせてくれたとしか思えませんでした。
 
--よいスタートを切れたと思いますが、どのような1年にしたいですか?
張本 全日本が終わったので、もうビッグゲームは世界卓球とオリンピックしかありません。やっぱり、オリンピックですね。3年前のリベンジですし、なんとしても3種目でメダルを取る、それを達成するのが次の目標です。

--国際大会に向けての目標は?
張本 これで選考会も終わりですし、全日本もまた来年なので、いよいよこの瞬間から100%世界に目を向けられたらいいなという感じている。今まで(国内と海外が)半分半分で世界の大会で頑張ってきた中で、海外に100%の力を割けるということはもっと期待していいと思っています。
 明日からまたみんな同じスタートなので、優勝したけど、一層気を引き締めて頑張りたいと思っています。
 
--6年ぶりの優勝となりましたが、復活と言っていいと思いますか?
張本 この6年間、5年間、全然ダメだったかと言われると、2位になったり、ランキング落ちはしていないし、世界ランキングは国内で一番高かったし、なんとも微妙な感じです。いっそうのこともっとひどい成績でもよかった(笑)
 でもやっぱり、タイトルを取るというのはすごいことで、全日本前にも言ったように、2位以下は全て同じ。1点差で負けても、2位も3位も1位ではないので、そういう意味では6年ぶりに優勝できた、勝ち切れたというのは、復活といってもいいと思います。

--妹の張本美和選手の準優勝についてはどう感じていますか?
張本 自分の準備で決勝は見てないですが、得点を聞いたら1ゲーム目9-5から負けるということは、まだ早田選手の方が強いですし、今後は9-5で取られても2ゲーム目から立て直せばいいし、彼女はまだ15歳なので、2位ですけど喜んでいいと思います。オリンピックの3枠目も兄として、一選手としても妹がふさわしいと思います。
 
--張本選手は「終わった」と言っていましたが、これが始まりだと思うんですよ。この全日本が終わって何かをつかんだと思いますか?
張本 それは明確に分かっていて、戸上選手に負けてもエース、エースと言われつづけて、確かに世界ランキングも僕が一番高いし、海外に対しても自分が一番自信があるのも分かりますが、でもやっぱり全日本を取らなければエースってどうなのかな?と、ぎこちない感じがあったが、戸上選手に打ち勝って優勝できて、これでようやく文句なしで胸を張ってエースと言える気がしています。
 
--全日本は魔物が住んでいるといわれていますが、なかなか優勝が果たせなかった中で全日本の難しさは?
張本 先週の戸上選手(WTTコンテンダードーハ)と今日の戸上選手ではパフォーマンスが100%以上違いましたし、他の選手も普段以上のパフォーマンスができたと思います。6年前の僕がそうだったように、水谷選手(水谷隼/木下グループ)に憶することなく攻め続けた。それが今、逆の立場でも優勝ができたということは、意味合いが違うと思うので、魔物がいるということは反対に神様もいるということで、今日は戸上選手にとっては魔物だったかもしれないけど、僕には味方がいた。来年も今年のような試合になるかもしれないし、逆に女子の決勝のようにすっと行くかもしれないし、そこはやってみないと分からないけど、やることは準備することだけ。試合は答え合わせするだけで、試合だからといってできなかったことが急にできるようになるわけではないので。
 
--優勝後、戸上選手にどのように声をかけたのですか?
張本 「おめでとう」と言われて「1位も2位も僕らの間には存在しない。たったの2点差、1位と2位でも実力の差はない」と言いました。試合をすれば、どちらかが勝って、どちらかが負けて、引き分けて終わる競技ではないので、結果は出ますが、正真正銘のライバルだと今日、確信しました。最後もしかしたら戸上選手の1本が入っていたら違う結果になっていたかもしれないし、明日試合をすればまた違う結果になるし、4対3、4対0といろいろな結果はありますが、次の試合で4対0で僕たちの勝敗が決まっても、ライバル関係は変わらない。それくらい大事な存在だと思います。
 
--6年前と今回で優勝の感じ方は違いますか?
張本 あの時はただがむしゃらにボールだけを見て打っていた少年が、6年間、いろんなしがらみに巻き付かれて、試合をしてるだけなのにいろんなことが気になったり、声援が苦しいと感じるときがあったり、プラスのものをプラスと感じられない時期もありました。応援してもらったり、サポートしてもらったり、本当にありがたいんですが、疑心暗鬼になったり、自分も信じられない時期があって、だから、全日本も取れなかった。世界で言えば、僕が一番強いというのが分かっていた中で、ギクシャクしたような、自分が1番なのか2番なのかという時期が長かったので、この全日本を取れたことで、しがらみが全てなくなって、やっと自分でも胸を張って日本のエースと言えるようになりました。
 そういう意味では、信じられないというか、あの時の喜びよりも何倍も、冗談抜きで100倍くらい価値のある優勝だと思っています。

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詳しい試合の結果は日本卓球協会大会公式サイトでご確認ください。
全日本卓球:
https://www.japantabletennis.com/AJ/result2023/

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