けがを抱えながらも、急成長の張本美和(木下グループ)を決勝でストレートで破り、3連覇の偉業を達成した早田ひな(日本生命)。
ここでは今大会の勝因、けがとの向き合い方、今後の抱負などについても語った優勝後の記者会見の様子を紹介しよう。
--優勝と3連覇を決めた今の心境を聞かせてください。
早田 素直にうれしいですし、今回で4回優勝して昨年の優勝とはまた違った感じで、今年はすごい軽い気持ちでこの全日本に入ってきてたので、絶対優勝するぞっていう自信はもちろん持てなかったですし、だけどここまで来ることができて最後は全てを出し切ろうと思ったので、優勝したことよりも全て出し切れたことのうれしさが勝っているかなと思います。
--今の左腕の状態はいかがですか?
早田 今日は2試合で、準決勝と決勝と質が高い選手と試合することになるので結構怖い部分はありましたが、準決勝が終わってから痛みがありながらプレーしていたところもあったので、そこはこのレベルの選手と常に世界で戦っていかなければいけないと思うので、本当に時間が解決してくれると思いますし、徐々に慣れていけばそれでいいかなと思います。
--今後の意気込みや抱負を教えてもらってもいいですか?
早田 今回は本当に自分の中で強さというよりもやっぱりうまさで勝たないといけないですし、頭がついていかなかったら負けだと思っていたので、去年よりもそういったところの考える部分というのはすごく細かったかなと思いますし、この半年1年、腕が安定した状態に戻ってくるまではどっちかというと強さよりもそういった部分の方が重要になってくると思うので、そういったところをうまく逆に言うと強さが出せない分うまさで勝っていく、そこの精度を上げていくっていうところの期間が大事になるかなというのは思うので、そういった期間にしていきたいなと思います。
--去年の優勝とまた違うとお話がありましたけれども、パリの戦いを終えて今日の優勝というのはどんな意味があると思いますか?
早田 優勝できるとは正直思ってなかったですし、決勝も4対0で勝てるというのは思ってなかったんですけど、でも、やっぱりけがしているからこそ本当に細かいところだったり、私生活からもそうですし、本当にいろんなところの細かい調整だったり、配慮というのはやっぱり昔よりもうまくなったなと思いますし、今回も腕のことを考えて練習を本当に短くして試合に入ったりとか。
それでも自信はないけど、そうやってやっていかないとやっぱり体に負担になってくるので、そういったところのいろんな自分との向き合い方というのが変わってきたかなと思っています。
--まだ万全ではないという中でただそのけがの影響であまり見られなかったチキータも、この大会から要所要所、本当にいいところで決まっていたと思ったんですが、感触としてはいかがでしょう?
早田 それも本当に使い方、やっぱり回数をこなせない分どこで使うかというところが勝負になってくると思ってたので、本当にその使い方が今日の準決勝、決勝もすごく良かったなと思いますし、これからもそういった試合というのが続いていって、逆に言うと、昨日できてたことが今日はできなかったんですけど、それを受け入れてじゃあ違う戦術で行こうっていう、そういったことがこの半年だったり、1年だったり大事になってくるかなと思うので、本当に自分と毎日向き合いながら頑張っていきたいなと思います。
--あらためて早田選手にとってのチキータそのこだわりはどんなところにあるんですか?
早田 やっぱりうまくいけばレシーブエースを取れる技術でもありますし、でも、今の現代卓球でいくと、レシーブでチキータを狙うっていうところも軸になってきているので、本当に使い方次第だと思うんですけど、やっぱりそれをどこでどのタイミングでどの回転で相手のどこに狙うのかっていう、本当にそういったいろんなことを考えて使うっていうことがすごく重要かなと思います。でも、これはチキータに限らず、全ての技術で大事だと思います。
--世界卓球代表という意識はあまりありませんでしたか?
早田 そうですね。今回は世界ランクの条件っていうところもあったので、全日本が誰かが被ったら世界ランキングでっていうところもあったので、ちょっと他の人の力を借りながらって言ったらあれですけど、ということも考えてたので、自分はそんなにあんまり世界選手権にかかってるっていうのもそうですし、3連覇がかかってるっていうことも全然意識していなかったので、さっき、放送の会場内とここで言われては「ああ、確かに」ってなりました。
--昨日の試合で「けがをしたからこそもっと強くなれるのではないか」とおっしゃっていましたが、今日の試合大藤沙月選手(ミキハウス)は自分のパワーボールが1本しか出せなかったと振り返っていて、今日も張本選手の良さを出させなかったと思いますが、その辺りを振り返っていかがですか?
早田 先ほども言ったように毎日感覚が変わってしまうので、昨日できてたことが今日できなくなってでもそこに自分自身がついていかないと、それも自分の中で矛盾が起きてしまうと試合どうこうではなくなってしまうので、それは今後もすごく大事だなと思いますし、相手も相手で私の強みが両ハンドの強さだと感じていると思いますが、そこだけでは点数は取れないですし、腕のことを考えても他の台上やサービス・レシーブなど本当に細かいところも重要だと思います。
--頭を使うという意味で、試合中、これまで以上にコース取りや回転を意識されていると思うんですけど、かなり疲れるものですか?
早田 そうですね。今回久々に4日間で6試合して、やっぱり試合が久々で半年ぶりだったので、頭が疲れて体も疲れて、あれこんなに疲れてたかなっていうくらい疲れてたんですけど、でも、やっぱりそれが今までは普通にやってきていて、そこに徐々に戻ってきているというのはすごく嬉しいと思いますし、ようやく試合勘というのはほぼ戻ってきたんじゃないかなと思うので、あとは自分の腕の状態と向き合って、それをどう使っていくかというのがここからの課題かなと思います。
--会場が沸くようなシーンがたくさんあった中で、ご自身のベストプレーとその理由も教えてください。
早田 今回はなんだろうな。ちょっとあんまりこれっていうのはあんまり覚えてない。いつもは結構覚えてるんですけど、今回は本当に1球1球に集中してたところもあるので、まず入ったボール全てが自分の中では今大会はいいボールだったんじゃないかなと思います。4ゲーム目の6-6から自分がサービスを2本持って7-6になってその後のボールでバックドライブを打った後のフォアの回り込みっていうのは、今日前半からフォアドライブは結構感覚が良かったので、そこで勝負行った時に自分自身が狙ってたコースとあと相手の読みも外すことができて、後半にはなるんですけど、すごく良かったかなと思います。
--おとといの試合後には「未知の領域の戦いが始まる」、そして、昨日の試合後には「殻を破れた」と、試合をするごとにたくさんの気づきを得ているのかなと早田選手のコメントから感じましたが、改めてこの全日本を終えて、得たものを教えてください。
早田 もちろん優勝して自信につながったというのも一つありますし、あとは試合をしてくれたというのはちょっとおかしい表現にはなりますけど、試合ができたこと、そして6選手と試合をして学んだこと、というのが試合をしないとできなかったので、その試合ができたことに感謝したいです。そこはトップ選手と試合することで、自分も一気にトップ選手とやってた時の感覚が戻ってきたので、そういったところは試合ができることに感謝したいですし、やっぱり嬉しい気持ちですね。
--昨日からお話が伺っていて。「パリまでの自分には戻れない」というパリ五輪が終わっていつ頃そういうふうに踏ん切りをつけたというか、シーズン2に入らないといけないという、何かそういうきっかけとかできることとかあったのか教えてください。
早田 今ある程度、練習ができるようになって、ちょうど1カ月ちょっとぐらいですかね。
12月の中旬ぐらいからちょっとずついつもの感覚でできるようになってきてて、やっぱりいつもの感覚に戻した状態でやることによって、これはやっぱりもうできないんだなっていうのを、その辺ぐらいからやっぱり気づき始めて試合をしてみて、年末のTリーグからWTT行ったりとか、これもできなくなっているな。あれもできなくなっているな練習だけでなくて、試合の中でもそういった気づきがあったので、今回はそこをある意味その12月末からの試合の経験を生かして、今回諦めるところは諦めるっていうのがそういう表現にはなるんですけど、やっぱり諦めできないところを必死にもがいたとしても、やっぱりできないものはまだできないですし、私の中ではちょっとサボテンを育てているような感覚なんですけど、サボテンって1カ月に1、2回水をやればいいじゃないですか。それで勝手に成長してくれて、その間に他の花を咲かせられるように頑張っているような感じなので、放置するところは放置してこうやって試合することで勝手に感覚が戻ってきて、でも、重要なところだけピンポイントで練習するっていう毎日に今はなっているかなって思いますね。
--先ほどシーズン2に入られたとおっしゃられたのですが、パリ五輪前と比べてどのくらい練習時間を減らしているのかとその練習時間が減ったら、例えば戦略を考える時期はどんなことに当てているのか教えてください。
早田 大体1、2時間くらい減っているような感じなので、1日3時間半ぐらいの練習、もう半日練習ですね、ほとんど。そこからトレーニングしたり頭の勉強したりっていう本当に戦術もそうですし、根本的な技術のビデオを見たり、そういう時間を作ったりはしてるんですけど、どっちかというとやっぱトレーニングの時間に実行をかけられるようになったのは一つ大きいかなっていうのは思うので、ここからは逆に言うと、試合が続くのでまたトレーニングができなくなるんですけど、でも、練習はやるところまでやったらそれ以上は今はできないので、そういったところのバランスを見てこれでもできるんだって今回自信がついたので、一時はそういう形でいろんなことに挑戦していろんなものと向き合っていきたいなと思っています。
--石田コーチがオリンピックの後に離れられて、今は一人でチームひなってやっていると思いますが、コーチングなどはどのようにしているのですか?
早田 そうですね。日頃から見てくださっている方がたくさんいるので、本当にいろんな方の意見を聞きながら、そして日本生命というのもすごい良い環境の中で練習させてもらっているので、本当にいろんな方にいろんな技術だったり、いろんな考え方を教えてもらいながらやっているような感じなので、今までのチームひなでやっている練習の仕方とはまたちょっと違うんですけど、いろんな人と接することでいろんな人の卓球だけじゃなくて、いろんな人の考え方っていうのを自分が聞く機会が増えているので、そういったところで卓球につなげられるところもあれば、つなげられないところもありますけど、そういった部分でちょっとずつ変化はしているのかな、というのはあります。
--シーズン2という言葉が何回か出てきていると思うんですけど、ここから当面はケガと向き合いながらだと思うんですけど、その先にシーズン2をちょっと言語化するのがシーズン1はどういうシーズンでシーズン2はどういった卓球のフェーズにしたいかを聞かせてください。
早田 先ほど言っていたものとちょっとつながっているところはあるんですけど、シーズン1は石田コーチが基本的にいろんな技術を見てくれてて、中学校3年生かな中2かな14歳ぐらいから10年間見ていただいてそこでいろんな技術だったり、いろんなことを教えていただいて、それがパリまでのシーズン1で、シーズン2は先ほども言ったんですけど離れたことによってやっぱりいろんな人と自分が直接向き合う時間っていうのが増えましたし、もちろんその中で石田コーチと連絡を取ることもあったりするので、本当にいろんな方のいろんな考え方を聞けるようになって、そこから自分がいいものを取り入れていくっていうのがシーズン2なのかなって。
もちろん、これはシーズン2はどんどん変わっていくので、今はなんとも言えないですけど、そういう形というか、今までは大輔先生が基礎をいろいろ教えてくれた。そこから自分がまたさらに飛び立つために、シーズン2でいろんな人の力を借りて強くなっていくっていうのが、目指しているところかなと思います。
--先ほど世界卓球のお話だったんですけど、今年の1年でいうと、そこが一つ大きなものがあるとして、そこに向けてどういうふうに自分を上げていきたいとか、何を成し遂げていきたいとか今の時点でそこはどういうふうに見えていますか?
早田 まずは腕の状態がどのくらい回復しているかにもよると思うんですけど、大丈夫になっているのであれば今回の試合でできなかったことだったりとか逆に言うと、この大会には間に合わなかったけど、今すでにいろんな新しいことを始めている、そういったところをより精度を上げていったりとか、あとはもともと持っているものをさらに進化させていったりとか、そういう時間に使えたらいいなとは思いますけど、でも試合をしながらになってくると思うので、それも腕のバランスを見ながらというところになってくると思います。
--先ほどおっしゃっていた今大会はうまさで勝つというところを意識されたということですけど、どんな準備が一番役立ったのか、どういうふうにそこに向けて準備してきたのかその内容を伺いたいのと、世界卓球は前回シングルスでのメダルも獲得しているという大会になりますが、オリンピックでもメダルを取った中で、今度の世界卓球を成し遂げたいこと、この2つ教えてください。
早田 まず去年の自分はより強さっていうのが全面に出てたなって、気持ちもそうですし、技術としても自分自身が自信を持っていろんな精度のある技術を出して試合をしてた感覚でした。でも、今回はその技術の自信っていうのがやっぱり練習を積み上げられてなくてちょっとなかったんですけど、だからこそ逃げる時もあれば真っ向勝負する時もあったりとか、使える技術、使えない技術、それをどっちかというと自分をコントロールするために今回はそのうまさが大事だなって思ってたので、やっぱり強さだけだと先ほども言ったように、手に負担がかかってくる可能性もあったので。4対3になる可能性もあるけど、できれば4対0で逃げ切りたいっていうのが今の現状でもあるので、そうさせるために相手の読みを外したりとか、やっぱりそういうことはすごく重要だなと思ってたので、今までよりも結構自分の現状を受け入れながら相手と勝負しています。昔はただ相手と勝負してるっていうような感覚だったんですけど、やっぱり自分の感覚もすごく変わるので、今はまたそういったうまさっていうのが今回は多少あったんじゃないかなと思います。
世界選手権に向けては出られるっていう感覚を持って今回は臨んできてなかったので、出られることがまずうれしいっていうのと、あとは腕を回復させていくっていうことがすごく世界選手権向けでは重要かなと思うんですけど、その時にできるようになっている技術で、また新しい真っ向勝負じゃない今回みたいなうまさを出した試合ができればいいなと思っているし、目標としては前回のメダル色のメダルよりも上にはいきたいなと思ってますけど、その時のベストを尽くせれば、それでいいかなと思っています。
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詳しい試合の結果は日本卓球協会大会公式サイトでご確認ください。
全日本卓球:https://www.japantabletennis.com/AJ/result2024/