ドイツ・ブンデスリーガ2023-2024男子1部プレーオフ準決勝の第3戦が5月26日、ボルシア・デュッセルドルフの本拠地で開かれた。
2勝したチームが決勝に進む準決勝はこれが最終戦。互いに1勝1敗のバート・ケーニヒスホーフェンとボルシア・デュッセルドルフの大一番は常勝軍団のデュッセルドルフがプレーオフ初進出のケーニヒスホーフェンをマッチカウント3対0で退け、決勝行きの切符をつかんだ。
強豪デュッセルドルフがホームで完勝
ケーニヒスホーフェンはこの日、1番にフィリップ・ゼリコ、2番と4番に大黒柱のバスティアン・シュテーガー、3番に上田仁を起用した。
1番ゼリコは、デュッセルドルフの若きエースであるダン・チウと対戦。得意のサービスからの展開で先手を取ろうとしたが、ラリーでダン・チウの強烈なミドル攻撃に遭いゲームカウント1-3で敗退。
2番のシュテーガーもアントン・ケルベリと接戦を繰り広げ、ゲームカウント1-2で迎えた第4ゲームで大量リードを奪ったが、ミスの少ないケルベリに逆転を許し1-3で敗れた。
2点を献上し、後がないケーニヒスホーフェンの3番上田。相手は第1戦のホームマッチで勝利したティモ・ボルだ。
第1ゲームはボルに先行されたが何とか着いていき9-11まで迫った。だが第2ゲームはサービスミスも出てボルのペースになり5-11で落とした上田は、第3ゲームに入っても態勢を立て直せず0-3の場面でタイムアウト。
それでも流れを引き寄せることができず、このゲームも5-11で奪われチームの準決勝敗退が決まった。
「自分の気負いすぎ。力が入ってミスが多すぎた」と肩を落とす上田。
第1、2戦の2点起用から最終戦では3番を任され、「結局、このオーダーって3番で絶対に勝たなきゃいけない。別にそんなこと気にしなくていいのに、『勝つんだ』というよりも『勝たなきゃ』っていう気持ちがどうしても強くなった」とプレッシャーの大きさを口にした。
力が入るのも無理はない。自身はブンデスリーガ挑戦1年目でプレーオフの大舞台に立ち、しかも相手は強豪デュッセルドルフ。
ケーニヒスホーフェンにとってはリーグ1部昇格7シーズン目にして巡ってきたビッグチャンス。上田はその第1戦で2点を挙げチームに劇的勝利をもたらし、自身もチームも決勝進出への期待は膨らんだ。
3日前の夜に行われた第2戦では、2番でケルベリにゲームカウント1-3で敗れ、負けたことよりも思い切ったプレーができなかったことが悔しくて眠れなかったという。
「今シーズン、ECL(ヨーロッパチャンピオンズリーグ)でウィーナー・ノイシュタットから始まって、チーム初のファイナル4に進出して、ケーニヒスホーフェンでも正直、自分のプレーが全くできないという試合は1回もなかった。すごく順調なシーズンだったのに最後の最後に崩れてしまった。今年1年間、崩れることがなかったから、崩れた時に必要以上に慌ててしまいました。すごい悔しいです」
板垣孝司監督も悔しさを隠せない。
「卓球の指導者になって28年になるけど、試合で負けて泣いたのは初めて。自分の実力不足を感じます。プレーオフの準決勝は同じチームと1週間で3試合もやるので、どの試合も勝敗はフィフティ・フィフティ。やってみないと分からないというオーダーを僕が組んで、選手を勝たせてあげられなかった。ティモはプレッシャーがない時は無類の強さ。今日は(マッチカウント0対2で回ってきて)上田が崩れたというより試合の流れだったと思います」
あと一歩のところでプレーオフ決勝進出はならなかった。しかし、中堅チームのケーニヒスホーフェンの快進撃と上田の活躍は間違いなく来シーズンにつながる試金石。
目の肥えた地元サポーターたちも上田の実力を認め、「ジン・ウエダ」は今やチームに欠かせない存在となっている。
上田とケーニヒスホーフェンはすでに1年延長の契約で合意している。ヨーロッパ挑戦2年目は初のフルシーズン参戦となり、上田はブンデスリーガで真価を試されることとなるが、まずは彼の欧州挑戦1年目の健闘をたたえ「お疲れさま」と言いたい。
もう一つの準決勝はリーグ1位のFCザールブリュッケンが4位のSVヴェルダー・ブレーメンに第1戦、2戦ともに勝って決勝進出。ザールブリュッケンからはカット型の村松雄斗(La.VIES)が出場した。
ブンデスリーガ2023/2024
プレーオフ準決勝第3戦
デュッセルドルフ 3-0 ケーニヒスホーフェン
○ダン・チウ 7,-10,4,7 ゼリコ
○ケルベリ 7,-7,10,9 シュテーガー
○ボル 9,5,5 上田
ダン・チウ - シュテーガー
ボル/ケルベリ - 上田/ゼリコ
(文/写真=高樹ミナ、写真=Ruoxi Qiu)